あすのユニコーンたち
AR活用した新スポーツ「HADO」が学校・職場に拡大 人材育成・教育効果が注目【株式会社meleap(東京都港区)】
2026年 1月 13日
AR(拡張現実)の技術を活用した新しいスポーツ「HADO(ハドー)」。現実のコートで実際に走り回りながら、目の前に現れるエナジーボールやシールドを使って対戦する、身体を使った新感覚ARスポーツだ。教育的効果や人材育成の効果が注目され、学校や職場での導入が進んでおり、海外にも広がりをみせている。2014年に設立された東京都港区のスタートアップ、株式会社meleap(メリープ)が開発し、事業を展開している。2024年度の第19回ニッポン新事業創出大賞の中小企業基盤整備機構理事長賞を受賞するなど今後の成長が期待されている。
みんながフラットに楽しめるスポーツ

「HADO」は、ヘッドセットと呼ばれる装置を頭に装着し、腕にアームセンサーを着けてプレーする。アームセンサーを付けた腕を勢いよく前に突き出すと、腕からエナジーボールという光の塊が発射される映像がヘッドセットに映し出される。エナジーボールを対戦相手の「ライフ」に向けて打ち込んで、対戦相手のライフを破壊し、ポイントを競う。エナジーボールを撃ち出す姿は、鳥山明氏の世界的な人気漫画「ドラゴンボール」の「かめはめ波」のようだ。
通常は3~5人ずつチームに分かれて対戦。飛んできたエナジーボールをよけてかわしたり、シールドと呼ばれるバリアを作り出したりして防御する。ライフを奪われないよう右に左に細かく動き回り、跳んだり、しゃがんだり。80秒の試合時間だが、結構な体力を使う。チーム戦では、攻撃担当と防御担当を役割分担するなど戦略・戦術が勝ち負けを左右する。
「このスポーツの特徴は、体格の大きさや筋力が関係なく、運動があまり得意でない人も楽しんだり、活躍できたりする。みんながフラットに楽しめるところが非常にいいところ」とmeleapを創業したCEOの福田浩士氏は語った。
子供のころに抱いた思いが開発の原点

「かめはめ波を撃ってみたい」—。「HADO」が生まれたのは、福田氏が子供のころに抱いた、そんな思いが原点にある。福田氏に限らず、世界中の多くの子供が一度は持った「夢」といっても言い過ぎではないかもしれない。
福田氏は学生時代、建築家を志し、設計を学んだ。だが、建築の分野に限界を感じるようになったという。「インターネットやAIがものすごい勢いで発展する一方で、建築は進化のスピードが非常に遅くなった。将来のことを幅広く考えてみて、何かしら起業したい、という思いを強く持った」。そこで大学院を修了後、リクルートに入社。その1年後には独立し、meleapを創業した。
「『XR(クロスリアリティ技術=現実空間と仮想空間を融合させる技術)を使う』『かめはめ波を撃つ体験をつくる』というところは何となく決めて退職した」と福田氏は語る。その当時は、まだビジネスモデルは全く描いていなかったそうだ。もともとXR技術について知識があったわけではなく、会社を辞めてから一から技術の勉強を始めた。
福田氏と同じ思いを持った仲間が集まり、技術を研究。「この技術を使うと、何ができるのか」と、いろいろと試行錯誤しながら確かめていった。「使えそうな技術を組み合わせ、どんな体験をつくろうかと考え、この体験だったらお金を払ってもらえるかもしれない、リピートしてくれるかもしれない、という形で作り上げた」という。技術的に理想的な操作ができなかったり、作ってみたものの、まったく面白くなかったり。何度も壁にぶつかったという。

