起業の契機となった“中央線事件”から30年近く経過した今、子育てをめぐる環境は大きく変化し、とくに子育て政策は育児休業制度の充実や子ども医療費の助成など手厚くなってきている。にもかかわらず、少子化にはいっこうに歯止めがかからない。こうした現状を踏まえ、光畑氏は、ある女性からの言葉を明かした。
10年ほど前、授乳服ユーザーの女性からこう言われた。「私にもう少し勇気があったら子どもと一緒に飛び降りていた」。イベントの司会業をしていた女性は産後、仕事もできず家に閉じこもり、強い孤立感を覚えていた。もともと華やかな世界にいた分、産後のギャップが大きく、死を考えるほど悩みは深刻だったのだろう。そんな彼女を救ったのが授乳服だった。授乳服を着てからは、その言葉が嘘のように子連れで都内のショップもたびたび訪問し、子どもが乳児のうちから司会業に復帰したという。「その話を聞いて、この事業を続けていて本当によかったと思えた」と光畑氏は振り返る。
このほかにも、「子ども1人だけでこんなに大変。2人目なんてありえない」と考えていた母親が授乳服を着て外出するようになったことで育児が楽しくなり、その後3人目まで出産したというケースも。こうした動きはまだまだ小さいものではあるが、モーハウスのビジネスは確実に社会を変えている。