さらに大きな課題もある。インフラ計測のニーズは極めて高い半面、その市場性はそれほど大きくない点だ。国土交通省の試算によると、トンネル、橋梁に加え、ダム、プラント、空港・港湾などコンクリート構造物への投資額は、今後30年間で195兆円に上るという。しかしその大半は構造物の更新・補修需要で、このうち計測市場は9兆円、年間では3000億円に過ぎない。道路トンネルに限ると年間100億円ほどで、「ビジネスベースでうまみがあるわけではなく、大企業が相次いで参入する分野ではない」と話す。
このため木暮社長は「会社を設立した当初から、出口戦略はIPО(株式上場)ではなく、インフラ分野への新規参入を戦略として持つ大企業へのM&A(事業売却)と決めていた」と言い切る。2019年に埼玉りそな銀行が出資したのに続き、21年にはJFEエンジニアリングと東京センチュリーが第三者割当増資により出資した。22年度に国家プロジェクトが終了し、この成果が国土交通省の「定期点検要領」に反映され、市場の拡大が見込める段階で、大企業に事業そのものを売却する計画だ。
「我々のようなベンチャーにインフラ点検を全国展開する体力はない」と木暮社長。国の予算を使って国立研究所が基礎研究を担い、事業展開段階に入れば大企業に委ねるという新たなビジネスモデルと位置付ける。事業売却後は国立研究所が持つほかの研究シーズを活用して、次の国家プロジェクトやベンチャー設立にかかわっていくという。