コロナ禍でがんばる中小企業

溶岩プレートのネット販売に活路【有限会社砂原石材】(岐阜県飛騨市)

2020年 12月 14日

屋外でも使える「飛騨溶岩プレート」
屋外でも使える「飛騨溶岩プレート」

1.コロナでどのような影響を受けましたか

岐阜県飛騨地方で墓石を主力に石材業を経営している。創業は、江戸後期の寛政12(1800)年。昭和28(1953)年3月に法人化し、平成20(2008)年4月に5代目を継いだ。建築石材や造園・土木工事も受注して経営を多角化している。

墓自体の需要低迷から全国の石材店が設備投資を控え、加工石材が減少している中、機械設備を拡充して石材の自社加工に注力している。職人ならではの技術の伝承にも努めている。

近年は、新商品を開発して主力事業を補完している。槍ヶ岳や剣ヶ峰で知られる乗鞍岳などがある地元飛騨の石材を用いた調理板「飛騨溶岩プレート」は、地元の旅館や高級焼肉店などを中心に好評を得ている。

「煙や焦げ目が少なく、耐熱・耐久性に優れている」「火にかけると遠赤外線が発生する溶岩石の効果で、素材の旨味を引き出す」「熱伝導効率が高く、食材の内部まで均一に熱が通る」ことなどが特長だ。コロナ禍以前から中小機構中部本部の支援を受けて、台湾への輸出に取り組んでいる。

新型コロナの影響による葬儀自粛や納骨・法要延期などが起因して、本業とする墓石工事が前年同期比で4割の減収となった。受注していた墓建立を見合わせたいとの連絡が顧客から相次いだまま、着工日程の決まらない日々が続いた。

ホテルや旅館、飲食店が営業を自粛した影響で「飛騨溶岩プレート」の新規予約・追加注文まで途絶えた。新規開拓営業は必然的に滞り、3月と4月の売上高は、新規予約のキャンセル分を含めると前年同期比で2割の減少となった。

2.どのような対策を講じましたか

コロナ禍で外出自粛が促された今年前半に「巣ごもり需要」を予見した。「飛騨溶岩プレート」を様々な用途に合わせたサイズと仕様に加工して、バリエーションを6種類に拡大しつつ、楽天市場、アマゾン、ヤフーショッピングなどの通販サイトに出店した。

楽天市場で5月に国内月間販売600枚を記録して、月間優良店舗に選出されるなど前年度の販売総枚数を大きく上回る業績を上げた。ネット販売に活路を見出し、家庭内需要の掘り起しに成功したことは、コロナ禍における最大の収穫だった。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

石材加工の様子
石材加工の様子

コロナによる需要の変化を新たな商機と捉えている。「飛騨溶岩プレート」は、新店舗のオープンや既存店の新メニューのツールに採用・問い合わせが増加したことから、店舗営業の再開準備に入っている。ふるさと納税の返礼品にも登録した。

当面は、通販サイトを活用して、国内外の家庭・業務双方の需要を掘り起こしたい。職人の技術とアイデアで、デザイン刷新を含めた新しいプレートを開発していく。店舗オーナーから注文が舞い込んでいるオリジナルプレートに対応出来るように、社内体制整備を併進する。

準備中の海外進出事業も推進する。中小機構中部本部の支援を受けながら、同郷の特選ブランド品である黒毛和牛「飛騨牛」を取り扱える指定畜産業者と、同郷産のイメージを前面に押し出したセット販売などのコラボレーション企画を検討している。台湾進出を皮切りに海外シェアを獲得していきたい。

石材の販路は国内しか考えられなかった中、海外進出の機会を得たことは大変喜ばしいことだ。より一層向上するチャンスと捉えている。「飛騨溶岩プレート」を通じて、石材の魅力と新たな可能性を多くの人に伝えたい。

本業の石材業については、墓石需要の減少が避けられないとしながらも、新しい可能性を追求していく。石材加工という特殊技術と地元産出の石材を活用することで、地元とユーザー、当社それぞれに魅力と価値を見出せると考えている。

企業データ

企業名
有限会社砂原石材
Webサイト
設立
1953年3月(創業 寛政12年〔西暦1800年〕)
代表者
砂原吉浩 氏
所在地
岐阜県飛騨市古川町杉崎1066番地
Tel
0577-75-2522

同じテーマの記事