農業ビジネスに挑む(事例)
「リッチフィールド」先端的温室栽培技術で高効率にパプリカを生産する
- 先端技術による養液栽培を用いる
- グローバルGAPに基づく生産
パプリカ、トマトを先端的な温室栽培技術で生産し、販売する企業グループがある。リッチフィールドグループだ。
同グループは、農業生産法人・リッチフィールド栗原有限会社(2003年、宮城県栗原市に設立)、株式会社リッチフィールド由布(2009年、大分県由布市に設立)、リッチフィールド株式会社(2011年設立の販売会社)の3社が有機的に結合して組織された。
独自性の高い生産方法で機能性・オリジナリティの高い野菜を栽培
リッチフィールド栗原、同由布はともに温室でパプリカを生産する。その特徴は、独自性の高い生産方法で機能性・オリジナリティの高い野菜を栽培することだ。そのため両社では、循環式の養液栽培システム(オランダ・プリーバ社開発、トミタテクノロジーが日本のディーラーとして納入、設置、諸運転・調整、取扱い説明)でパプリカを生産する。
その目的は、独自性の高い生産を実現するためにコストパフォーマンスの高い施設園芸技術を導入し、さらに各施設で生産方式の統一や技術の標準化、情報の共有化を図ることで生産効率を高められるからだ。
パプリカの栽培工程はおおまかに、(1)種まき(トレーに種をまく)(2)鉢あげ(発芽を四角いキューブに植える)(3)定植(温室のヤシ殻培地に移植)(4)芽かき(不要な芽を除く)(5)紐への巻付け(芽かきを繰り返しながら、伸びる蔓を紐に巻き付ける。蔓の成長に応じて4-5mの高所での作業になる)(6)収穫(7)箱詰め・出荷、の順となる。
リッチフィールド栗原、同由布ではこの生産工程の環境制御システムを共通化し、栽培技術者が施設内のどこからでも状況把握できるようにしてある。その施設は、天窓がコンピュータ制御により自動開閉し、暖まった空気の排気や循環により温室内を最適な環境に保ったり、被覆フィルムを二重構造にすることでフィルム間に空気層をつくって保温性を高めるなどさまざまな工夫がなされている。
また、栽培工程のすべてのデータを蓄積・分析することで生産効率の向上につなげる。例えば、培地の養液は10日ごとにつくるが、廃液の分析とパプリカの生育状況を勘案しながら必要な肥料を追加し、そのデータを蓄積することでパプリカ栽培のデータベースにする。
さらに、リッチフィールド栗原、リッチフィールド由布ともにグローバルGAP(農業における生産物の安全、健康を目的とした生産手法・手順の規範)に基づいてパプリカを生産しており、それにより施設では安全管理、環境管理などの項目に従って作業する。
国産ゆえの鮮度のよさ、安全性で勝負する
現在、リッチフィールド栗原は夏秋を中心に周年栽培し、1.8haの栽培面積で年間360トン、リッチフィールド由布は冬春を中心に周年栽培し、1.6haの栽培面積で年間320トンのパプリカの収穫を目指しており、直近の生産量は年間180-200トンという。また、販売先は量販店と加工会社が中心だが、卸業者にも出荷する。
パプリカの国内市場は年間3万-3.5万トン。そのうち約10%の3200トンが国産で残りの90%以上を輸入している。そのシェアの差は、国産品の価格が輸入品に比べて2-3割高いことに起因しているようだが、鮮度や安全性の点では国産品に一日の長があるのだから、リッチフィールドグループ(2012年にパプリカを栽培するリッチフィールド美浦が設立、2013年から生産開始)としてそうしたメリットをアピールした販売に工夫を凝らしていくという。
企業データ
- 企業名
- リッチフィールド株式会社
- Webサイト
- 代表者
- 対馬正子
- 所在地
- 神奈川県藤沢市打戻字大下19-2