BreakThrough 企業インタビュー

介護の課題解決を目指す連携で、ユーザーと参画企業の双方に大きなメリットを生む【パナソニック株式会社】<連載第2回(全2回)>

2020年 3月 10日

山岡勝氏

「パナソニック株式会社」と多数の中小企業が連携し、介護業務における各種データを複合的に活用することで生産性向上を目指す「介護業務支援プラットフォーム」。このプロジェクトの責任者を務める同社の山岡勝氏にお話を伺う本連載の第2回では、実証施設での成果や連携のメリット、連携を成功させる秘訣を伺いました。

夜間の定期巡回にかかっていた時間を1/10に圧縮

「介護業務支援プラットフォーム」事業は、現在、3施設で進められている実証試験でも大きな成果を上げています。

「介護施設では、夜間に1〜2時間おきにスタッフが居室を一つ一つ回って安否確認を行う定期巡回がスタッフの負担になっています。実証施設では、この巡回を室内モニタリング用センサや、ご本人の体動、睡眠などを測定するセンサなどを組み合わせた見守りに変え、そのデータは介護記録ソフトに自動記録。この結果、同業務にかけていた時間をおよそ1/10にまで圧縮しスタッフの負担軽減を実現しました」

メリットは、スタッフだけにとどまりません。

「センサーを使った確認なら24時間365日、切れ目なく入居者を見守ることができます。しかも巡回時の物音で、入居者が眠りを妨げられることもなくなりました。さらに、夜間の人数が少なくてもナースコールに素早く対応できるようになったとの声も挙がっています。2020年度には実証施設を5カ所以上に増やし、多面的な検証をさらに進める予定です」

パナソニック、中小企業の双方が連携の価値を高めるよう努力

統一プラットフォーム上で多彩な機器の連携を行い、代表企業のパナソニックがパッケージとして提供することで、システム導入、データ活用、要望への対応といった際の利便性と信頼性は格段に向上し、ボリュームディスカウントも可能になる。これはプラットフォームを導入する介護施設にとって大きなメリットになります。

プロジェクト推進においては、「各参画企業が趣旨に共感いただき、積極的に協力していただいたことが大きな力になった」といいます。

「各社とも独自分野のトップレベルで活躍していた企業です。その各社が今まで現場で感じていた課題を多数の企業連携で解決したいという思いで参画し、実証を通じて価値が明確化されました。これらの成果が各社の事業強化にも繋がっていくと考えています」

パナソニックは、ユーザーはもちろん、プラットフォームのさらなる強化に向けて参画企業も増やしていきたいと考え、新価値創造展2019に出展しました。(写真1)

新価値創造展2019出展時の様子

ニッチを突き詰めた中小企業との連携で価値あるサービスを提供したい

「介護業務支援プラットフォーム」には、自立支援特化型のデイサービス事業者も加わり、新たな取り組みを行っています。

「この企業は、経験豊かなスタッフが密接に関わる独自の自立支援プログラムで、寝たきりの方が再び歩けるようになるなど素晴らしい成果を上げています。データ活用によって、そのノウハウを熟練スタッフだけでなく、より多くの方に展開できればと考えています」

介護分野では、ノウハウが「人」に貯まりがちなのが課題。パナソニックは、プラットフォームのデータ分析結果から得た介護分野の知見を生かし、在宅介護向けの「住めば元気になる家」などの開発につなげていきたいと考えています。

「機動力のある中小企業は、ニッチだが社会に欠かせないニーズを突き詰めるなど、大企業には難しい取り組みを進めて行くことが可能です。そうした企業さんと連携しながら、価値ある新製品・新サービスを生み出していくことができれば嬉しいですね」

連載「介護の課題解決を目指す連携で、ユーザーと参画企業の双方に大きなメリット」

企業データ

ビジネスイノベーション本部スマートエイジングケアプロジェクト 総括担当 プロジェクトリーダ・山岡 勝(やまおか・まさる)
ビジネスイノベーション本部スマートエイジングケアプロジェクト 総括担当 プロジェクトリーダ・山岡 勝(やまおか・まさる)
企業名
パナソニック株式会社
設立
1918年創業

1918年創業の総合電機メーカー。個人向け生活家電やAVC機器、産業用デバイスや車載機器の製造、さらに住宅関連や介護関連など幅広い分野の事業を手がける。介護分野では在宅向け介護サービスや介護施設運営、介護用品製造などを展開。2018年度より国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) の補助を受けた大型企業連携プロジェクトである「介護業務支援プラットフォーム」事業をスタート。

取材日:2020年1月20日