当初はバーチャルのモンスターと対戦するコンテンツを検討していたが、その中で、「人対人のスポーツにしたほうが新しいマーケットが作れる」というアイデアが生まれ、「HADO」にたどり着いた。
まず売り込みをかけたのは、大手のテーマパークだった。知人の紹介を受けて、経営者と会うチャンスを得た。イメージ動画を見せて「これを作るので買ってほしい」とセールスした。すると、経営者からは「一度、持ってこい」と前向きな返事をもらい、数か月後に、HADOを持って行った。経営者は「まず、園内でテストする。ユーザーアンケートで5点満点中4点以上だったら買う」と、いきなりテストマーケティングをすることになった。「社員総動員で、お客さんの呼び込みから体験オペレーションもやった。そこで高得点をたたき出して導入してもらった」と福田氏は笑顔を見せた。
現在、HADOを楽しめる専用の競技施設は、提携店舗を含め国内15カ所。海外39カ国以上には450以上のコートが設けられ、幅広い年齢層が競技を楽しんでいる。世界大会も開催され、2025年は中国・上海を会場に18カ国・地域が参加した。
運動しながらICT学ぶ 職場ではマネジメント研修に活用

すでに全世界の競技人口は600万人を超す。2014年にHADOを開発してから10年足らずで、急速に競技人口を伸ばしたのは、学校での体育や課外活動など教育現場でその効果が評価されるようになったことが背景にある。
教育現場では、子供たちのスポーツ離れや体力低下が課題となっているが、HADOであれば、運動が不得意な生徒も楽しく体を動かせる。さらにICTの技術を体験的に学ぶことができる。ICT教育と運動を同時に実現できる新しい「教材」として導入が広がった。単なるスポーツにとどまらず、AR技術の仕組みやインターフェース分野の学習などに活用できるほか、プレーの中で蓄積されたデータをもとに戦略を練ったり、チームで協力し合ったりといった思考力や協調性を育む教材としても活用されている。
日本では150校が導入。国内だけでなく、海外の教育現場にも広がっており、世界では2000校を突破した。米国では350以上の教育機関で1万人以上の児童・生徒が利用し、成果検証も進められている。福田氏によると、特に盛り上がっていると感じているのは韓国で、「大学の入学試験にHADOが導入されているところもある」と説明してくれた。

同様に職場での導入も広がりをみせている。チームビルディングやマネジメント研修など人材教育の教材としての評価も高まっている。国内では約1000法人が活用しているという。何度か試合をする中で、高いポイントを獲得できるようチームで考え、PDCAを回しながら勝利を目指す。「プレーの中で、チーム内でのコミュニケーション力を養い、リーダーとしての経験やプロジェクトマネジメントの経験を積み、実際の仕事に活かしてもらうと生産性も上がる。意義のあるコンテンツだと思っている」と福田氏は胸を張った。
学校や法人への導入の拡大を大きな目標にしており、「ダンスが必修科目になったようにHADOもどこの学校でも使われるという形を将来作っていきたい。また、中小企業から大企業までHADOを継続的に使ってもらえるような状況に持っていきたい」と意気込みをみせていた。
「間違いなく、起業は楽しい」

子供のころに抱いた小さな夢をビジネスにつなげていった福田氏。これから起業を目指す後進に向けたアドバイスを求めると、福田氏からはこんな言葉が返ってきた。
「『間違いなく、起業は楽しい』ということはメッセージとして伝えたい。新しいチャレンジができ、今まで見たことがない世界を自分で作って、それを見ることができる、体験できるというのは起業家の大きなやりがいの一つだ」
2013年に会社を辞めて起業し、HADOを開発するまで決して順風満帆ではなく、さまざまな壁にぶつかった。それでも「大変だったというのは特にない」とさらりと話す。「常にハードシングスとは向き合っているが、中小企業でも大企業でも経営者は経営者なり、現場の人は現場の人なりの苦労がある。昔に比べれば、起業はやりやすくなった。『失敗が怖いから起業はやらない』というのはあまり考えないほうがいい」と話していた。
企業データ
- 企業名
- 株式会社meleap
- Webサイト
- 設立
- 2014年1月
- 資本金
- 7億4983万円(資本準備金を含む)
- 従業員数
- 40人
- 代表者
- 福田浩士 氏
- 所在地
- 東京都港区台場1-7-1アクアシティお台場5階
- 事業内容
- ARスポーツ・エンターテインメント事業、デジタル活用人材育成研修事業