中小企業応援士に聞く

「うちなーんちゅ」だから沖縄の商品を世界に届けたい【株式会社新垣通商(沖縄県那覇市)代表取締役・新垣旬子氏】

中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2021年6月14日

沖縄県貿易協会会長もつとめる新垣旬子氏
沖縄県貿易協会会長もつとめる新垣旬子氏

1.事業内容をおしえてください

1980年の創業以来、総合商社としてアジアを拠点とした貿易を手掛けてきた。沖縄や日本の商品を世界に広めるとともに、世界の良いものを日本国内、さらには他の国々に紹介している。新しい商品をいち早く取り扱えるよう、常にアンテナを張って情報を収集しているほか、自社企画製品の開発も行っている。また、沖縄県の沖縄国際物流ハブ構想に協力し、東アジア、東南アジアと日本本土の中心に位置するという地理的優位性を有した沖縄県の経済発展に向け、行政との協力も積極的に進めている。

私たちは、日々変化する社会のニーズに応えるために、自ら変革していく組織であると同時に、創業以来、大切にしている言葉「喜ばれることに、喜びを…」の精神を守り、地域や取引先と一緒に成長していく会社であり続けている。

2.強みは何でしょう

香港で開催された沖縄フェアでは多くの商品を紹介した
香港で開催された沖縄フェアでは多くの商品を紹介した

私たちの強みとしては(1)大きな貿易会社にはできない、地域商社ならではのサポート(2)現地に合わせた商品作り・現地の人が好む味に近づける商品作り(3)時代の変化に合わせた適応力-の3つが挙げられる。

まず、地域商社ならではのサポートでは、地元沖縄における各企業において、魅力的な商品を製造販売しており、海外に輸出する際に戸惑っている方々のお手伝いをしている。今年2月には、香港の日系百貨店「SOGO香港」で開催された沖縄フェアで、現地法人の新垣通商香港が6ブースを設け、シークヮーサー果汁や離島の加工品など全96品を紹介した。一般社団法人沖縄県貿易協会の会長をつとめていることもあり、沖縄、さらには九州の商品をどのように海外にアピールするかを関係者と一緒になって考えていく。

次に、商品作りでは、消費者のニーズをつかむよう努力している。商社は元来、BtoBのビジネスを行っていたが、昨今のコロナ禍を機に、一般消費者向けECサイト構築するなどして消費者と直接つながるようになった。その際に、海外の消費者のニーズも把握している。たとえば、コロナ禍で日本を訪れることができなくなり、「ジャパンロス」「沖縄ロス」というような寂しさを感じている方々が多い。そういう消費者の心を癒せるような商品作りを進めている。

最後に、時代の変化に合わせた適応力では、コロナ禍でのデジタル化へのシフトをスムーズに行うことができた。海外電話は高額なため、10年ほど前からウェブ会議システムを導入していたことで、各社の環境に合わせた新しいWEB会議システムの導入に対して、特に抵抗もなく行うことができ、すぐに対応できた。ECサイト構築も5月に決定し、同8月に立ち上げることができた。また、コロナ禍で消費者の健康志向が高まったことから、迅速に商品の見直しを行った。

3.課題はありますか

今のコロナ禍をどう乗り切るかが最大の課題だ。売り上げは大きく落ち込み、一番ひどいときで前年比90%以上のダウン。この先どうしようかと頭を悩ませた。

しかしピンチはチャンス。コロナ禍のおかげで、さまざまなものを見直す時間ができた。まず会社内部を見直し、モノやコトをシンプルかつ効率的に見直し、結果的に経費節約に繋がった。次に、市場を見直した。進むべき方向を毎日模索した末に、バイヤーに売って終わり、というのではなく、消費者目線を感じ取るため、百貨店などでのポップアップストアなど店頭販売を通し、一般消費者の目線や視点をつかみ取るべくチャレンジすることになった。過去にないほど、売り上げは著しく落ちたが、一般消費者へフォーカスしたことによって、店頭直販が多くなり、新しい道筋が見えてきた。

さらに、沖縄の良さも見直した。海外出張ができず、沖縄にいる時間が増え、沖縄県内の企業とコミュニケーションを重ねた結果、沖縄の企業や業界のことがよく見えてきた。今後のビジネスを展開していくうえで、蓄積できる有意義な時間を過ごすことができた。

4.将来をどう展望しますか

海南島で開催された第1回中国国際消費品博覧会で沖縄の商品は注目の的
海南島で開催された第1回中国国際消費品博覧会で沖縄の商品は注目の的

現在、香港やマカオへ向けて沖縄の商品の輸出を促進しているが、将来的には、免税政策を展開する海南島を中心に拡販したい。このうち海南島は、年間約6900万人の観光客が訪れるリゾート地で、いわば沖縄みたいな島。2020年12月に海南島で展示会を行い、今年5月に開催された第1回中国国際消費品博覧会にも参加した。今後、免税店や空港への販売を早々に実現させたい。

一方、今年11月に上海で開催される第4回中国国際輸入博覧会では、琉球泡盛を中心に本土焼酎や日本酒とともに、「三大國酒」として大きく出展する準備を進めている。

5.経営者として大切にしていることは何ですか

「新垣通商は海外展開したい企業の窓口になる!」という思いを持って、本気で海外へ向かう企業のお手伝いをしている。良い商品を作っているけれど、どのように海外の人に伝えればいいのかわからない、というメーカーがあれば、ホームページや資料の作成の際に、消費者にアピールできる見せ方・伝え方をサポートしたい。

人材が足りない、情報が手に入らない、ビジネスチャンスが欲しい等の様々なことに対し、ネットワークを共有活用し、ともに前進したい。現在、会長をつとめる沖縄県貿易協会では、60社の会員に対し、海外へ向かう中核企業のための有益な情報を定期的に提供している。

6.応援士としての抱負は

「沖縄の商品を世界に届けたい」という新垣通商イチ押しの商品、長期熟成古酒「千年の響」
「沖縄の商品を世界に届けたい」という新垣通商イチ押しの商品、長期熟成古酒「千年の響」

応援士としてもネットワークの活用でお役に立ちたい。貿易会社を経営してきた経験からも、ビジネスでは企業の枠を超えてチームを作ることが大事だと実感している。いろいろな会社がそれぞれ強みと弱みを持っている。ある会社の弱みを他の会社の強みでカバーしていくことが大切。

そういったチーム作りに地元・沖縄の応援士としてお役に立てればいいな、と思う。沖縄は郷土愛が強いから、その郷土愛を活かしたい。「うちなーんちゅ」(沖縄の人)だから、沖縄の商品を世界に届けたい。

企業データ

企業名
株式会社新垣通商
Webサイト
設立
2012年5月9日(1980年1月1日創業)
代表者
新垣旬子氏
所在地
沖縄県那覇市久米2-11-13
Tel
098-861-3506

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