さらに、打撃後の原木を水中に一晩沈める。水中は自然界の夏の豪雨の再現であり、それによりしいたけ菌の繁殖をさらに促す
水に沈めた原木をハウスや山などの涼しい場所に移して組み置くと、2~3日すると樹皮を破ってしいたけが発芽し、1週間ほどすると収穫できる大きさに成長する
原木栽培では、(4)の打撃の強さと(5)の水の温度によって原木ごとに生育させたいしいたけの数を調整する。まさに職人技の世界だ。
しいたけの収穫は朝、夕、夜中の1日3回で、1つの原木で1年に4回収穫できる。また、原木は収穫後にハウスか山中で約1カ月間休ませ、しいたけ菌が原木の栄養を吸収・貯蔵してつぎのしいたけを発生させるのに備えさせる。ちなみに休養後の原木は再び(4)の工程以降を経てしいたけの収穫へと至る。
1本の原木の重さは5~10kg、それを1人が2000本を手作業で組み直す。たいへんな重労働だ
手のひらの感触で原木のすべてがわかる
「原木栽培はすべての工程が手作業であり、本伏せ・天地返しなどは手のひらの感覚に完全に頼るわけですから、たいへんな栽培法であることは確かです」(社長の千洋さん)
天地返しで原木に触れるとき、この原木は元気か、疲れているかが手のひらの感触を通してわかるという。逆にいえば、わからなければ栽培できないほど人への依存の高い栽培方法なのでもある。
一方、菌床栽培は1つの原木が小さく、栄養剤を投与して空調管理された施設で栽培するため、90日間という短期間に低コストで大量生産できる。そのため、国内のしいたけ栽培の90%以上が菌床栽培となり、また、中国からも安価なしいたけが大量に輸入されたことから、国内の市場からは原木栽培のしいたけがほとんど見られない状況となった。
当然、流通市場では菌床栽培のしいたけに価格で太刀打ちできない。そのためしいたけブラザーズは原木栽培のしいたけの販路を自ら開拓しなければならなかった。
「まず、地元のスーパーで試食販売をさせていただきました」(千洋さん)
来店する客の反応は「肉厚でおいしい」「しいたけの香りが強くする」「昔し食べたしいたけみたいでおいしい」と上々で、さらに地元スーパーの他の店舗でも試食販売を展開したことで売上も着実に伸ばしていった。さらに、福井県に本拠を置くやきとりチェーン(200店舗)や高級スーパーから取引の提案が舞い込んだことで直販での大口の顧客を築いていった。大規模やきとりチェーン、高級スーパーのいずれも本物のしいたけの味を客に提供したいという理由からの取引提案だった。
目の行き届く範囲でビジネスをする
現在、しいたけブラザーズは年間で生しいたけ50トン、乾燥しいたけ150kgを生産する。また、佃煮、中華まんじゅうなどの加工品も手がけ、売上の内訳は生しいたけ70%、乾燥しいたけ20%加工品10%となる。
直売所では生しいたけ、乾燥しいたけ、佃煮・中華まんじゅうなどの加工品を販売。しいたけ狩には年間2000人が訪れる
販売先は、量販店、飲食店、ホテル、百貨店など約50社。会社の所在地(栽培地)には直売所を設け、2005年からしいたけ狩も実施し、年間で約2000人がしいたけの収穫を楽しんでいる。
しいたけ菌は日本でも150種が登録されており、しいたけブラザーズはそのうち7~8種の菌を使っている。
「原木栽培にこだわり、目の行き届く範囲内でビジネスしていますので、これ以上商売を大きくするつもりはありません」(千洋さん)
原木栽培にこだわる理由は、当然、味を中心にした品質にあるが、さらにクヌギ、コナラなどの広葉樹を原木に用いることは、森林の生態系の維持に寄与することであり、自然の循環や里山の再生にもつながるという環境保全への高い意識がある。
また、自然の環境に近い栽培だからこそ、安全で安心なしいたけを生産できる。それがしいたけブラザーズの信念でもある。
「しいたけの栽培で最も心がけていることは、自分の子どもに食べさせるものだからこそ安全で健康によいものをつくるということです」(千洋さん)
だからこそ、国内の市場シャアは小さくとも、しいたけブラザーズは原木栽培のしいたけにこだわり、つくり続けていく。
- 企業名
- 有限会社しいたけブザラーズ
- 代表者
- 横田千洋
- 所在地
- 岐阜県加茂郡川辺町鹿塩983-1