中小企業応援士に聞く

モノづくりだけではない付加価値提供【株式会社サトウ精機(岩手県花巻市)代表取締役社長・佐藤智栄氏】

中小機構は昨年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2021年3月31日

経営への思いを熱く語る佐藤智栄社長
経営への思いを熱く語る佐藤智栄社長

1.事業内容をおしえてください

岩手県花巻市の本社工場
岩手県花巻市の本社工場

岩手県花巻市で自動車関連部品・治工具や半導体製造装置の部品を製造している。技術者だった父(現会長の佐藤勝憲氏)が、1986年(昭和61年)に半導体関連事業を中心に創業した。1992年に法人化し、現在は経営陣3人を含めて33人の陣容になった。

私は父が体調を崩したことをきっかけに、2000年に自動車販売会社を退職して入社した。ただ直後のITバブル崩壊や日米貿易摩擦の影響で、主要取引先の半導体関連産業が大きな打撃を受け、受注が大きく落ち込んだ。そこでご縁のあった自動車メーカーと徐々にお仕事をさせていただき、今では主要顧客の一つになっている。

入社後、父から「将来この会社を継ぐことになる」と言われたが、父のような技術者ではない上、業界自体に女性経営者が少なく、戸惑いも多かった。社内から冷ややかな声も聞こえた。そこで営業だけでなく、ベテラン技術者のもとで製造現場の経験を重ね、2018年に社長に就任した。

2.強みは何でしょう

同社が手がける精密加工部品
同社が手がける精密加工部品

社員全員が「お客様第一」という目線で各自の仕事をしていることが最大の強みである。これは先代の頃から変わらない強みといえる。
また、「技術力」や「品質管理の徹底」はもちろんだが、「短納期・小ロット・最速当日納入」「不良品の少なさ」「加工対象素材の幅広さ」が特徴と自負している。

さらに品質管理の面では、不良品の製造件数自体が少なく、お客様に流出することはほとんど無い。これは、品質管理部門が製品の「砦」として確実に機能していることもあるが、現場で問題が発生した際、すぐに報告する意識が社員に徹底されているからだ。このような「問題を隠さない」風通しの良さが、当社の社風にもなっており、強みであると言える。

3.課題はありますか

10年前のリーマンショックの際に資金繰りに大変苦労した経験があり、その後も「作っても儲からない」という時期が続いた。会社の立て直しを進める中で、中小機構東北本部が推進する「計画経営」(管理会計、事業計画、PDCAサイクルなどの経営管理ノウハウ)に出会った。「儲かる経営づくり」に真剣に取り組んできた結果、当初の予定より2年も早く経営を立て直すことができた。

定期的に個別面談し、「社員一人ひとりが責任を持って仕事をする」という意識付けも進めている。自分のテリトリーに責任を持って仕事をする、自ら進んで動く、という意識をさらに高めていきたい。それができる仕組みをつくるため、中小機構のハンズオン支援なども利用しながら課題解決に取り組んでいる。

4.将来をどう展望しますか

コロナ禍による影響は少なくない。市場の変化による需要の減少も考えられるが、製品価格をむやみに下げるのではなく、顧客層を広げて未知の業界のお手伝いができるようにしたい。また、製品をただ作るモノづくりではなく、「お客様第一」という目線でのモノづくりを行い、製品だけではない付加価値を提供することで、お客様に信頼される「スーパーパートナー」の関係を目指している。

当社のモノづくりでお客様に喜んでもらい、当社はお客様から「幸せになる種」をいただいている。その「種」をもとに社内の人材育成や福利厚生を整えるなどの取り組みを行い、その結果生まれた社員のチームワークや心のゆとりでさらに良い製品を作り、それをまたお客様にお返しする。このように、お客様から頂いた「種」を当社が育て、大きな「花」を咲かせることで、当社も幸せになり、さらに当社に関わる全ての方々が幸せになれるようにしていきたい。

5.経営者として大切にしていることは何ですか

社員やその家族が「会社に大切にされている」と実感を持てるようにしたい。私自身の子育て経験から、育児休暇や年次有給休暇の取得に配慮している。また、社員だけでなく社員の家族も「会社に大切にされている」という実感がもてればと、社員の家族に花をプレゼントする機会もある。生産効率の向上による成果を社員に還元する中で、社員の働き方改革の意識も高まり、ここ3年の離職者はゼロである。今後も福利厚生を少しずつ整え、社員やその家族が安心して働けるような会社をつくりたい。

また地域への思いとして、若者が定着するような仕組みづくりが重要と考えている。コロナ禍で良くも悪くも価値観が変化している今こそ、未来を担う若者が岩手県に定着できる仕組みを整えることが必要で、当社もその受け皿を担いたいと考えている。

自動車部品製造業は女性経営者が少ない業界だが、ご縁があり、地域の女性経営者との交流もある。会社の規模が異なっても経営の悩みから家庭との両立まで、さまざまなことを相談し、大変刺激を受けている。こうした出会いはまさに宝であり、今後も人とのつながりを大切にしていきたい。

企業データ

企業名
株式会社サトウ精機
Webサイト
設立
1992年3月(創業:1986年4月)
代表者
佐藤智栄 代表取締役社長
所在地
岩手県花巻市小瀬川第3地割143番地3
Tel
0198-24-6540

同じテーマの記事