激変する時代を乗り越える中小企業

原材料・エネルギー高騰が足かせに 新規事業開拓し成長目指す【東光鉄工株式会社(秋田県大館市)】

2023年 7月 20日

東光鉄工社長の菅原訪順氏
東光鉄工社長の菅原訪順氏

1. 事業内容をおしえてください

鉄骨の「曲げ加工」に高い技術を持っている
鉄骨の「曲げ加工」に高い技術を持っている

TOKOドーム、建築鉄骨、橋梁、水門、クレーン、圧力容器などの各種鋼構造物製品の設計・製作やタイヤ試験機、自動搬送装置、省力化機械、精密金型などの各種産業機機器の設計・製造と幅広い事業を手掛けている。

中でも鋼板の「冷間曲げ加工」に高い技術を持っている。アーチ状建造物などデザイン性の高い特殊鉄骨はお客様から高い評価を受けている。特殊な鋼材を曲げるための装置も自社で開発した。その技術を応用し、1989年ごろに開発した「TOKOドーム」は、軽くて強度の高い新しいスタイルの鋼構造物で、倉庫やスノーシェルター、格納庫、防災シェルターなどに利用される。南極の昭和基地にも採用され、売り上げの10%を占めるほどまで伸びている。

数多くの鉱山があった秋田県大館市で鉱山向けの機械や坑枠の製造・販売を手掛けたのが現在の事業の原点。1938年に創業し、1964年ごろから鉱山向けの事業展開を始めた。得意とする鋼板の曲げ加工技術は、鉱山の坑道を補強する支保工の製造技術が基礎となっている。また、鉱山で使う貯蔵タンクや軸流送風機が圧力容器やプラント機器などの事業の基盤となった。2015年には新たにドローン事業を立ち上げた。国内メーカーとして農業用・防災用のドローンを設計・開発から製造・販売まで一貫して行っている。

地元鉱山の衰退に直面しながらも鉱山で培った技術とノウハウを生かし、事業の多角化に果敢に挑戦してきた。事業部の数は10に上り、それぞれが成長の原動力となっている。「創造と挑戦」を実践しながら「100年企業」を目指している。

2.外部環境の変化でどのような影響を受けましたか

南極・昭和基地に設置された東光鉄工の「TOKOドーム」
南極・昭和基地に設置された東光鉄工の「TOKOドーム」

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした原材料・エネルギー価格の高騰が経営に大きな影響を与えている。建築鉄骨やプラント機器の製造で多くの鋼材を使うのだが、この2年ほどで鋼材価格は2倍近くまで高騰してしまった。一般的な建築鋼材であるH形鋼は1トン当たり10万円前後だったものが、今では20万円ほどになっている。2022年度になると、鋼材メーカーから毎月のように価格引き上げの通知が来るような状態になった。値上げのスピードがあまりに早く、見積書の作成が困難になるほどだった。

お客様からの依頼を受けて、見積書を作成する際、ある程度、鋼材価格の上昇を想定した価格設定にするが、調達先に鋼材の注文を出すのにどうしても時間差が生じてしまう。見積もった材料費よりも鋼材の価格が上昇してしまうと自社の負担となる。収益を圧迫する要因となった。お客様や調達先との価格交渉もこれまで以上に気を配らなくてはならなくなった。

産業用機器の製造も手掛ける東光鉄工。半導体不足による部品の調達難にも直面した
産業用機器の製造も手掛ける東光鉄工。半導体不足による部品の調達難にも直面した

価格以上に大きな影響を与えたのが、原材料の調達難だった。ある時は、建築物を建てる際に必要なボルトが手に入らず作業がストップしそうになるなど、消耗品のボルトの調達にも気を配らないといけない。半導体不足でモーターや電装品もなかなか手に入らない。注文してから半年待ちというのはまだいい方で、特殊品は「1年待たないと手に入らない」と調達先から言われることも多くなった。

完成品製造のリードタイムが大幅に悪化し、平時であれば、3~4カ月で完成するものが、6~8カ月かかる。一部では納期の遅延が発生し、お客様の了解を得て未完成のまま納品するような事態も起きた。部材が調達できてから改めて作業を再開するような段取りを取らざるを得ず、作業の効率性も悪化してしまった。

今年6月からは電気料金が前年比2割以上も上昇し、さらにコストが上昇している。電気料金は原材料価格と異なり、なかなか表面に出てこないコストなのでお客様への説明も難しい。下請け比率が6割と高く、受注生産型の事業を展開する当社にとっては、厳しい状況が続いている。

3. どのような対策を講じましたか

新規事業として取り組むドローン事業
新規事業として取り組むドローン事業

価格の動向などをお客様に丁寧に説明して、価格転嫁にご理解をいただくようにしている。お客様も予算があり、厳しい状況であることは同じだと思う。粘り強く価格交渉を行いながら、折り合いをつけている。現在は価格転嫁が進み、原材料の仕入れ価格に対して8割程度まで適正化が進んでいる印象だ。

価格上昇の防衛先としては、見積書の有効期限を最短で2~3週間に設定するようにした。通常の見積もり期限は1~2カ月ほどだったが、より短い期間でお客様には判断をしてもらっている。有効期限が過ぎた場合、再見積もりして適正価格での取引ができるように努めている。また、価格上昇の影響を受けないよう原材料の調達も半年先、1年先を見越して発注し、納期に影響が出ないよう工夫している。

お客様から「この部品や材料を必ず使ってほしい」と指定を受けることがある。指定を受ける部品や材料は人気が高く、調達に時間がかかるケースが多い。こうした場合には、お客様に代替品への切り替えを提案したり、お客様の了解を得て、契約前に調達先に発注したりして納期のスピードアップを図っている。

4. 今後はどのように展開していきますか

ダビットクレーンの国産化に取り組む
ダビットクレーンの国産化に取り組む

重点市場として取り組んでいるのが、原子力発電、洋上風力発電、防衛の3分野だ。原子力分野では、青森県六ケ所再処理工場や福島第一原子力発電所の廃炉事業、また、原発の再稼働などのマーケットに向けて、原子力プラント機器の受注活動に注力する。また、防衛事業では、防衛省のインフラ整備事業で「TOKOドーム」を採用いただいた。

また、洋上風力発電では、設備の運用や維持管理に重要な役割を担う「ダビットクレーン」の国産化にチャレンジしている。風車設備に船舶から機器や資材を運び入れるためのクレーンなのだが、ほとんどが海外製で占められている。洋上風力の拡大が見込まれる中、大きなマーケットになることが期待されており、現在、岐阜県にある産業機器メーカーと共同開発を進めている。

新規事業として取り組みを進めているドローン事業では、自社製品ドローンの新たな用途提案に力を入れたい。洋上風車の点検用や荷役運搬、防衛向け空撮ドローンなどの製品化を進めている。こうした新規事業を強化することで、逆風を乗り越え、経営の安定化と収益拡大を図っていく。

企業データ

東光鉄工の本社
東光鉄工の本社
企業名
東光鉄工株式会社
Webサイト
設立
1973(昭和48)年7月
資本金
8500万円
従業員数
263人(2023年3月1日現在)
代表者
菅原訪順 氏
所在地
秋田県大館市釈迦内字稲荷山下19-1
Tel
0186-48-3234
事業内容
TOKOドーム、建築鉄骨、橋梁、水門、クレーン、圧力容器など各種鋼構造物の設計製作、タイヤ試験機、自動搬送装置、省力化機械、精密金型などの各種産業機器の設計製作、クレーン、各種産業機器の保守メンテナンス、ドローンの設計・開発、製造・販売、教習など