中小企業・小規模事業者によるカーボンニュートラルの取り組み事例

社内から出た「脱炭素ブランディング」のアイデアで競合他社と差別化:ドライシステムソリューション株式会社(東京都中央区)

2025年 2月 20日

企業データ

企業名
ドライシステムソリューション株式会社
Webサイト
設立
1993年5月
従業員数
6名
所在地
(本社)東京都中央区銀座7丁目13番6号サガミビル2階
 
(神奈川大和工場)神奈川県大和市草柳3丁目6番4号田辺千栄里工場3号
業種
製造業

機械や金属部品、服飾関係の輸出梱包時に錆やカビを防止するための乾燥剤を開発・製造販売。吸湿力を高めつつ、包装材にはリサイクル材を、中身には天然系の素材を使用した環境配慮型の製品開発にも力を入れて取り組んでいる。今回は神奈川県大和市にある同社の大和工場で代表取締役社長 有馬三郎氏にお話を伺った。

ドライシステムソリューション株式会社

[取り組みのきっかけ]
他社との差別化ポイントに悩んだこと

インタビューに答える同社代表取締役社長 有馬三郎氏
インタビューに答える同社代表取締役社長 有馬三郎氏

1993年に創業し、乾燥剤事業は2014年からスタートしたドライシステムソリューション株式会社。輸出梱包の際に錆やカビを防止するための乾燥剤を展開しており、「無水塩化カルシウム」を主力商品として事業をスタートしたが、現在はより吸湿能力の高い「無水塩化マグネシウム」を使用した商品を展開している。
カーボンニュートラルの取り組みを始めたきっかけについて、同社 代表取締役社長 有馬三郎氏はこのように語る。

「我々の乾燥剤事業への参入はかなり後発なのですが、お客様の立場からして新しいところからわざわざ同じようなものを購入はしないだろうと。そのため、より良い性能であるなど差別化を図る必要がありました。他社があまりやっていないことで、脱炭素ブランディングに取り組もうと考えたのがきっかけでした。ちょうどその頃、お客様から環境配慮について聞かれたことがあり、お客様も気にされている部分なのかなというのも感じました」(有馬氏)

塩化マグネシウムを使用した商品に関しても、「無水」であることは珍しく、同社の1つの差別化ポイントとなっていたとのことだが、お客様の声を受けて環境配慮の取り組みを始めた。

[具体的な取り組み]
「できること」から始めつつ、環境配慮型の新商品開発にも着手

リサイクル材を使用した乾燥剤
リサイクル材を使用した乾燥剤

実際にどのような取り組みを行っているか尋ねてみた。
「具体的な取り組みとしては、まずはできることからやっていこうというスタンスで始めました。もともとレンタルしていたフォークリフトや昇降機といった機械を電動型に変更した上で購入し、工場と事務所の電気をLEDに交換しました。その後他社のサポートを受けながらスコープ1(自社が直接排出する温室効果ガス)とスコープ2(自社が間接排出する温室効果ガス)を算定し、CO2排出量の見える化を実施しました」(有馬氏)

事務所のLED
事務所のLED

さらに、社員から環境に配慮した新商品が必要ではという声が上がり、開発に着手した。
「リサイクル材を使用した環境配慮型の新商品で差別化を図っていこうという声が社内からもあがり、これを進めることにしました。乾燥剤は、中身に関しては天然の資材を使うことは他社でもありますが、表の袋の部分までリサイクル材にしている会社はほぼ無いようでしたので、開発に取り組みました」(有馬氏)

電動型のフォークリフト
電動型のフォークリフト

全社的に同じ熱量で脱炭素に取り組めているのかも聞いてみると、有馬氏はこう語る。
「取り組みに関しては社員側から自発的に声があがったことを活かしつつ、ちょうど会社として進めようとしていたこととお客様からのニーズも合わさり、社員たちも高いモチベーションで進められています」(有馬氏)

有馬氏はカーボンニュートラルの情報収集についても積極的に動いており、東京商工会議所から脱炭素セミナー等の情報を取得しつつ、様々な環境関係の展示会に足を運び世界各国の事例や他社の取り組みに関する情報を得ている。加えて、取引先にもヒアリングをしてリアルな声を聞きながら、自分たちにできることは何か?を考えたと言う。

[感じたメリット・課題]
脱炭素関連の取材で知名度アップ、取引増加の効果も実感

代表取締役社長 有馬三郎氏

こうして取り組み始めた脱炭素ブランディングは、徐々に効果が表れてきた。

「世間的に電気料金は上がっていますが、フォークリフトなどの機械を電動化することで光熱費は以前とあまり変わらない状態を維持できているため、上がるはずだったコストを削減できていると感じます」(有馬氏)

光熱費という目に見えるコストカットの他にも、脱炭素関連の取材で取り上げてもらう機会が増えたと言う。

「業界では後発の会社なので、脱炭素関連の取材で色々と取り上げてもらうことは、会社の知名度もあがりいろんなお客様に目を向けてもらえるようになる点で、大きなメリットです。また実際に取引が増えたり、大手企業からの引き合いが増えたりという利点もあります」(有馬氏)

逆に苦労している点などを尋ねると、こう答えてくれた。
「取引先から好評を得ているとはいえ、最終的には商品を売らないといけない訳ですから、リサイクル材を使用する意義や効果を取引先にどう理解してもらうのかは課題と感じています。この点においても、会社の知名度が上がって、より強いブランディングができると解消されていくのかもしれません」(有馬氏)

カーボンニュートラルの取り組みによって様々な媒体に取り上げられている同社は、着実に脱炭素化に貢献するリサイクル材を用いた乾燥剤メーカーとして広く認知されている。

[今後の展望]
子どもたちに資源を残したい。そのために「できること」を大切に

代表取締役社長 有馬三郎氏

リサイクル材を使用した環境配慮型の新商品は、販売までに2年の開発期間を要したと言う。

「今回の商品開発は我々がプロデュースをしたので、いろんな企業と協力させてもらいながら度重なる素材の打ち合わせやテストなどを経て完成までこぎつけました。その過程では協力企業の担当の方が変わることもあり、コミュニケーションの齟齬やいろいろな制約がありました。現製品はリサイクル材の割合が25%なのですが、今後の商品ではこれを100%に近づけていくことに加え、更に環境に良い商材の調査に取り組んでいます」(有馬氏)

今後のカーボンニュートラルの取組みとしては、スコープ3(原材料仕入れや販売後に排出される温室効果ガス)に移行し、CO2排出量削減を意識しつつ、知名度をさらに上げて商品をより広めたいと語る有馬氏。ここまで脱炭素に取り組む理由のひとつとして、「子どもたちに資源を残したい」とも語っていた。

「どうせ使うなら環境に配慮されたものがいいよね、という風土になれば良いなと思います。限りあるものを次の世代に少しでも残せるようにするのが我々の責務だと思っていますので、製造業としてやっている以上、これを意識してやっていきたいです。
普段の生活からも、飲み水に関しては娘からプレゼントしてもらったマイボトルを使っています。個人でもできることからやっていこうと意識するようになりました」(有馬氏)

欧州を中心とした諸外国に脱炭素に向けた意識が高まる中、有馬氏は自分の子どもたちやその先の世代のために、普段からも「できること」の取り組みを怠らない。

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