BreakThrough 企業インタビュー

東京の下町から製造業界を支える板金屋の 「プレスレスフォーミング工法」がモノ作りを加速させる【協和工業株式会社】

2018年 2月 12日

安価かつ短期で試作金型を可能にする「プレスレスフォーミング工法」
安価かつ短期で試作金型を可能にする「プレスレスフォーミング工法」

summary

高精度でローコスト、短納期を実現
展示会などで知ってもらうことこそ重要
独自の強み「下町ネットワーク」を活かす

安く、早くを追求した高精度な工法

金型は自動車、カメラやパソコンといった家電製品など、私たちの生活に欠かせない製品を制作していくうえで、最も重要な基礎となる型だ。金型の形状の複雑さや絞り、大きさにもよるが、その制作に1000万円以上のコストがかかることも珍しくない。
1度の制作で完成するならまだしも、満足いく型を作るには試作を何度も重ねることも多々ある。物作りをするうえで絶対に外すことのできない「型作り」には膨大なコストと時間が不可欠だった。
協和工業株式会社は、「門外不出の職人技術」と、板を切り重ねることで形状を独自に簡易加工するシボリ技術「積層金型工法」を融合させ、プレスを使わず水圧によるシボリ加工を行う独自の工法である「プレスレスフォーミング工法」を提供する。同工法では先端の球形状のツールで板を局所的に引き伸ばして成型するため、プレス加工のように周囲の材質が肉ずれしにくいことを特長としている。
プレス加工の金型試作と比較して、納期面では従来3〜4週間かかっていたものを1週間から10日に短縮、費用面では従来の3分の1から4分の1ものコストダウン化を実現させた。

プレスレスフォーミング工法

引き合いだけに頼らない地道な営業活動と積極出展

同社が提供する「プレスレスフォーミング工法」を用いた金型試作は主にOA機器メーカーなど、従来より付き合いのあるメーカーから好評を得ており、紹介によって顧客を獲得することも多い。しかし、製造業界での競争に生き残るには営業活動も疎かにはできない。「工法の提案ではなく機械を売りにきたと勘違いされたこともある」「知名度が低いぶん、どうしても伝わりにくい。プレスレスフォーミング工法の強みを上手くお伝えしながらご要望にお答えすることに苦労している」と語る同社営業部長の奈良章弘氏は営業の難しさを感じながらもその表情は明るい。
その理由は展示会への積極的な出展だ。JR九州が運行する周遊型臨時寝台列車「ななつ星」に同社の工法を利用したヘッドグリル部が採用されたのはまさに展示会への出展がきっかけだった。同社が提示するメリットが伝わればそれは新たな販路拡大に繋がる。ななつ星と同じく豪華観光列車の内装や、小型衛星の一部を同社が手がけることができたのはプレスレスフォーミング工法のメリットが活かせた結果だ。
「周知されるまでにどれだけかかるかはわからないが、芽が出ることを楽しみにしている」と語る同氏は、異業種との出会いが互いに新たな業界を知るキッカケとなる展示会への出展を重視している。

プレスレスフォーミング工法

下町ネットワークによる連携プレーで差別化

モノ作りにおいて1つのモノを作り上げるその過程では、板金、切削など、さまざまな企業に仕事が分散される。顧客の立場からすると、それぞれの企業への発注は分散してしまう以上、手間がかかる部分だ。
同社だけで提供できるのは板金加工技術だが、周辺の会社と「下町ネットワーク」と呼ばれる独自の協力体制を作り、連携している。それにより、顧客の手間を省くことで効率を高め、納品までを同社で手がけることを可能にしている。板金加工技術はもちろん、下町という横のつながりによる連携で一括引受が可能という付加価値を提供し、同業他社との差別化にも力を入れている。

新たなものを開発し、何度も試作を重ねる金型へのコストは削りたくても削れないというのが本音。削ることのできない工程だからこそ、同社のプレスレスフォーミング工法による金型加工のコストダウン化は製造業界全体にとって歓迎されるものとなっている。
これまで同社は食品業界やデザイン業界など、異業種との出会いを大切にし、その中で製造業界とは異なる難度の課題にぶつかりながら考え、技術を向上させることでその壁を乗り越えてきたという。異業種との出会いに積極的な同社の姿勢には見習うべきものがある。

企業データ

企業名
協和工業株式会社

創業50年の歴史の中で、歴代の職人から継承された精密板金技術と、最新鋭の機械での加工を融合させた新しい独自技術で、日本のものづくりに貢献して参ります。