コロナ禍でがんばる中小企業

全員営業で増収増益、NPO法人にシフト【株式会社FMよみたん】(沖縄県読谷村)

2022年 7月20日

スタッフとポーズをとる仲宗根朝治社長(前列中央)
スタッフとポーズをとる仲宗根朝治社長(前列中央)

1.コロナでどのような影響を受けましたか

読谷村地域振興センターの3階に本社・スタジオがある
読谷村地域振興センターの3階に本社・スタジオがある

沖縄県読谷村(よみたんそん)は沖縄本島中部に位置し、2022年5月末現在で人口4万1864人と日本で最も人口の多い村である。その読谷村には、かねてからコミュニティFMを開局する構想があり、2008年8月に商工会の村おこし塾メンバーや村職員を中心に村民41人で「未来へ繋ぐ双方向の情報共有」を理念に、FMよみたんを設立。同年11月に県内10番目のコミュニティFM局として開局した。

開局特別番組は「読谷まつり」の会場から生中継をして、地元出身の女性2人組アーチスト「Kiroro」(キロロ)も参加し放送された。その後、動画配信サイトを活用した映像事業「YOUTVインターネットテレビ事業」をスタートし、16年4月にはインターネットテレビの専用スタジオを新たに併設。同時期に「ふるさと納税返礼品事業」を読谷村より受託し、ラジオ、映像配信と並ぶ経営の3本柱に育った。

番組の要となるパーソナリティ
番組の要となるパーソナリティ

ラジオ事業は365日24時間放送で、朝7時から夜10時まではほとんど生放送で運営し、番組のDJ(パーソナリティ)は120人余りの地元のボランティアが担う。ボランティアによる番組枠は完全に埋まっており、番組待ちのエントリー者も数多い。3カ月に1度の番組改変時には新規番組担当者へ4時間の研修を行い、番組パーソナリティとしてデビューする形だ。社員15人も番組を担当し、会社の運営(営業・企画・総務・経理・業務・取材など)を担っている。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響は大きかった。ラジオを核としたメディア事業では広告収入が激減。コロナ禍前の2019年6月期に5929万円だった広告収入は、翌20年6月期は5152万円に減少し、さらに21年6月期は4454万円と大きく減少した。多くの人が利用するラジオスタジオを消毒するため、生放送の時間を短縮せざるを得なくなった。さらに番組担当者やスタッフの休みが頻繁になり、放送運営に支障をきたすようにもなった。

2.どのような対策を講じましたか

インターネットテレビ番組を撮影・制作
インターネットテレビ番組を撮影・制作

まず感染症対策として、入退室管理や番組時間の短縮によるスタジオ消毒などを徹底した。放送業務はエッシェンシャルワーカーとしての責任があり、休業はしなかった。また資金繰り面で、当初は先が見えないこともあり、いち早く沖縄公庫から3000万円を借り入れた。ただ、現在も手付かずであり、今後そのまま返金する予定だ。

その上で「コロナ対策営業強化プロジェクト」と称し、読谷村行政の全課をターゲットに社員全員を営業担当者に振り分けて「伺い営業」を行う活動をスタートさせた。コロナ禍という「災害時」に必要不可欠な情報発信とは何なのか、当社が出来得る事業・取り組みを模索して提案する活動である。

並行して、もう一つの事業である読谷村ふるさと納税返礼品事業を強化した。返礼品の種類やポータルサイトを増やし、全国100局余のコミュニティ放送局に1時間の「ふるさと納税番組」を配信して、納税額の増加を図った。

この結果、メディア事業の一般広告収入は減収となったものの、行政からのコロナ関連広報収入は増加した。感染症に関わる企画はラジオ事業、映像事業、その他地域通貨関連事業、今年度は防災ラジオ設置事業など、多岐にわたり行われている。また、ふるさと納税返礼品事業は、コロナ禍に伴う「巣ごもり需要」が高まり、事業手数料としての収入が大きく増えた。

コロナ禍前の2019年6月期の売上高は6520万円で、経常損益は127万円の赤字だった。しかしこうした取り組みの結果、2020年6月期の売上高は8642万円、経常利益は256万円と黒字転換し、直近の2021年6月期は売上高が約9200万円で、経常利益は915万円と増収増益を果たした。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

村内のイベントを中継するスタッフと仲宗根社長(中央)
村内のイベントを中継するスタッフと仲宗根社長(中央)

2022年5月31日に「NPO法人いちへき786」(沖縄県承認申請中)を設立した。コロナによる現状の社会環境が今後も継続される一方で、メディア事業を維持し、ふるさと納税返礼品事業のさらなる強化を進めるためには、従来の株式会社組織では難しいと考えていたからである。公益事業として、非営利組織でやる方が、持続可能な事業運営ができるのではないかと判断した。

2020年8月の株主総会でこの方針を伝え、NPO法人の設立に向けて準備を進めてきた。今後、FMよみたんが担ってきたメディア事業とふるさと納税返礼品事業を、新組織にシフトしていく。全国の方々から頂いたふるさと納税からの事業手数料で、ラジオ事業の運営を賄うようにする。これにより、社会の変化に対応出来る組織となり、スタッフの業務に対する多様化も進むものと考えている。

またNPO法人への移行を機に、賛助会員制度(入会金1000円、年会費4000円)を導入し、読谷村での事業を応援してくれる皆様の賛同を募っている。より多くの賛同を得ることで発信する情報の価値も高まると考えており、当面の目標は120人。NPO法人名の「いちへき」は勇気、心意気という意味があり、メディア事業を末長く続けていくという我々の姿勢に、ぜひとも賛同・参加してほしいと考えている。

企業データ

企業名
株式会社FMよみたん
Webサイト
設立
2008年08月11日
資本金
1550万円
従業員数
15人
代表者
仲宗根朝治 氏
所在地
沖縄県中頭郡読谷村字喜名2346-11 読谷村地域振興センター3F
Tel
098-958-7860