日本公庫の後押しでハンズオン支援の実施が決まり、中小機構九州本部が専門家として派遣したのが、ホテルアドバイザーの中島賢一氏だった。中島ADは大手ホテルチェーンで料飲・宴会・宿泊フロントなどを経験した後にいくつかのホテルの支配人、総支配人を歴任したベテランホテルマン。外資系ホテルの経営手法も経験し、現在はホテルアドバイザーとして活動している。
中島ADは鹿児島サンロイヤルホテルの指導にあたり、まずホテルに宿泊してみた。そして、ホテルマンの視点から鋭く課題を指摘し、経営に関するデータを一覧して、ホテルの経営状況や財務状況の課題も言い当てた。池田常務は「この人はホテル経営を分かっている」と見る目が変わった。そして「この人とホテル再生に挑んでみよう」と素直に受け入れる気持ちになった。
プロジェクトチームは中島ADからの要望もあり、現場の管理職と将来有望な若手で組成された。集まったのは、社内各部門から計16人。2022年1月にプロジェクトの第一回会合が開かれた。参加メンバーの胸の内はさまざまだった。「この忙しい時に時間を割いてまでやることなのか」(管理職クラスの社員)や「ホテルのこともよくわかっていないのに自分にできるわけがない」(若手社員)など、おおむね否定的な雰囲気が漂っていた。中島ADはメンバー一人ひとりと面談し、それぞれが考えるホテルの強みを聞いて回った。すると「料理がおいしい」「立地がいい」などと、思い思いの言葉を言うのだが、心から実感しているとは思えない口ぶり。中島ADは「いい料理やサービスの提供で自己満足しており、その先の戦略がない」と改革の前提となる課題を見抜いた。
まずはホテルの将来ビジョンをつくり、そこから各部門が取り組むべき戦略テーマをつくりあげていくことにした。メンバーは月に2回の会議に合わせて、自社の強みや弱みなどを分析するSWOT分析やライバル企業との差別化策など、与えられた課題に取り組んだ。しかし、メンバーの中からは相変わらず「これをやる意味はあるのか」という声が上がるなど疑念は払拭されていなかった。