現在、年間1億円以上の売上高を持つ襖メーカーは関東で3社、全国でも10社を切っているという。伝統産業を受け継ぐ数少ない襖メーカーとして生き残っていくために同社は海外市場に目を向けた。2021年12月からは商工中金と中小機構の支援を受けて海外展開プロジェクトをスタートさせた。
同年10月から同社は「5S」(整理、整頓、清掃、清潔、躾)についてハンズオン支援を受けていた。「専門家が派遣され、見る見るうちに事務所や工場の中が片付いていった」(大久保氏)。商工中金と中小機構による支援が非常に役立つことを認識した大久保氏は、前々から抱いていた海外展開の夢に向けて引き続き両者の支援を受けることにした。
欧米や東南アジアを中心にリサーチを進めた結果、日本の文化や伝統産業への関心が高いといわれるフランスにターゲットを絞った。そしてプロジェクト着手から1年半経った今年6月、大久保氏は専門家らとともに商談のために渡仏した。
約30年ぶりの海外渡航だった大久保氏はパリで大きな衝撃を受けた。世界最古の百貨店「ル・ボン・マルシェ」を訪れた際、岩手県の南部鉄器や岐阜県関市の包丁といった日本の伝統産業品が販売されていたのだ。ほかにも日本の伝統的な製品や食品などを数多く目にしたという。「“失われた30年”で日本は負けたと言われるが、それは間違い。自分がバブル崩壊後の負の遺産の処理に追われている間に、着実に海外展開を進めていた中小企業もあったのだ」。
また事前の海外市場調査で、伝統的な和室欄間に使用されていた組子細工や、障子、屏風が脚光を浴びていることも知った。「海外進出なんてウチには関係ないと思っていたが、それも誤り。次は襖の番。今がチャンスだ」との思いをいっそう強くして1週間ほどのパリ訪問を終えた。