BreakThrough 企業インタビュー

生活になくてはならない、しかし地味な存在の“壁紙” 業界全体を活性化するための卸売商社の挑戦【株式会社サタケ】

2017年 12月 16日

人と人とをつなげる壁紙「HalCos heart」
人と人とをつなげる壁紙「HalCos heart」

summary

“貼ってはがせる壁紙”は、業界のタブーに対する挑戦
“卸売”企業が業界全体のためにアクションを起こした
扱うのは“画像とデータの組み合わせ”だから用途は無数にある

新しい壁紙の形

住居でも店舗でも、居住空間に必ずある壁紙。私たちは日々壁紙に囲まれて生活しているが、一度選んでしまえばあとは無頓着、という人は多いのではないだろうか。

そんな壁紙を使った、貼ってはがせる“貼る+コスプレ・コスメ”をコンセプトにした製品が「HalCos(ハルコス)」だ。既存の壁紙の上から、違和感なく貼ったり、跡を残さずシールのようにはがしたりできるため、気軽に室内の模様替えが可能。また、インクジェットでどんな画像でもプリントできるため、スナップ写真を引き伸ばして壁紙にしたり、好きな画像を貼ったり、イベントを告知したりなど、これまでの壁紙の概念にとらわれない多様な使い方ができる。

さらに、ハート型の二次元バーコードを付加した「HalCos heart(ハルコス ハート)」では、ハート型二次元バーコードをモバイル端末で読み取ると、音声再生も可能。壁紙と一緒にメッセージが流れるなど、音を使った演出もできる。孫の写真とメッセージを壁紙にして祖母に贈る、といったこともできるというわけだ。

これがポスターだと違和感を感じるかもしれないが、「HalCos」はまさに壁紙そのものであるため、空間に違和感なく同化する。より親近感や温かみを感じられるだけでなく、例えば壁の一角に和柄を施すなど、インテリアとして高度な用途にも耐えうる。

卸売企業からの挑戦

この「HalCos(ハルコス)」を開発した株式会社サタケは、昭和30年創業の内装建材の卸売商社。東京・秋葉原に本社を構え壁紙を扱って60余年、これまでやってきた問屋業から、それを昇華した形で小売業スタートに踏み切った。壁紙をはじめとした内装業界は、いわゆる“職人”の世界。BtoB だけでなく、自らがBtoCの形態で広く壁紙を世の中に届かせるために、業界としてアクションを起こしていかなければと考えた。いまでは、「HalCos」の開発、展開を始めたほか、個人向けのインテリア雑貨を扱うオンラインショップ「STYLE+(スタイルモア)」も運営している。

内装業界は、職人やプロが担う部分が大きいため、本来であればDIYはタブー。「HalCos」は壁紙のDIYにつながるため、壁紙メーカーでは絶対に考えつかないものだった。それでもサタケが手がけるには意味がある。それは、壁紙というものに対する愛情と自信があるから。気軽に壁紙を着せ替えたり、新たな用途を提案することで、壁紙自体に対する注目度も高まる。注目度が高まれば、壁紙はもっと身近なものになる。「HalCos」が、これまで居住空間の中であまり優先度が高くなかった壁紙を見直すきっかけになればと考えたのだ。

HalCos

サタケの事業展開の根底には、「人と人とをつなげたい」という理念がある。もともと卸売というメーカー、職人、小売をつなげる存在だったサタケだが、次の一手に打って出たのは先細りしがちな内装業界をより活性化するため。業界全体のためだ。写真と音声を壁紙にしたのも、何かを伝えたい、人と人のつながりを作りたいという思いから。サタケには、こうしたつながりを重視する土壌があったからこそ、ビジネス拡大につながったといえる。
バーコードでWebにアクセスできる「HalCos heart」は、画像とデータの組み合わせの数だけ広がる。写真にメッセージ音声を乗せて壁紙にするというフォーマットは、汎用性が高く、Web上のデータを更新することで、同じバーコードのまま音声だけ更新される、といった使い方も考えられる。毎週更新されるイベント告知など、実店舗を持つ業態とのマッチングにも広がりを感じる。

企業データ

企業名
株式会社サタケ

内装材の卸としてインテリア商品を取扱っております。秋葉原に本社を置き、東京・千葉・埼玉・茨城の地域に密着したネットワークを活かした営業を展開しております。当社は、ただ商品を売るのでなくプラスしてさまざまなサービスを提供することで60年の歴史を歩んでまいりました。これからも古くて新しい企業を目指します。