コロナ禍でがんばる中小企業

飲料用から工業・医療用ストローへ活路拓く【シバセ工業株式会社】(岡山県浅口市)

2020年 10月 28日

シバセ工業本社外観
シバセ工業本社外観

1.コロナでどのような影響を受けましたか

アルコール検知器用ストロー(先端の白い部分)
アルコール検知器用ストロー(先端の白い部分)

シバセ工業はプラスチックストローの製造・販売会社だ。主力は飲料用ストローで、長さや口径、形状などにバリエーションをもたせ約200種類を製造、月に1000万~2000万円を売り上げていた。ことに2019年にブームを迎えたタピオカミルクティー用の太口径のストローは絶好調。昨年5月は専門店が増加したところに連休が重なり過去最大の3000万円の売り上げを記録した。

ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で、政府は4月16日に緊急事態を宣言。外食産業への営業自粛要請に加え、一般消費者の外出外食自粛もあり、今年5月の飲料用ストローの売上は一転して過去最低の500万円に激減してしまった。

飲料用ストローの注文減にともない土曜日の営業を停止。一時は工場の生産ライン稼働率を60%程度に落とし、生産現場の従業員も交代で休みにした。

2.どのような対策を講じましたか

医療器具カバーストロー
医療器具カバーストロー

手をこまねいているわけにはいかない。ストローメーカーがコロナ禍で行う事業として何ができるのか。コロナ禍で需要が減った業界や製品、逆に需要が増えた業界や製品を調査し、「どの業界で」「何が」「誰に」「どうして」売れているかを徹底的に分析した。

着目したのが、アルコール検知器の吹き込みに用いる「アルコール検知器用ストロー」だ。運送業者は、ドライバーの乗務前、顔色や呼気、声の調子、アルコール検知器による酒気帯びの有無を確認することが義務づけられている。従来は市価200~300円するマウスピースが使い回されていたが、新型コロナの感染懸念があると、タクシーやバス会社などに直接売り込んだところ、1本1円で使い捨てできると注目され、4月の出荷数は前年の3倍、約200万本に伸長した。

同様に医療機関で患者の鼻に薬剤を噴霧する機器の先端に着ける「医療器具カバーストロー」も好調だ。これまでは医師が患者の診察で薬剤噴霧器を使用するたび消毒液で消毒していたが、使い捨てストロー装着で衛生面を一段と高められる。2年前に医療機器メーカーと共同開発したものの、今年3月までの売り上げはゼロだった。コロナ禍で院内感染が懸念され始めたことから、医療機器メーカーが医師らに再度聞き取りや売り込みをしたところ、注文が殺到。1本10円の医療器具カバーストロー出荷数は4~5月で合計2万本となった。

今年7月中旬からは新型コロナ感染の有無を確かめる「PCR検査用唾液採取ストロー」も医療器具メーカーから引き合いがあり、特注の受注生産対応で月20万~30万本を製造・販売している。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

衛生に配慮した同社の生産現場
衛生に配慮した同社の生産現場

自らのリソースを見つめ直し営業を強化したところ、売上高は回復しつつある。活路を拓いた工業用や医療用のストロー製造はニッチ分野で、国内には弊社の競合メーカーが見当たらない。ある意味で独占マーケットのため、今後も市場拡大が大いに期待できる。現在も主力は飲料用ストローで全体売上の7割を占めているが、海外製の流入や環境保全意識の高まりで需要に陰りがみられる。5年から10年以内には飲料用と工業・医療用の売上比率を5対5にもっていきたい。

プラスチックストローは金型が要らないため、低コスト・短期間で作ることができ、他の分野に応用できる汎用的な素材だ。工業・医療用以外にも各分野の企画・開発部門向けにアピールし、使い易く、人にやさしいストローを作っていきたい。

企業データ

企業名
シバセ工業株式会社
Webサイト
設立
1949年11月12日
代表者
磯田拓也 氏
所在地
岡山県浅口市鴨方町六条院中3037
Tel
0865-44-2215

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