中小企業応援士に聞く

失敗を恐れず挑戦し続ける人材を育成【大裕鋼業株式会社(大阪府堺市)代表取締役社長・井上浩行氏】

中小機構は昨年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2021年3月24日

本社事務所で井上浩行社長
本社事務所で井上浩行社長

1.事業内容をおしえてください

大阪府堺市にある本社工場
大阪府堺市にある本社工場

高炉メーカーで製造された厚さ3.2mm以下の巨大なトイレットペーパー状の薄鋼板を加工・流通させる「コイルセンター」を営んでいる。一般的な普通鋼をはじめ、特殊鋼・電磁鋼板・カラー鋼板などさまざまな種類があり、納入先のニーズに応じて必要な長さ・幅に切断加工し、自動車、家電、情報機器、住宅設備、産業機械、建設機械などの製品メーカーに供給するのが仕事だ。

加工設備は、製鉄所で巻き取られた鋼帯(コイル)を巻き戻して平坦な形にする「レベラー」、コイルの幅を分割してより幅の狭いコイルにする「スリッター」、鋼板をさらに小さく切断する「シャーリング」などを数多く備え、高精度で高効率な加工を提供している。

1958年(昭和33年)に現会長が個人創業し、3年後に株式会社に改組した。63年に東大阪市に工場を新設して加工を始め、68年には日本鋼管(現JFEスチール)の関西地区薄板加工センターに登録された。77年に大阪府堺臨海工業地区の現在地に本社工場を建設。98年に石川県小松市に小松工場、2011年に堺市に堺浜事業所、14年にはベトナム工場を開設し、4拠点体制を整えた。

2.強みは何でしょう

コイルを巻き戻して平坦な形にする工程
コイルを巻き戻して平坦な形にする工程

本社工場、堺浜事業所、小松工場の3工場を擁し、広く西日本地域をカバーする西日本有数のコイルセンターである点が一つ。もう一つはISO9001とISO14001の認証を取得し、0.05mmから3.2mmまでの薄鋼板加工を高い品質と精度で実現している点だ。特殊なものでは、板厚0.05mmの電磁鋼板加工や幅7mmのスリット加工、オイリング装置による塗油加工、カラー鋼板のフィルム貼り付け切断も可能だ。

また単に加工するだけではなく、コイルセンターに求められる品質管理機能や在庫・流通機能に優れていると自負している。需給動向を的確に把握した在庫管理に伴うさまざまな鋼種・サイズの確保や、営業担当者のレスポンスの速さ、生産から配送まで自社グループで一貫して担うことで、「短納期対応力」を確保している。

3.課題はありますか

ベトナム工場でも朝礼を行う
ベトナム工場でも朝礼を行う

まず新たな加工技術の習得を挙げたい。コロナ禍をチャンスととらえ、これまでは技術がなかったため受注できなかった難しい加工にチャレンジした。工場の社員は当初、新しいことに取り組むのに躊躇していたが、通常業務を終えた後の時間を3カ月間かけて習得した。その結果、2件の新規受注に結び付けることができた。

もう一つは営業担当者の育成だ。コロナで鉄の相場が下がったため、営業にも悪影響が出ていた。営業成績が伸び悩んでいた社員に、「相場を見極め、自信をもって価格決定をスピーディーに顧客に伝えることが大事だ」とアドバイスをしたところ、これまで指示待ちだった社員が自主的に行動するようになり、営業成績も伸ばした。

三つめはオンライン会議の導入。国内3拠点、海外1拠点の間での会議のために、7年前から社内でオンライン会議を実施している。顧客とも一部で実施済みだ。新型コロナの感染症対策として、出勤する必要がある社員のために、席と席の間隔を広くとり、密にならないよう工夫しているが、さらにテレワークを進めていく考えだ。

第4はBCP(事業継続計画)の作成だ。取引先の大手企業や同業他社からも聞かれることがあり、取り組まなければならないと感じている。SDGs(持続可能な開発目標)についても同様にチャレンジしていきたい。

4.将来をどう展望しますか

ベトナム法人に着任した娘の優子氏
ベトナム法人に着任した娘の優子氏

ベトナムの現地法人が、設立7年目にして初めて黒字化する見通しになった。日本国内と同様、ローカル企業に対して地道に営業活動を進めてきた結果、これまでに230社の顧客を獲得するに至った。日本製品の品質は高く、世界に評価されており、引き続きベトナム工場の黒字継続を目指している。

それを進めるため、ベトナムに留学経験のある娘をベトナム法人の経営管理マネージャーとして1月8日から常駐させた。私も同行したが、コロナ禍のため昨年12月25日にホーチミンの空港に到着後、防護服を着用させられて車で隔離ホテルに運ばれ、2週間の隔離生活を経験した。現地法人のあるビンズオン省のDAINAMという大きなテーマパーク内にあるホテルで、中庭で自由に散歩もできたが、正直言って14日間は長かった。私は2月11日に日本に帰国したが、自宅で再び2週間の隔離生活を強いられた。

5.経営者として大切にしていることは何ですか

平凡だが、顧客のための企業づくり・社員の幸せを大切にしたい。失敗を恐れず、常に挑戦し続ける人材を育てていきたい。

企業データ

企業名
大裕鋼業株式会社
Webサイト
設立
1961年(昭和36年)1月
代表者
井上浩行 代表取締役社長
所在地
大阪府堺市堺区大浜西町9番地の2
Tel
072-222-6555

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