中小企業応援士に聞く

DXやデザイン経営について地域の中小企業に伝えていきたい【株式会社リーピー(岐阜県岐阜市)代表取締役・川口聡氏】

中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2021年7月12日

リーピー代表取締役の川口聡氏
リーピー代表取締役の川口聡氏

1.事業内容をおしえてください

岐阜市の本社。ほかに名古屋市に支社を構える
岐阜市の本社。ほかに名古屋市に支社を構える

売上の柱になっているWebサイト制作事業と、Web上で使用するアプリを自社で開発してサブスクリプション型で提供するWebサービス事業という2つの事業を展開している。総勢34人で、デザイナーとエンジニアは合わせて20人いる。

会社の拠点は岐阜市の本社と名古屋支社の2カ所。創業の地である岐阜市には妻の実家がある。もともと岐阜とは縁がなかったが、28歳で独立・起業しようとしたとき、当時会社勤めをしていた東京で待機児童問題に直面し、家族で岐阜市へ移住することにした。また、「地方×インターネット」をテーマに会社を作りたいと思っていたので、地方都市である岐阜市に生活拠点を置くことがプラスになると考えた。

当初はフリーランスとしてWebコンサルタントの仕事をしていたが、岐阜ではニーズがなかった。一方で、ホームページ(HP)制作のニーズはあり、しかも、事業開発まで踏み込んだHP制作を行っている企業はなかった。これを進めていけば岐阜でもやっていけると感じ、2013年に創業した。

2.強みは何でしょう

事業の強みは主に3つ。まず、全国からお客様を集める力があること。取引先約700社のうち40%程度が岐阜県外の企業だ。これは当社HPの検索順位を高める対策を効果的に行っているためで、全国各地から問い合わせが寄せられる。さらに、取引先の中に各地域の「地域一番店」が含まれており、当社が手掛けた、そこのHPを見た同じ地域の企業から問い合わせをいただくというケースがある。こうして県外への事業展開がいっそう広がっている。

2つ目の強みは、提案型の業務を得意としている点だ。HPを制作する際に大切なのは、ターゲットがどういう人か、そのターゲットに刺さる顧客の強みは何かといった点を深掘りしていくこと。当社では、経営コンサルタントに近い活動を行い、そこで見出した顧客企業・自治体の強みをWebサイト上で表現し、問い合わせや反響につながるHPに仕上げている。こうした点が評価され、自治体へのプロポーザルでは7割を超える確率で受注している。

3つ目は、これまでの業界の常識の逆を行こうとしていることだ。これまでのHP制作は、完成後に修正が発生した場合、制作会社に依頼する場合がほとんどであり、制作会社としては、それがストック収入につながる。これに対して当社では、デザイン性を保ったまま、お客様が自由に簡単に更新できるというシステムを独自開発している。お客様としては、ランニングコストが大幅に削減できるメリットがある。

これらの点が評価され、月に50~100件の問い合わせが安定的にある。こうした強みを支えているのは社員である。創業以来、新卒者を毎年2、3人採用し、そこから一人前に育ててきている。私は、お客様や株主よりも社員が一番大事だと思っている。社員が日々やりがいを持って働いてくれれば、お客様への良いサービスにつながり、それが会社、そして株主の利益につながると考えている。事業を進めていくうえで大事なのは「人」なので、それに対して時間やお金を惜しんではいけない。

オンライン会議専用の防音仕様個室
オンライン会議専用の防音仕様個室

このほか、会社全体でカイゼン活動に取り組んでいて、同業他社と比べても生産性が極めて高い。また設備面では、オンライン会議専用の防音仕様個室を4カ所設置した。オンライン会議が円滑に進められるということだけでも、デジタルに関する業務を依頼する会社としての信頼を得られると考えている。

3.課題はありますか

当社の業務は受託ビジネスなので、以前は、プロジェクトが終わらないと採算が取れるか否かが分からなかった。4期目で初めて赤字になったが、その際、翌期以降に向けて改善マインドや採算意識を会社的に植え付けることに時間を割いた。工数管理システム「Pace」を開発し始めたのもこの時期だった。「Pace」を使うことでプロジェクト別の採算が見えるようになった。

直近の課題では、在宅勤務が増えて、以前に比べると社内コミュニケーションが希薄化していることだ。社員一人ひとりの心のケアのために、マネージャーと1対1で話す時間を増やしたり、日々の仕事の中で感謝を伝える場面を増やしたりといった取り組みを行っているが、まだ十分ではない。

4.将来をどう展望しますか

同業者への支援を強めていきたい。当社は「地方の未来をおもしろくする」というビジョンを掲げているが、1社だけで全国各地をカバーすることは不可能だ。各地方のデザイン会社や制作会社が各地域で良い仕事を行うことで、間接的なビジョンの達成につながると考えている。そのために、同業者に対し、より生産的にサイト制作ができるツールを展開していく。ライバル企業のレベルが上がることになるが、当社には、「同業者にまで支援を行っている制作会社」というブランディングができるメリットがある。

2030年にはデジタル人材が60万人不足するといわれている。業界の人材不足が理由で日本のデジタル化が進まないことは良くない。デジタル業界の生産性を上げないといけないという使命感を持って同業者への支援を行っていきたい。

5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか

出張授業などで地域とのつながりを大切にしている
出張授業などで地域とのつながりを大切にしている

自治体の仕事の話があれば、積極的に手を挙げて提案を行い、Webサイトの制作に携わらせていただいている。それによって、これまで岐阜にはなかったデザイン性・機能性を持ったサイトを作っていくことで、岐阜に関心を持っていただく人を増やしていきたいし、実際に移り住む人のお手伝いをしていきたい。デジタルとデザインの側面を通じて地域を良くしていこうと考えている。

このほか、若者向けにデジタルやITに興味・関心を持ってもらうため、出張授業・校外学習や、子供向けの仕事体験イベント、大学生等のインターンシップの受け入れを行っている。社会福祉法人などへの寄付も行っている。

6.応援士としての抱負は

デジタル・IT分野に詳しい中小企業応援士は少ないのではないだろうか。そこで、今の日本に必須であるDX(デジタルトランスフォーメーション)やデザイン経営について地域の中小企業に伝えていくことが、自身が行うべき活動だと思っている。

「DX=効率化のためにシステムを導入する」という考えを持つ経営者がまだ多い。それでは不十分で、そもそものビジネスモデルを変えるとか、今の業務フローに対し変革を伴わないとDXとは呼べない。デジタル時代に合うように自社を変革させていくことがDXだ。そのことを正しく広めないといけないし、それが自身の中小企業応援士としての役割だと考えている。

企業データ

企業名
株式会社リーピー
Webサイト
設立
2013年10月2日
代表者
川口聡氏
所在地
岐阜県岐阜市香蘭3-7
Tel
058-215-0066

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