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低誘電の高絶縁性、耐熱、高強度のFPC向け新素材で5G時代を支える【共同技研化学株式会社】

2020年 12月 8日

「液晶ポリマーフィルム『SARAS』と、『SARAS』と銅箔を組み合わせたFCCL『SARAS Cシリーズ』」
液晶ポリマーフィルムと銅箔を組み合わせた同社のFCCLは、5G通信に欠かせない材料
製品名=「液晶ポリマーフィルム『SARAS』と、『SARAS』と銅箔を組み合わせたFCCL『SARAS Cシリーズ』」

5G機器に欠かせない低ノイズ・低消費電力を実現

第5世代移動通信システムの「5G」。すでにスマートフォンの各メーカーから対応機種が発売されるなど、この次世代通信が主流となる日はそう遠くないと考えられる。4Gに比べ圧倒的に高速化するその通信速度を支えるには、フレキシブルプリント基板(FPC)の主用部品であるフレキシブル銅張積層板(FCCL)の改良が不可欠。現状多くのFCCLの素材として用いられるポリイミド(PI)は、含水率が高いために伝送損失が大きく、正しい信号の伝達を妨げるノイズの原因となってしまうからだ。

このPIに代わる素材として有望視されているのが、共同技研化学株式会社が開発した液晶ポリマー(LCP)フィルム「SARAS」だ。同製品は、280℃という高融点、低吸湿(低誘電)性、高ガスバリアー性、高絶縁性、寸法安定性、立体安定性、折り曲げ可能などといった特徴を備えるほか、独自の生成法により通常のLCPフィルムと比べてしなやかで高い強度を実現している。

さらに同製品と銅箔を組み合わせた同社独自のFCCL「SARAS Cシリーズ」は、特殊な成形法により両素材を分子レベルで接合。エポキシ接着層なしでほぼ剥離しない密着強度を実現し、さらなる低ノイズ化に成功している。

独自の成形技術により、無配向で高強度なLCPを生成

通常、LCPを生成する際には熱を加える「溶融成形」が一般的だが、この方法だとLCPの結晶が配向※してしまい、横方向からの強度が不足するという課題があった。そこで同社は熱を加えずに有機溶液を用いる「溶液キャスト法」を活用。これにより結晶の無配向を実現し、XYZいずれの方向からも高強度なLCPの生成に成功した。

また、銅箔との接合においては、銅箔上でLCPを成膜。乾燥炉で溶媒を揮発させると同時に脱水縮合反応を促進し、銅分子とLCPの分子を一体化させる生成方法を確立した。LCP層の厚みは3〜100μm(1μm=0.001mm)の範囲で制御可能という。

※物質中の分子や結晶が一定方向に配列すること

自動運転、遠隔治療など次世代技術の基盤に

あらゆる電子機器が通信システムと連携する今、同製品は5G時代の基盤になる可能性を秘める。具体的には、自動運転、遠隔治療、高度IoT工場などの実現には欠かせない素材になり得るだろう。事実、すでに「SARAS」はハイエンドスピーカーの振動版材料として活用されているほか、同社には海外企業を中心に多数の問い合わせが殺到しているという。

そんな同社はさらに先の6Gを見据え、製品の改良に努めていくという。企業連携により新価値の創造を志す多くの企業にとって、常に時代を先回りした製品開発を進める同社の動向に注目していて損はないだろう。

取材日:2020年10月14日

企業データ

企業名
共同技研化学株式会社

1979年設立。粘着・接着関連技術を強みとし、「多機能膜」の開発・製造・販売にあたって、材料設計、合成、微分散、成膜、特殊ラミネート、表面改善処理、多孔処理などに一貫して対応するフィルムコンバーター。これまでにも、特殊構造により強粘着を実現した「分子勾配膜両面テープ」や、光学用高透明接合テープの「メークリンゲル」など、独自性の強い製品群を多数市場に供給。