コロナ禍でがんばる中小企業

通販再開見送り超高速のFC展開、「ビッグボス効果」加わり売上アップ【ケンズカフェ東京】(東京都新宿区)

2022年5月2日

「ケンズカフェ東京」のオーナーシェフ、氏家健治氏
「ケンズカフェ東京」のオーナーシェフ、氏家健治氏

1.コロナでどのような影響を受けましたか

唯一の商品「特撰ガトーショコラ」で年商3億円を売り上げる
唯一の商品「特撰ガトーショコラ」で年商3億円を売り上げる

当店は、唯一の商品「特撰ガトーショコラ」(250g、税込み3000円)で年商3億円を売り上げるガトーショコラ専門店。元々は1998年にイタリアンレストラン「ケンズカフェ」として開業したが、当初は鳴かず飛ばずの状況だった。そこで、「おいしい料理を作っていれば売り上げは伸びる」という従来の考えを改め、経営やマーケティングの勉強を始めた。また、インターネットでの集客や広告にも力を入れたところ、業績は改善してきた。

ガトーショコラは開業時から料理に合わせるスイーツとして提供していた。「食は素材にお金をかけるほどおいしい」という考えから、「業務用チョコレートの最高峰」といわれる仏ヴァローナ社のクーベルチュールチョコレートを使用。客からの評判もよく、「テイクアウトで販売してほしい」との要望を受け、その後、2004年にテイクアウトを始めた。

こうした評判の高さがきっかけとなり、2008年にはガトーショコラ専門店「ケンズカフェ東京」へと名称を変えた。さらに2014年、それまで宴会に限って続けていたレストラン営業をやめ、完全にガトーショコラに専念することにした。高価格に見合う味と高級感、そして1日400本のみの販売という希少性から、特別なお土産やプレゼントとして売り上げを伸ばした。

また、「地方の実家に送りたい」などといった要望があり、ネット通販も開始した。すると、注文が全国から寄せられることとなり、ネット通販が売り上げ全体の7割程度を占めるまでになった。しかし、売り上げが伸びるにつれ、注文受け付けや発送などに手間暇がかかるようになり、さらには、「商品が届かない」「開けたら形が崩れていた」などといったクレームが寄せられ、負担が大きくなってきた。結局、2015年にネット通販から撤退。売り上げは一時、3割程度落ち込んだが、実店舗でしか購入できないことで逆にプレミアム感を増したようで、しばらくすると売上額も利益率もアップした。

ところが、コロナ禍で販売が一気にダウン。飲食店のように客が滞留することがないため、最初の緊急事態宣言期間中も店舗は開けて営業を続けていたが、外出制限に加え、接待や宴会が開かれなくなったことで手土産としての用途が激減し、来客数は1日10~20人程度。客数も売上高もコロナ前の10分の1になった。それでも長年にわたって築いてきた商品への信用があることから、「いずれ元に戻る」と信じ、国の補助金を活用して雇用を維持しつつ、営業を続けた。ただ、緊急事態宣言が解除された後も8割程度にしか戻らなかった。

2.どのような対策を講じましたか

2021年11月にFC1号店としてオープンした静岡店
2021年11月にFC1号店としてオープンした静岡店

コロナ禍でネット通販が需要を大きく伸ばしていたので、当店も通販事業を再開することを検討した。しかし、物理的にも精神的にも負担が大きかった過去の苦い経験から結局、通販は見送った。一方で、増えてきたのがコラボ案件だった。当店は2016年からファミリーマートとコラボを行っていたが、昨年夏には映画「東京リベンジャーズ」のコラボ商品を販売し、同年12月には大手ドラッグストア、ウエルシア薬局でミルクチョコレートなどを限定販売した。

さらに大きな転機となったのがフランチャイズ展開だった。フランチャイズやファーストリテールなどを事業とするMIGホールディングス(東京都港区)から打診があり、昨年6月に同社と契約を締結した。コラボ商品は別として、大きなブランド力を持つガトーショコラを東京・新宿にある総本店でしか購入できないことを価値にしてきたので、FC事業は根本的な方針転換。失敗すればブランド価値を毀損する恐れもあった。その一方で、いくらブランド力があっても、しょせん1店舗ではないか、という思いもあった。なにか新しいことにチャレンジしたいという気持ちもあり、FC展開を決断した。

「ビッグボス効果」で一躍注目された沖縄本店
「ビッグボス効果」で一躍注目された沖縄本店

FC事業に乗り出すと、その後の展開はスピーディーだった。同年11月にFC1号店となる静岡店(静岡市葵区)がオープンし、それ以降、東北や関東、関西、九州、沖縄など全国各地で出店。事業着手からわずか半年間で約20店舗が誕生した。このうち昨年12月に開店した沖縄本店(那覇市)では、思いがけない出来事があった。沖縄県内でキャンプを行っていたプロ野球・日本ハムの新庄剛志監督がバレンタインデー前の今年2月12日、取材に訪れていた報道陣に同店の「特撰ガトーショコラ」を1人1個、合わせて100個もプレゼントしたのだ。注目度の高い「ビッグボス」新庄監督の粋な計らいでガトーショコラの人気も急上昇し、バレンタインデー用、さらに1カ月後のホワイトデー用に商品は飛ぶように売れた。

他のFC店でも、「あの有名ガトーショコラのお店がお目見え」という形で地元メディアに取り上げられることが多く、FC事業は出だしから予想以上に順調。FC展開により年間数千万円の収入増となり、今期(2022年9月期)は過去最高の売り上げを記録する見通しだ。都内にも4店舗オープンしたが、総本店の売り上げが落ちることもなかった。

店舗が増えたことによるスケールメリットも出ている。ガトーショコラの素材として高価格のチョコレートを使用しているが、FC店舗の増加に伴い、仕入れ量が大きく増えてきている。これまでは年間10トンだったが、これが50トン、100トンとなれば、価格交渉も有利になってくる。資金面で余裕が生じることになるので、さらにいい材料を仕入れ、よりおいしい商品を作ることも可能になる。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

「当店のガトーショコラは世界一おいしい」と自信を見せる氏家氏
「当店のガトーショコラは世界一おいしい」と自信を見せる氏家氏

FC店舗は今年中に全国で50店舗前後となる見込みで、最終的には各都道府県に1店舗以上を展開したい。ちなみに、図らずも当店のPRに大いに貢献する格好となった新庄監督の本拠地・北海道でも近くオープンできる見込みだ。

これまでは、「ここでしか購入できない」ということで総本店を「最強の1店舗」という形でビジネスを進めてきたが、今後は、「最強の1店舗」は維持したまま、全国的な認知度も加えて、ビジネスを拡大させていきたい。また、FCを全国展開していけば、自ずと海外進出の話も持ち込まれるだろう。当店のガトーショコラは本場フランスをしのぎ、世界一おいしいと自信を持っている。この自慢の商品を世界に届けてみたい。

企業データ

企業名
ケンズカフェ東京
Webサイト
設立
1998年6月
資本金
800万円
従業員数
5人
代表者
氏家健治 氏
所在地
東京都新宿区新宿1-23-3 御苑コーポビアネーズ1F
Tel
03-3354-6206
事業内容
ガトーショコラ専門店