コロナ禍でがんばる中小企業

「地域未来牽引企業」選定を機に瀕死の温泉街再生を手掛ける【株式会社EVENTOS】(広島市中区)

2022年 7月20日

「食を通した地域活性化業」を掲げるEVENTOS。前列中央が代表取締役の川中英章氏
「食を通した地域活性化業」を掲げるEVENTOS。前列中央が代表取締役の川中英章氏

1.コロナでどのような影響を受けましたか

有福温泉再生の核としてオープンした「有福ビアンコ」
有福温泉再生の核としてオープンした「有福ビアンコ」

「from farm to table(農園から食卓まで)」をコンセプトに、農産物生産活動から、ケータリングサービスやレストラン、産直市などの飲食事業まで幅広く活動している。創業は1988年。料理仕出し会社としてスタートし、当時のバブル景気に乗ってイベント向けケータリングサービスを手掛けた。バブル崩壊で売り上げが激減したが、その後は1995年に広島市の中心街にレストラン、2008年に酒販店を開業した。

2011年には、広島市郊外の中山間地域で農園レストラン「吉山ビアンコ」(広島市安佐南区沼田町吉山)を開いた。事業に社会性を深めるべく、食を通した農村活性化事業として始めたものだ。2016年には同じ吉山地区で、産直市とバイキングレストランの併設店舗「おいしい吉山」を開店した。

また、働き方改革にも積極的に取り組んだ。創業してから20年ほどは、従業員の働きやすさなど頭になく、それが災いしたのか、離職率が高かった。これではいけないと思い、従業員が自分の使命や目的、やりがいを持っていきいきと仕事ができる職場づくりを目指した。

たとえば、従業員同士でお互いに仕事をカバーしようと、全員が3つの仕事をできるという1人3役の多能工化を進めた。これにより生産性が向上するとともに、従業員が休日を取得しやすくなった。また、11日間の「チャレンジ休日」を導入した。有給休暇と合わせて1カ月間の長期休暇も可能で、とくに若い従業員は海外旅行に出かけるなどしており、モチベーションのアップにつながっている。こうした取り組みが評価され、2018年に広島県働き方改革実践企業の認定を受けた。

コロナ禍によるイベントの相次ぐ中止で、とくに主力のケータリングサービスが大打撃を受けた。企業向けは95%のダウン、ウエディング関係に至っては100%ダウン、つまりゼロになった。コロナ前には4億円ほどあった売上高が半分以下に激減した。レストランの売り上げも大きく落ち込み、4店舗あったうち、接待での利用が多かった繁華街近くの店舗を閉店せざるをえなかった。最初の緊急事態宣言が発令された期間を含めて2020年3月~5月は全事業所が営業休止となり、役員と幹部を除き、全従業員が休業という形で雇用調整を行った。

2.どのような対策を講じましたか

キッチンバス導入で遠方でも出来立てのケータリングを提供
キッチンバス導入で遠方でも出来立てのケータリングを提供

まず、従業員の間に広がっていた不安を払拭するため、同年5月から6月にかけて全員参加の研修を6回開催した。そこで雇用調整について説明したほか、財務状況についても開示した。当社は自己資本比率が高いなど財務状況は良好だったので、仮にあの状態が続いたとしても2024年までは倒産せずに持ちこたえられるとのシミュレーションを示したところ、不安は大いに解消された。

また、自粛期間を機に、中期経営計画を修正し、事業の定義を「食を通した地域活性化業」へと変更した。すでに吉山地区で農村活性化事業を行っていたが、今後は農村だけでなく、さまざまな地域での活性化に取り組もうというものだ。さらに、「地域未来牽引企業」を申請し、2020年10月に選定された。これは地域経済の中心的な担い手となりうる企業として経済産業省が選定する制度で、当社の事業を進めるうえでぜひとも選定されたいと以前から考えていたものであった。

