農業ビジネスに挑む(事例)

「八面六臂」ネットを活用した生鮮食材流通で従来のリスクを回避する

  • 飲食店との生鮮食材の受発注をネット化
  • 物流も自社で担う

八面六臂は、魚、肉、野菜などの生鮮食材をインターネットを介して流通させるベンチャー企業だ。

多品種少量の生鮮食材を高品質、低価格で顧客に届ける。それが同社の事業コンセプトだ。その根底には、創業者・松田雅也さんの「食」に対する次のような信念がある

「例えば、10年ぶりに会う旧友を連れて行く飲食店の候補を思い浮かべるとします。その際、その人の頭に思い浮かばないような飲食店はいずれつぶれてしまう。それが食の本質だと思います」

おいしい食事を友と貴重な時間を費やしながら楽しむ。それは友ばかりでなく、恋人でも家族でも同じで、大切な人と共に口にしたいと思われることこそ飲食業における食の本質と考える。

「1回1回の食事はまさに一期一会です。ならば、それを供する料理人にとってもお客さまをもてなすことは一期一会なはずです」

その料理人が一期一会のもてなしに臨むうえで最強の武器、それを“食材”という形で提供したい。それが八面六臂の信念であり、事業コンセプトの基盤となっている。

開店前のリスクを避けられる

八面六臂の設立は2010年。その3年前に松田さんは、電力事業者と需要家を仲介する事業で創業したが、ITを活用した鮮魚卸売へと事業転換して社名も八面六臂に変更した。

この事業は、八面六臂が築地中央卸売市場や地方の卸売市場から買い付けた鮮魚をスマートフォンを介して飲食店に直接販売するものだ。

従来、こうした鮮魚の卸売は電話やファクスで飲食店から注文を受けていた。が、仕入可能量を上回る注文が顧客(飲食店)から入ってしまうと品不足になり、それを顧客に知らせようにも飲食店が閉店して料理人が帰宅した後では間に合わず、ようやく品不足を料理人が確認できるのは翌日の仕込み時となってしまうため、その日メニューに支障を来たしてしまう。

ところが、スマホであれば、帰宅途中でも料理人に通知ができ、代替の鮮魚の注文も受けられる。顧客と自らのリスク回避に役立つわけだ。

2011年4月、注文用の専用アプリをインストールしたiPad(現在はスマートフォンに代替)を飲食店で利用してもらおうと営業を始めた。この注文用端末は無料で貸与する。営業開始から1週間で3軒の飲食店が八面六臂の端末を導入した。その後も顧客の反応を聞きながらサービスを改良し、同年末に30軒、さらに1年後には100軒の飲食店と契約した。

八面六臂のサイトでは顧客の注文を受け付けるだけでなく、旬のおすすめ食材もピーアールする

世界へビジネスモデルを展開していく

八面六臂の商圏は東京、埼玉、神奈川、千葉であり、約2000軒の飲食店を顧客に抱える。当面の目標としてそれを1万軒まで伸ばしたいという。そのためにも鮮魚以外の商品を揃える必要がある。そこで2015年2月から青果の取扱いを始めた。「多品種少量で品質のよいものを低価格で」の事業コンセプトは青果でも変わらない。仕入先も鮮魚と同様、中央卸売市場、地方市場、そして生産者と多様に設けている。

また、既存の顧客からも鮮魚に加えて青果の注文も入り始めたことから、一挙に注文数量が増えた。

「数百種類の野菜や果物を取り扱っていますが、注文の品目数は圧倒的に青果が多いです。それだけたくさんの種類の野菜を飲食店は使うということであり、お客さまにとっても鮮魚と併せて弊社に注文できるので利便性が高くなるということだと思います」

自社の物流システムで東京、埼玉、神奈川、千葉の商圏に配送する

その顧客にとっての利便性を支える大きな要因が自社で配送システムを持っていることだという。配送のほとんどを自社の物流網で対応しており、仕入れ・受注という商流と配送という物流の両方を担っていることが強みになっている。

今後の目標は、顧客数1万軒のほかに、商品アイテムの増加とオペレーションコストの低減を挙げる。さらに2、3年後には同社のビジネスモデルを海外へも展開していく。日本のおいしい鮮魚、青果を世界に広めていこうとしている。

企業データ

企業名
八面六臂株式会社
Webサイト
代表者
松田雅也
所在地
東京都中央区豊海町2-24