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「技術」と「環境」2本柱で世界に誇る水道インフラ支える「株式会社光明製作所」
2025年 10月 20日

蛇口をひねると、当たり前のように出てくる水。日本中に張り巡らされた水道本管から各家庭やマンション、ビルなどに供給されている。日本が世界に誇るインフラだ。大阪府和泉市の株式会社光明製作所は、水道本管から各世帯に水道水を供給する給水装置の製造を戦後間もないころから手掛けてきた。水道事業者の信頼は厚く、全国500以上の自治体が同社製品を利用している。
2001年には水道管の更新工事の際に使われる樹脂管を用いた仮設配管のレンタル事業を業界で初めて事業化した。耐久性の高い素材の配管を使用。工事終了後に回収した配管を洗浄・殺菌してリユースする。環境に配慮した取り組みが自治体や民間事業者から高い評価を受け、需要が急拡大。本業をしのぐ急成長を遂げている。
仮設配管をレンタル 新規事業が急成長

「工事のたびに使い捨てにされていた仮設配管を見て『もったいない』と取り組み始めたのが始まり。昨今の環境意識の高まりとともに、需要が高まってきている」。代表取締役の金村哲志氏は仮設配管のレンタル事業を始めた背景をこう説明する。
老朽化した水道管などの更新工事では工事区間に仮設の配管を通してバイパスを作って水を供給する。近隣の世帯に断水などの影響が出ないよう配慮している。こうした仮設配管には塩化ビニル製の管が使われていたが、安価な反面、耐久性がなく、繰り返し使うことが難しかった。このため、工事が終わると廃棄するのが業界の常識になっていた。

光明製作所では、2000年12月に環境マネジメントシステムISO14001の認証を取得したのを機に、環境にやさしい商品づくりへチャレンジした。その中で、使い捨てが当たり前だった仮設配管の問題に着目したという。
配管を繰り返し使えるよう、配管には柔軟性・軽量性に優れ、耐久性が高い配水用ポリエチレン管を採用。水質の安全性を確保するため、全自動の洗浄殺菌システムを独自に開発した。作業・施工しやすいよう管と管をつなぐジョイント部分を工夫・改良すると、「施工が簡単になり、作業時間を短縮できた」と評判になった。従来の使い捨てによる仮設配管に比べて、工事費用を抑えられるだけでなく、工期の短縮や廃棄物の削減にもつながる。近畿圏を中心に活用する自治体が全国に広がった。また、2021年にはマンションなどの集合住宅用の仮設配管レンタル事業も開始した。
機能性が高い独自開発した配管は、水道工事だけでなく、災害復旧にも力を発揮する。このため、多くの自治体や団体がこぞって災害協定を締結。サステナブルな取り組みが新たな成長の原動力となっている。
品質第一のものづくり 水道局などの信頼勝ち取る

光明製作所の創業は戦後間もない1947年(昭和22年)までさかのぼる。鋳物工場に勤めていた金村氏の祖父が独立して起業。当初は鋳造からスタートしたが、やがて顧客から「加工もしてほしい」「製品づくりも」と頼まれるようになった。顧客のニーズに対応するため、加工機械を導入し、顧客の要望に応える中で、メーカーとしての地位を確立していった。
得意とする製品は、水道本管から水を引き込む部分に使われる分水栓や継手、止水栓といった給水装置。水道局や水道工事業者、管材商社が主な取引先となっている。高い安全性が求められるため、厳格な規格や基準が設けられ、第三者機関の製品検査も厳しい。品質第一のものづくりを貫くことで信頼を勝ち取っていった。

金村氏によると、給水装置を手掛ける企業は、各自治体水道局の許認可が必要なため、国内に数えるほどしかないという。規格に準じた製品が求められることから差別化がしにくい業界だが、製品開発にも積極的に取り組み、1990年代に開発した「マルチ止水栓」は関西を中心に多くの自治体が採用するヒット製品となった。
「組織力」重視の経営に取り組む

