まず取り組んだのが、社内でのリブランディング活動だった。2020年4月ごろから、これからを担う若手職人らを中心に3~4カ月かけて議論を重ね、新たな企業ミッションを検討した。そこで打ち出したのが、「Art is Try ~皆の心の中のアートを具現化する担い手であれ」。アーティストリーという社名に重ね合わせたブランド展開だ。そして、「『5軸×3D×職人』という3つの技術を高い水準でコラボレーションさせた製品作りがコアコンピタンス(競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力)である」ということを社内で再認識した。
そんな社内のリブラディング活動と並行して、全国7都市の学生と連携して、「NARAプロジェクト」をスタートさせた。
NARAは「New Artistry Rest Aria」の略称。自社の休憩所を製作するのにあたって、コロナ禍で通常の学生生活を送れない建築家の卵である学生たちと出会い、オンライン産学連携による自社技術を活かした開発を始めた。
全国7都市の学生が参加し、アイデアを議論しながら設計・デザインをやりとりしながら「わの休憩所」を完成させた。曲線美が美しい休憩所はアーティストリーの職人らの手加工と、5軸CNCによって作り上げた。クラウドファンディングを活用して資金を集め、プロジェクトに賛同してくれた取引先から資材の提供を受けるなどして、半年以上をかけて完成にこぎつけることができた。
NARAプロジェクトは当社の新しいビジネスモデルとなった。
このプロジェクトは、当社の強みである3D曲面の製造技術を生かして、日本にはないものを作り、コロナに打ち勝つような広告塔にする目的で取り組んだ。完成した休憩所は2021年のウッドデザイン賞を受賞するなど幅広い分野から高い評価を受けた。これまでわれわれの取引ルートではつかめなかった人たちから「休憩所を見たい」「工場を見学したい」といった問い合わせが相次いだ。同じようにコロナで苦しんでいた経営者や学生たちからの問い合わせも増えた。「わの休憩所」は、「わ(輪・和)が広がってほしい」との思いで名付けたが、本当にいろいろな「わ」が広がった。