農業ビジネスに挑む(事例)

「CA」高級住宅地のおしゃれな店舗でクールに野菜を売る次世代型経営

  • 店舗と商品(野菜)に独自のこだわりをもつ
  • 新しい農業のスタンダードを目指す

農業はかっこいい。新しい農業のスタンダードを築きたい。そんな思いから兵庫県芦屋市に青果店「CA」がオープンした。2008年7月のことだ。

店名のCAはCool Agricultureの略。そのものズバリ、「かっこいい農業」というわけだ。店長の福原悟史さんは関西大学工学部卒とその出自は異色。なぜ工学学士が野菜を売る店の店長を務めているのか?

「在学中から起業したいと思っていまして、それなら農業をやってみようかなと考えたからです」(福原さん)

起業はいいとして、工学を学びながらもその業種がなぜか農業?-やはり異色だ。

おしゃれなカフェを連想させるCAの店舗

工学部卒で野菜を売り始める!

福原さんは卒業前年の2006年に起業の準備を始めた。農産物の路上販売だ。クルマで農家を回って野菜を買いつけ、大学近辺の路上で売る。週2回のビジネスがスタートした。

「そして大学を卒業した2007年から本格的な路上販売を始めました」

週休1日で大阪府内の5カ所および芦屋で野菜を販売。そして翌年の7月には販路を路上から店舗へと変更した。

(左)大学の工学部を卒業して農業で起業した福原悟史さん(左)(右)店内は白色に統一され、アンティーク家具の中には調味料などの加工品が置かれている

店名のCAは店舗名のみならずコンセプトでもある。そのコンセプトはおしゃれでかっこいい新しいスタイルの農業の提案だ。だから店舗もおしゃれ。イギリスの雑貨店をイメージした外観はまさしくおしゃれなカフェ。また、天井から壁まで白一色で統一した店内にはクラッシック音楽が流れ、アンティーク家具も置かれ、シックな陳列棚には野菜が整然と載せられている。

ただし、おしゃれでかっこいいのは装いだけではない。当然、商品である野菜にもかっこよさ(クール)を追求している。クールな野菜の意味を尋ねると「無農薬、無化学肥料で栽培された野菜ということです」と明快な回答。つまりCAでは有機農法か自然農法で栽培された野菜しか売らない。それがCAの商品コンセプトだ。

「CAの農産物には仕入れの基準があります。無農薬・無化学肥料の栽培であること、土づくりが重視されていること、えぐみのない高品質であることの3つです」

この3つの基準にこだわり、それを満たした野菜しか売らない。そのため、そうしたこだわり野菜をつくる農家だけと取引している。

「現在、約30軒の農家さんと取引し、1日に7、8件を毎朝5時に集荷に回ります」

取り引きする農家は大阪、京都、兵庫に点在し、毎日、集荷できる無農薬・無化学肥料の野菜の量には限度があるため、1日1回の集荷以外、店舗の商品(野菜)が品薄になっても補充はせず、売り切れた段階で終売としている。

「季節ごとに基盤となる野菜は品切れさせませんが、それ以外にも多種類の野菜の品揃えも充実させようとすると、無農薬・無化学肥料野菜だけを売るというコンセプトが保てなくなってしまいます」

毎日の集荷の際に農業生産者と密接にコミュニケーションを図り、先々の収穫の状況を把握するように努めているが、それでも足りないときは「売り切れゴメン」で顧客には納得してもらう。

シックな陳列棚に野菜が整然と並ぶ

小売のみならず卸売へも注力する

現在、年間の売上は4800万円で集客は2500人。売上の60%はCAがセレクトした野菜のセット商品や近辺からの電話注文に対する発送であり、店舗への来客の売上は20%。そして残り20%の売上は地方客への宅配と飲食事業者への納品だ。

「最近の営業のベクトルとしては量販店や自然食品店などへの卸売りです」

実際、西宮駅構内の阪神百貨店を始め8件の量販店・専門店にCAブランドの野菜を卸し、全売上に占める卸売の比率を伸ばしている。

店舗の装いと商品の基準にこだわりをもつCAだが、福原さんがCool Agricultureを掲げた根幹には、自分たち若い世代に農業に関心をもってもらい、さらには就いてもらいたいという思いもある。そのためにも、新しい農業のスタンダードを築きたい、と夢は大きい。そのスタンダートとは、おいしい野菜が当たりまえになる、若者が普通に就職できて生活できる業種になる、若者があこがれる業種になる、の3点。その夢に向かっておしゃれでかっこいいCAは躍進をつづけていく。

企業データ

企業名
CA(シーエー)
Webサイト
代表者
福原悟史
所在地
兵庫県芦屋市西山町3-10