同社代表取締役で創業者の長尾文喜氏はモーター制御と回転運動のプロである。出身地・仙台市の大学で電子工学を学び、卒業後に山形県内のマイクロモーター製造会社に就職。その後、産業用のもっと大きなモーターとそのコントロール(電気制御)の開発を行いたいと、東京都内にある大手総合電機メーカーの工場に移り、最新ブラシレスモーターとその制御を学んだ。
さらに1972年に起業した知人に誘われて転職。そこでも電動リールや歯科医が使う超高速グラインダーなどのモーターとそのコントロールの仕事に携わった。「小型から大型まで、そして超低速から超高速まで、さまざまなモーターとその制御技術を手掛けてきた」と話す長尾氏。そして1994年に独立して妻とナガオシステムを設立した。
創業してしばらくは遠心分離機などのOEM生産を行っていたが、2004年に自社製品「傾斜型遊星ボールミルPlanetシリーズ」を開発。自転しながら太陽の周りを公転する地球と同じように、傾斜させた容器が自転と公転を繰り返す。1方向のみに回転する従来のボールミルと異なり、別の方向からの回転が加わることで粉砕力を飛躍的に向上させた。
傾斜型遊星ボールミルはその後、ひょんなことから3次元ボールミルの開発へとつながる。長尾氏が茨城県つくば市の産業技術総合研究所(産総研)でプレゼンテーションを行っていたときのことだ。隣接する宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究者がたまたま居合わせ、「クリノスタットに応用できるのではないか」とアドバイスしてきたという。クリノスタットとは、回転体を縦・横の直交する2軸で回転させることで重力を相殺し、見かけ上の無重力状態を作り出す装置のことだ。既存の装置は超低速での運転しかできず、しかも高額だった。傾斜型遊星ボールミルの傾斜自転容器と公転円周ゴムを接触させる技術を応用すれば高速・低コスト化が可能とみた長尾氏は「これは面白い」と感じ、開発に取り組んだ。
もちろん縦横に直交した軸で同時に回転させるのは容易ではない。しかし、長年さまざまな回転する装置を手掛けてきた長尾氏は、横軸にモーターがいらないゴム接触型の回転軸を考案し、直交軸の2方向回転を実現した。さらに円柱状の容器を球状に変更した。こうして誕生した3次元ボールミルは2009年に商品化された。