コロナ禍でがんばる中小企業
「ペイフォワード」で医療従事者もカカオ農家も笑顔に【Dari K株式会社】(京都市北区)
2020年 10月 26日
1.コロナでどのような影響を受けましたか
当社はインドネシア・スラウェシ島の農家を指導して栽培・発酵したカカオ豆を直接仕入れ、チョコレートを製造・販売している。カカオ豆の新鮮さを生かした生チョコをはじめ、結婚式の引菓子、ホテル・百貨店・観光客向けの土産商品として製造・販売するほか、カカオ豆やカカオニブ、製菓用チョコレートの卸販売も行っている。
2月のバレンタインデーは影響がほぼなかったものの、3月のホワイトデーのころから影響が出て、売り上げが大幅に悪化。結婚式の中止・延期や観光客の激減に伴い、4月の売上高は前月に比べて7割も減少した。特に売り上げの8割を占めるホテルや土産店からの返品が相次ぎ、一時は在庫が3カ月分以上も積み上がる状況になった。
Dari Kが運営する直営店舗でも、京都駅店(京都市下京区)は4月13日から6月1日まで休業を余儀なくされた。また4月末に開業を予定していた東京大丸店(東京都千代田区)は開業時期を遅らせ、6月1日の開店となった。
2.どのような対策を講じましたか
インドネシアの契約農家500軒からの買い取りを続けるために、「ペイフォワード」という取り組みを4月21日に始めた。消費者が購入した商品と同額のチョコレートを、医療の最前線で新型コロナウイルス感染症と闘っている医療従事者に寄贈し、ほっと一息をついてもらうという試みである。
もともとインドネシアのカカオ豆の収穫時期は5~6月がピーク。この時期に日本で販売する商品が売れなければ、契約農家から買い取ることさえ難しくなり、農家の収入が激減することが予想された。そうした中、「コロナ禍の中で休む暇もなく働いてくれる医療従事者に対して何かできないか」という声が顧客から寄せられた。社内で検討した末、消費者と医療従事者、カカオ農家を結び付け、すべてが「ウィン・ウィン」になれる仕組みを考案した。
最初は「500セットも売れるかどうか」と半信半疑だったが、5月末までの期間中に3500件もの賛同者に「ペイフォワード」の商品を購入していただいた。そして7月末までに全国28医療機関に勤務する7万人の医療従事者にチョコレートを贈ることができた。
もともと商品の原価率が高く、送料を負担して購入金額と同じだけのチョコレートを贈るという仕組みは、正直言って赤字。ただこれを機に、それほど知名度の高くないDari Kの商品をメディアに多数取り上げてもらい、オンラインショップを中心に売り上げは前年同月比2割減にまで回復した。また医療従事者がリピーターとなって応援してくれるようになり、利益面では計れないメリットがあったと考えている。
3.今後はどのように展開していく予定ですか
単なるチョコレートの寄付ではなく、企業活動の一環として「ペイフォワード」のような社会に貢献できる仕組みは消費者の賛同を得やすいと感じた。そこで第2弾として、これを進化させた「ペイフォワード・アグロフォレストリー」という取り組みを8月に始めた。
アグロフォレストリーとは、直射日光に弱いカカオの木を守るため、カカオ以外の作物の苗木を「シェードツリー」(日影樹)として植え、混植を行うこと。さまざまな木を植えることで生物多様性を守るほか、カカオが不作に陥った時でも、カカオ以外の作物がリスクヘッジとなり、収入を安定的に確保できる。
ところがコロナの影響によりカカオ豆の国際相場は急落し、この半年間でカカオ農家の収入は前年比で2~3割も減少した。インドネシアは物価が高騰しており、農家は生活するのがやっと。農園に新しい苗木を植えて安定的に収穫を得るといった将来を見据えた投資ができなくなっている。
そこで手作りトリュフとドライフルーツやナッツをセットにした「ペイフォワード・アグロフォレストリーセット」を商品化。その売り上げの3%をドリアンやココナッツなどトロピカルフルーツの苗木の購入費に充て、現地農家に配布する仕組みだ。8月10日から月末までに68セットを販売しており、ドリアンの苗木なら約35本をカカオ農家に贈ることができそうだ。
企業データ
- 企業名
- Dari K株式会社
- Webサイト
- 設立
- 2011年3月11日
- 代表者
- 吉野慶一 氏
- 所在地
- 京都市北区紫竹西高縄町72-2
- Tel
- 075-494-0525
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