この地域未来牽引企業への選定が島根県江津市にある有福(ありふく)温泉の再生事業につながった。地域未来牽引企業としての事業活動方針について金融機関に説明していたところ、話がやがて江津市に伝わり、再生事業に参画してほしいと打診されたのだ。有福温泉は、奈良時代から続く温泉街で、もともと広島市内からの観光客が多いなど広島とは縁がある場所。しかしバブル崩壊後の景気低迷や大火、豪雨などで衰退し、コロナ禍でとどめを刺された状況となっていた。地域に飲食店も物販店もなくなり、かつて20軒あった旅館は相次いで廃業し、わずかに3軒のみが細々と営業を続けていた。

当社は行政との協働で再生事業に着手し、2021年10月、地域の中心地にレストラン「有福ビアンコ」をオープンした。同店では、2軒の旅館のセントラルキッチン機能とフロント業務を引き受けており、各旅館の固定費を劇的に下げることになった。また、他の地域での再生事業で導入されていた「泊食分離」とのコンセプトを提案し、宿泊と飲食の場を分けることとした。具体的には、飲食は「有福ビアンコ」や同じく当社が開いたワインバーが担い、旅館は湯治用や美容用など特色ある宿泊に特化しようというものだ。有福温泉では、近く2軒の旅館がオープンする予定で、そちらのセントラルキッチン機能とフロント業務も「有福ビアンコ」が引き受ける。

このほか、もともと予定した計画をコロナ禍により前倒しで実施したものがある。ひとつが、遠方でも作り立てのケータリングを提供できる「キッチンバス」の導入だ。それまでケータリングの提供範囲は広島市内に限られていたが、半径100km圏内まで拡大したいと考えていた。バスの製造会社も当時は仕事が激減していたため、通常より安価で、しかも短期間で完成できるということだったので、2020年7月にキッチンバスを購入した。自粛期間の反動で外食へのニーズが高まったこともあり、キッチンバスは出だしから好評で、遠くはちょうど100km離れた広島県福山市まで出向いた。キッチンバスの追加導入も検討している。

もうひとつがテイクアウト専門店。ケータリングの場合、注文を2日前の午前中で締め切るという制約があり、そうした制約に縛られないテイクアウト事業への進出を計画していた。コロナ対策としてもニーズが高まっており、事業再構築補助金を活用してテイクアウトの惣菜店「Delica shop BOUQUET」(広島市西区)をオープンした。これらの事業展開が奏功し、今期(2023年3月期)の売上高はコロナ前の水準に回復する見通しだ。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

事業再構築補助金を活用してオープンしたテイクアウト専門店「Delica shop BOUQUET」
事業再構築補助金を活用してオープンしたテイクアウト専門店「Delica shop BOUQUET」

有福温泉の再生事業では、地域に数多くある空き家の活用を進めたい。簡易宿泊所などに改修し、とくに若者に長期滞在してもらい、その延長線上で定住につなげたい。その際には働く場が必要となるので、有福温泉の地域特性やニーズに適した事業者、たとえば美容関係やリフォームの事業者などの誘致を図りたい。

この再生事業を手掛けたことで、同じような問題を抱えている地域が数多くあることをあらためて実感した。広島県内から有福温泉に見学に来る人も多い。「食を通した地域活性化業」を掲げた当社としては、有福温泉での経験も活かし、地域コンサルタント事業へと進化させたいと考えている。衰退しかかっている地域で当社の従業員がプレイヤーとして再生事業の立ち上げから関わり、核となる飲食店のオープンを手始めに、地域特性に応じた活性化策を提供するような会社にしていきたい。

企業データ

企業名
株式会社EVENTOS
Webサイト
設立
1988年10月
資本金
4000万円
従業員数
48人
代表者
川中英章 氏
所在地
広島県広島市中区舟入中町4-35
Tel
082-296-4200
事業内容
各種ケータリングサービス、飲食業