コロナ禍でがんばる中小企業

「あれば便利」から「ないと不便」に【株式会社フォルテ】(青森県青森市)

2020年10月23日

専用カメラで離れた位置から認識
専用カメラで離れた位置から認識

1.コロナでどのような影響を受けましたか

2005年3月にITベンチャーとして設立して以来、移動体通信システムの研究開発などに注力し、主に運輸・観光産業に位置情報測位システムを提供してきた。

同システムは、日本の準天頂衛星「みちびき」の補強信号受信端末を活用し、実地との測位誤差が1メートル以内となる高精度測位を実現。従来のGPS端末は測位誤差が10メートル程度あった。測位誤差1メートル以内の「みちびき」対応小型端末を開発しているのは当社を含めてごく僅かだ。

運輸業向けシステムは、車両・コンテナの位置情報管理を目的としている。複数の対象物の移動履歴を表示し、設定したジオフェンス(地理的境界線)へ入った際に管理者に通知できる。

一方の観光業向けシステムは、自転車などスポーツ大会の参加者の位置情報管理が目的。参加者の位置情報を管理する主催者が、参加者のルート離脱やトラブルを検知した際に即応できる。

しかし、コロナ禍という非常時になってからは、どちらのシステムも需要が急激に落ち込んだ。

国内外の物流に大きな遅延が生じたことで、製品の納入・受入検査・入金の遅延が重なり、資金繰りにも甚大な影響を受けた。感染症対策の一環として、商談延期、研究・生産拠点の操業停止、各拠点の短期休業を余儀なくされた。

自社の主力システムが、実は「あれば便利」なサービスであり、非常時では顧客の優先度が低いことを痛感した。

2.どのような対策を講じましたか

タブレットタイプ
タブレットタイプ

コロナ感染が拡大した当初は、運輸業のドライバー向けの居眠りや「ながら」運転を検知するAIシステムの実証中だった。コロナ対策には体温管理とマスク装着が重要という指摘を受け、AIシステムを組み込んだタブレット端末に、赤外線センサーを用いた体表温度のスクリーニングと顔認識を用いた個人認証の機能を搭載。個人認証と体表温度を同時に1秒で判定するコロナ対策ソリューションに改良した。

この製品のターゲットは従来顧客と異なるため、新規開拓の必要性に迫られた。大規模な生産投資が難しい状況だった時期でもあり、当初は営業活動と生産管理の双方を軌道に乗せることに大変苦心した。

が、自治体などの協力を得て実現した青森県民生活協同組合本部での実証実験の様子がテレビやネットメディアで広く発信されたことで、発表直後の早急な販路開拓につながった。

まず、公共施設を中心に同製品の販売を開始。新たに搭載した個人認証と非接触検温機能が顧客のコロナ禍における「ないと不便」と合致し、月の売上高は販売開始から約2カ月で前年水準まで回復した。

非接触検温という全国共通のニーズを満たせるソリューションとして、これまでに接点のなかった医療・介護業界との関係構築ひいては販売網の拡大まで実現できた。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

このコロナ対策ソリューションは、地方の人・サービス・社会システム・交通などをつなぐ当社のプラットフォーム事業を構成する商材の一つに過ぎない。事業拡大に向け、同製品を勤怠管理・避難所名簿管理・業務用健康管理のツールに応用できるよう機能拡張を進めている。

今後も、地域課題にヒントを得て最新技術を地域住民が使えるソリューションとして提案し、社会課題を解決するイノベーターとして認められるよう努めていく。

企業データ

企業名
株式会社フォルテ
Webサイト
設立
2005年3月28日
代表者
葛西純 氏
所在地
青森県青森市古川3-22-3古川ビル3F
Tel
017-757-8033

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