コロナ禍でがんばる中小企業

徹底した感染対策で北海道観光を再興【株式会社萬世閣】(北海道洞爺湖町)

2020年 7月 20日

洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス
洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス

1.コロナでどのような影響を受けましたか

当社は洞爺湖万世閣ホテルレイクサイドテラス(北海道洞爺湖町)、定山渓万世閣ホテルミリオーネ(札幌市南区)、登別万世閣(北海道登別市)の3ホテルを運営している。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、海外からの入国禁止をはじめ、国内間と道民の札幌への往来自粛要請、2月末の北海道単独・4月7日の日本政府の緊急事態宣言により、極めて大きな影響を受けた。

団体ツアーや修学旅行、個人客のキャンセルが相次ぎ、宴会や歓送迎会は激減。政府の大皿提供自粛要請により、3月からビュッフェ・バイキングでの食事提供を休止し、料理をテーブルにサービスする形に切り替えた。4月にはインバウンド(外国人旅行客)がほぼゼロとなり、4月24日から6月19日まで3ホテルとも休館を余儀なくされた。

この結果、2~5月の宿泊人員は、2019年が13万8575人だったのに対し、今年は2万9435人と前年同期比で21.24%に激減した。このうち個人客は2万797人(2019年は6万8222人)、団体客は4079人(同1万8548人)、修学旅行は33人(同2050人)、ツアー客は1442人(同7515人)、インバウンドは3084人(同4万2240人)で、特にインバウンドは前年の7.3%に落ち込んだ。2~5月の売上高も2019年は15億9000万円だったものが、今年は3億5000万円(前年同期の21.92%)と大きく減少した。

2.どのような対策を講じましたか

ホテル入口。消毒液とAI顔認証システム付サーモグラフィーを備え、マスク、フェイスシールド、手袋を着用してお客様に対応
ホテル入口。消毒液とAI顔認証システム付サーモグラフィーを備え、マスク、フェイスシールド、手袋を着用してお客様に対応

まず国と北海道のコロナ特別貸付を活用して資金を確保した。飛沫・接触感染を防ぐため、ホテル内の換気や従業員の手洗い消毒、マスク・手袋の着用などを徹底し、密集・密閉・密接という「三密」の回避に取り組んだ。日本旅館協会などの「宿泊施設における新型コロナウイルス対応ガイドライン」を遵守し、部署ごとに感染症予防対策を徹底している。

体温をチェックするために、全ホテルに顔認証システム付きをはじめとした「サーモグラフィー」を導入。レストランと男女大浴場入口に「混雑状況通知システム」を設置し、お客様に三密回避を促した。また「次亜塩素酸水生成器」や「空間除菌清浄機」を導入し、徹底した消毒・換気に努めている。

その集大成として、新型コロナの感染リスクを抑える「新しい生活様式」の北海道版「新北海道スタイル」の実践に向け、7つの習慣化に取り組む姿勢を明確化した。館内や客室に「新北海道スタイル安心宣言」のボードを掲示し、ホームページに掲載した。

併せて、お客様に対してマスク着用や手洗い、利用時間・人数の制限、室内換気などに協力を要請するボードも作成し、掲示・掲載した。同日に同一施設を利用した人から感染者が出た場合に通知する「北海道コロナ通知システム」への登録も促し、6月20日の営業再開から北海道で主流のビュッフェスタイルを復活させることができた。

ただ当初は、消毒液やマスクなどの調達に苦慮した。取引先へお願いして何とか調達でき、取引先との関係性がいかに大切であるかを痛感した。また感染防止に対する従業員への教育が課題だったが、正しい知識を得ることで不安を払拭し、お客様に自信を持って安心・安全を伝えることができている。

一方、3月27日には当社の社長をはじめ道内の7ホテルグループの若手経営者が連携し、ホテルの安全対策をPRした。メディアの取材を受け、紹介されたことで、感染対策をしっかり行っているホテルと認知された。お客様からは「ここまで徹底しなくても」という意見もあったが、徹底した姿を見せることでお客様、従業員に安心・安全を与えられる。他社ホテルからの視察もあり、これからの「標準スタイル」として発信していきたい

3.今後はどのように展開していく予定ですか

「北海道コロナ通知システム」登録のためQRコードを掲示
「北海道コロナ通知システム」登録のためQRコードを掲示

インバウンドは2年は戻ってこないと考えており、2021年7月期は19年7月期実績の70%、22年7月期は同85%の売上目標を掲げている。道民を対象とした「どうみん割」などのキャンペーンを活用しつつ、感染状況を見ながら道外へも売り込み、目標を達成したい。

当社の社長は北海道観光を世界基準にするために「個の競争」から「集の共創」に変える必要があるという理念を持っており、道内の若手経営者と連携した取り組みを始めている。例えばインバウンドに対応し、海外大学生のインターンシップや特定技能・技能実習制度を活用した優秀な海外人材の確保、施設・設備に関する勉強会などを実施している。

感染症予防対策や人材不足により、これからの旅館・温泉ホテル業は昔ながらの「おもてなし」の姿を残しつつも、非接客型サービスやAIの導入が加速すると考えている。自動精算機・券売機やオーダーシステムなどの導入により事務作業効率を格段に向上させる計画で、将来的には他の旅館・ホテルとの共同購買やシステム統合なども視野に入れている。
(回答者・札幌本部総務部長 石塚健一氏)

企業データ

企業名
株式会社萬世閣
Webサイト
設立
2012年3月21日 (創業 1941年5月)
代表者
濱野清正 氏
所在地
北海道虻田郡洞爺湖町洞爺湖温泉21番地
Tel
0570-08-3500