コロナ禍でがんばる中小企業

リターンライダーのマイクロツーリズムに活路【株式会社Full Throttle(フルスロットル)】(香川県観音寺市)

2021年 3月 26日

同社の友枝正千社長
同社の友枝正千社長

1.コロナでどのような影響を受けましたか

同社本店外観
同社本店外観

フルスロットルは、香川県西部の西讃エリアで二輪車の販売・整備や四輪車の車検整備を行う従業員4人の企業だ。2014年に友枝正千(まさち)が先代社長で実父の茂弘から事業承継した。主要事業の二輪車販売は、若年齢層の二輪車離れや同社が提携する二輪車メーカーの販売網見直しなどで売り上げが減少しており、新たな事業創出が課題だ。香川県よろず支援拠点に相談するなど対応を模索していた。

当社の近隣には、潮だまりの水面が鏡状になり、ボリビアのウユニ塩湖のような写真が撮れる三豊市の「父母ヶ浜(ちちぶがはま)」や、山頂に位置する本宮から瀬戸内海が一望できる高屋神社の「天空の鳥居」など近年インスタグラムなどで話題を集める絶景の場所がある。外国人観光客や首都圏・関西圏をはじめ県内外からの観光客が急増していたが、空港や鉄道の最寄り駅から目的地への便が悪いのが難点だった。

こうしたニーズに対応するため、3年前から排気量50ccの原動機付き自転車を中心に10台弱のバイクを高松空港や高松丸亀町商店街などに配備し、観光客へのレンタルバイク事業を本格展開した。ヘルメットや保険などが付いてレンタル料金は1時間500円から、別料金で県内の乗り捨てやバイクデリバリーも可能という便利さが奏功し、毎月平均20万円ほどの売り上げを計上していた。

ところが2020年4月の新型コロナ感染症による緊急事態宣言の発令にともなう移動自粛で、国外はもとより、県外からの観光客が激減。レンタルバイク事業の顧客が地域内で回遊することによる地域住民への感染不安もあり、積極的なPRも控えなければならない状況になってしまった。

2.どのような対策を講じましたか

レンタル用大型バイクと
レンタル用大型バイクと

緊急事態宣言が解除されてからも県外客の利用が低調だったことから、思い切ってレンタルバイクのターゲットを県内客に変更した。県内客に、地元や近隣での宿泊観光、日帰り観光といったマイクロツーリズムをアピールしようという作戦だ。コロナ禍の巣ごもりで溜まったストレスを発散するためのアウトドア需要もあるだろうと判断した。

ターゲットはかつて通勤や通学、さらには余暇時間にもツーリングなどでバイクを利用したことがある40~50歳代のリターンライダーだ。彼らのニーズに対応するため、売上が半減した企業を対象とした国の持続化給付金などを使って、排気量650cc、900cc級の大型二輪の新型モデルをレンタル車両に投入、レンタル台数を約20台に拡充した。

2020年10月から11月に実施された国の「Go Toトラベル」キャンペーンで回復した観光需要もあり、「リターンライダー」を中心とした新規需要によるレンタルバイク事業は2020年8月から2021年2月までに約180万円を売り上げ、当社の利益を向上させた。また新規で二輪車購入を検討する客が練習用にレンタルを利用するなど、将来の見込み顧客も発生、レンタルバイク事業を通じて当社の認知度も向上し、もともとの本業である車検・整備等の既存事業への誘導にも成功している。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

二輪車の整備は手慣れたものだ
二輪車の整備は手慣れたものだ

二輪車メーカーの再編成を背景に、地域内の小型店舗は業務変革を迫られている。今後は様々なメーカーの二輪車を幅広く取りそろえることで、顧客ニーズに対応していきたい。

一方で、いまある経営資源を活用して新規の売上増を図っていくことも重要だ。とくに既存事業の売上向上にも繋がるレンタルバイク事業は、今後も事業を拡大する。コロナ禍の今のうちに地域内の電車やバス会社、観光協会・主要観光地などとの連携を強化して体制の整備を図り、コロナ収束後に備えるつもりだ。

企業データ

企業名
株式会社Full Throttle(フルスロットル)
Webサイト
設立
2014年11月1日
代表者
友枝正千 氏
所在地
香川県観音寺市村黒町260-1
Tel
0875-24-0977

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