「キーパーソン」を押さえ、全米の販売網構築に成功
木内酒造の海外販売網構築の礎となっているのが、世界各地の販売代理店との関係構築である。
「マーケットの構造を見て、誰がキーパーソンなのかを把握しなくてはいけない」と語る木内さん。米国市場進出に際しては、社員を現地に送りこみ、複雑な酒類流通規定(スリー・ティア・システム※など)をはじめとする、商構造の理解にまず取り組んだ。その結果、品揃えの決定権をもつのが、小売店のバイヤーではなく、卸売を行う販売代理店であることを把握することができた。「バイヤーは、販売代理店が選んだリストの中からしか、購買品目を選べない」ということを突きとめたのだ。
「日本のように、バイヤー向けの商談会や展示会を行っても効果が薄いということに気が付きました。営業活動を行うべき真のターゲットは、販売代理店だったのです。販売代理店を通じて卸売のルート作りをしなければ、バイヤーが仕入れる品物の選択肢にすら入らないということが分かりました」(木内さん)。
商流を把握し、営業戦略を転換したことで、米国最有力の販売代理店との契約に漕ぎつけることに成功した。現在では全米に15人のセールススタッフを擁し、販売網の充実に注力している。
「われわれは販売チャネルを作るため、世界中どこでも、徹底的に現地に入り込んで仕事をしているのです」と語る木内さん。米国以外の国への進出に際しても、木内酒造は各国で最も強固な販売網をもつ現地販売代理店との契約を行うことにこだわっている。
市場構造や有力な代理店に関する情報は、世界のクラフトビールメーカー同士のネットワークを構築し、情報交換している。
「例えば『イギリスに進出するなら、どこの代理店がいい?』なんてことも、イタリアやドイツのビールメーカー仲間に訊くんです。『うちの会社はあの代理店を使っている』『俺たちはあの国の市場に進出するのに、こんなに苦労したぞ』なんて話も教えてくれます」(木内さん)。
現在、木内酒造では、米国・英国・中国・インドなどからの人材を正社員として迎え入れ、今後のさらなる海外展開に奔走している。2017年にはビールの輸出だけでなく、海外初となる飲食店展開にも着手した。米国サンフランシスコで開業した「Beer & Wagyu HITACHINO」では、空輸された「常陸野ネストビール」とともに茨城のブランド牛「常陸牛」を提供し、茨城県出身のシェフが腕をふるう。
「茨城県の企業として、木内酒造のブランディングとともに、茨城県のブランディングにも力を入れています。海外の方にも、地元の方にも、『木内酒造っていいよね』と言ってもらいたいですね」と木内さんは笑顔を見せた。
(※スリー・ティア・システムとは、米国特有のアルコール流通規定の一つ。輸入業者または製造者、各州の卸売業者(ディストリビューター)、小売業者(レストランを含む)はそれぞれ別法人でなければならない、という規定。また、原則として州を超えての流通も制限されている。)