金村氏は2021年に父から経営を引き継ぎ、3代目の代表取締役に就任した。高校卒業後、家族の反対を押し切り米国の大学に進学。会計学を学び、大手証券会社に入社した。3年勤めたのち、2008年に家業に入った。職人かたぎの厳しい父のもと、製造や生産管理、営業と現場経験を積んだ。
「当社の自慢は『人』。まじめに前向きにものづくりに向き合う社員が多い」と語る金村氏。「組織力」を重視した経営に取り組み、毎年テーマを一つ設定して社員と共有。社員の意識改革に努めている。
就任1年目のテーマは「気付く力、違和感を感じる力」、2年目は「丸投げせず自分なりに考える力」、3年目は「自律性」。普通のことを普通と考えず、違和感に気づく力を高める。次に課題を人に丸投げせず、自ら解決策を考えるようにする。そして自身が主体性を持って行動する。新しいテーマを実践することで、社員一人ひとりの意識にも少しずつ変化が表れてきたそうだ。その成果を生かし、4年目以降は、新たなステップに入ったテーマを設定した。

「3年間は個人の力を高めることをテーマにしてきた。サッカーの練習にたとえると、3年間は個人練習。4年目以降は、これまでの練習に成果を生かしてセットプレーの練習をする段階」と金村氏。4年目には「仲間に手を差し伸べる」をテーマに掲げた。周囲に意識を配り、社員同士の連携を高める組織の構築に努めた。そして、2025年度、5年目のテーマは「正しい行動の判断基準とは?」にした。
こうした考え方のベースになっているのは、海外留学での経験だという。「現地の学生が一人ひとり主体性を持って行動している姿を目の当たりにして大きな学びになった」と語る。そのうえで、「日本全体に言えることだが、当事者意識が低い人が多い。ビジネス社会は社長の個人戦ではなく、全社員参加のチーム戦。その意識を持つことが大事だ」と指摘した。
2015年に中小企業大学校関西校の経営管理者研修を履修。経営者人生の大切な宝になった。当時、ゼミで学んだ仲間との付き合いは今も続き、腹を割って経営の悩みや苦労を話せる関係を築いている。「みな異業種の経営者。業界の仲間と違い、利害関係なく話ができるところがいい」。研修自体も上品な座学だけでなく、強烈な個性を持った講師たちから、さまざまな刺激を受けたそうだ。
インフラ老朽化、人手不足…水道事業の課題解決に挑戦

全国の水道事業は曲がり角を迎えている。インフラの老朽化が進む一方で、予算が確保できず更新が進んでいないのが実情だ。人口減少が進む中で、水道の維持にかかるコストが増大し、今後の水道事業の経営にどんな影響を与えるのか、金村氏は危惧している。
その中で、光明製作所が開発に取り組んでいるのが、IoT技術を活用して遠隔で操作可能な「スマートバルブシステム」だ。
引っ越しなど入退居で水道利用の開始や停止をする際、水道局の職員が直接現地に向かい、水道のバルブの開閉作業をしなくてはならない。地域によっては移動に時間がかかるところも多く、遠隔操作できるようになれば、業務の大幅な効率化につなげることができる。現在、実用化に向けて全国各地の水道局が実証実験を行っている。
このほかにも人手不足が深刻化する水道局をサポートするため、給水装置の製造だけでなく、施工までサポートする事業の展開を検討している。実現すれば、給水器具の製造から設置までをワンストップサービスで提供できる体制が構築できる。実現に向けて工事などのノウハウを持った事業者とのM&Aの可能性も模索している。
「中小の工事業者の中には後継者難で存続が難しいところも出てきている。第三者承継(M&A)の環境も整っているので、お互いがウィンウィンの形で事業を展開できる道筋を考えたい」と話していた。
企業データ
- 企業名
- 株式会社光明製作所
- Webサイト
- 設立
- 1947年12月
- 資本金
- 2000万円
- 従業員数
- 130人
- 代表者
- 金村哲志 氏
- 所在地
- 大阪府和泉市テクノステージ1-4-20
- Tel
- 0725-51-3000(代)
- 事業内容
- 各種給水装置の製造・販売、水道仮設配管資材レンタル事業