応援士に聞く

「魅せる工場づくり」をめざして【タカハ機工株式会社(福岡県飯塚市)代表取締役・大久保泰輔氏】

中小機構は昨年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2021年4月7日

ソレノイドの製品群
ソレノイドの製品群

1.事業内容をおしえてください

リアルな拍手とかけ声で集客を支援する「ビッグクラッピー」
リアルな拍手とかけ声で集客を支援する「ビッグクラッピー」

電気部品「ソレノイド」の製造・販売をしている。ソレノイドとは電気エネルギーを機械的な直線運動に変換する電磁機能部品のこと。自動車・金庫・安全スイッチ・電気錠・自動販売機 等身近なところでたくさん使用されている。

当社は1980年に創業し大手電機・機械メーカーの協力工場として約40年間歩んできた。売上の90%を製品受注に依存する下請け工場ゆえに当社の浮沈は委託元の業況に大きく影響を受ける。

別の柱も考える必要があると、2007年からEC(電子商取引)事業に着手した。当社の製品を消費者に直接届ける製品直販を始めることで、大手企業の顧客だけでなくこれまで手の届かなかった中堅・中小企業や個人にも取引を広げるのがねらいだった。

このEC事業を機にさまざまな製造業とつながりを持つことができた。そこで製造業の持つノウハウを他社と共有し、アイデアを形にして市場投入する「ものづくりプラットフォーム」を着想。社内に試作開発を支援するTIP(Takaha Innovation Park)、MVP(Minimum Viable Product)ルームを新設し、最新デジタル機器を配備している。その成果としてバイバイワールド株式会社(東京都品川区)が開発した拍手ロボット「ビッククラッピー」が社外ベンチャー第1号として誕生、社内でもソレノイド電気錠「スリムロック」を新しく開発し、大手メーカーと売買契約が成立している。

2.強みは何でしょう

電気錠「スリムロック」
電気錠「スリムロック」

第一は社内にソレノイドの一貫生産体制を有していることだ。ソレノイドを構成する部品の90%を内製しているため、顧客に魅力的なコストを提示し素早い納期対応ができる。特に、試作品製作のスピードは、顧客獲得の最大の強みと認識している。

一貫生産体制の積極活用事例がEC事業だ。事業導入は当社が1991年から2002年まで米バージニア州に工場を構えていた際に同地の盛んなインターネット販売状況に刺激を受けたことがきっかけだ。「工業製品も本を買うような手軽さで」というコンセプトのもと、常時豊富な在庫を取り揃え、即日出荷や手厚いサポート、学割制度など、法人個人問わず誰でも気軽にソレノイドを入手できるショップづくりにこだわった。近年では元日以外は毎日注文が来るまでに成長し、当社にとって心強い事業になっている。

第二はメディア出演回数の多さだ。2020年度は全国放送を含むテレビ出演2回、一般紙掲載8回、業界機関紙掲載3回の実績がある。新製品の開発や新たな取り組みを行う度にメディアに声がけし、積極的に種を蒔くようにした。これが奏功し、同じメディアに複数回取り上げてもらうことも増えた。最近ではメディア側から「何かトピックスはないか」と問い合わせが来ることも少なくない。中小企業は自分から手を挙げない限り、メディアに目を向けてもらえない。積極的に情報発信を行うようにしている。

第三は一歩先を行く労働環境整備だ。2017年には社内託児所「タカハキッズルーム」を開設した。当時話題になっていた「待機児童問題」に着目し、小さな子供を持つ女性にも働きやすい環境を整えようと考えた。これにより若い人材が集まり、定着し、貴重な戦力となって会社を支えてくれている。託児所運営の費用は決して小さいものではないが、長い目で見てもたらされる相乗効果は大きい。社員の働きやすさと会社へのメリットは連動する。作って本当によかったと思っている。中小企業は「先駆けして取り組もう」という意識が大事ではないか。

3.課題はありますか

クリスマスイベントで従業員の家族と触れ合う
クリスマスイベントで従業員の家族と触れ合う

経営の中心課題は「魅せる工場づくり」だ。魅せる対象は3者、顧客、従業員、それに協力工場・金融機関・行政機関などの関係先である。「顧客が思わず取引したくなる工場」「従業員が一生働きたくなる工場」「関係先がこぞって応援したくなる工場」をキャッチフレーズにさまざまな課題に取り組んでいる。なかでも最大のターゲットは顧客だ。顧客に製品が売れて初めて会社経営が成り立つ。当社の“生活の糧”は顧客からのみ得られており、顧客にとって魅力的な工場をつくるのが最大の課題と考えている。

新型コロナウィルス感染症拡大による新たな対応も迫られている。2020年度はコロナ禍の影響で前年比売上が30%落ちた月もあった。対面での営業活動を控えなければならない状況になり、社員の提案でZoomでのリモート営業に積極的に取り組むようになった。自社製品として新たに開発したコロナ対応噴霧器「消毒液ディスペンサー」も試作を重ね、市場投入を視野に入れている。

新たなビジネスチャンスを捉えるための活動として、2013年から「タカハソレノイドコンテスト(ソレコン)」を開催している。当社のソレノイドを使った製品であれば誰でも応募可能なコンテストで、毎年全国から様々なアイデア製品が寄せられる。本格的なものからクスッと笑ってしまうようなものまで多種多様で、中には自分たちが想像していなかった用途でソレノイドを使用した作品もある。コンテストはまさに当社が今後自社製品開発に注力していくうえでのヒントの宝庫だ。優良作品を将来の「タカハ機工の製品」として送り出せるよう社員とともに工夫を加えていくという課題もある。

4.将来をどう展望しますか

同社のユニフォームを着た大久保氏
同社のユニフォームを着た大久保氏

一貫生産体制の強みを生かして、国内No.1のソレノイドメーカーを目指したい。そのためには「市場開拓による多角化」「商品開発による多角化」が必要だ。「ものづくりプラットフォーム」構想を実現させ、デジタル機器と当社が持つ既存設備を活用し、さまざまな製造業と発想から量産・販売までの体制づくりを協業できれば本望だ。

製品受注工場から自社製品生産工場への成長も今後の展望のひとつだ。社内ベンチャーの育成に力を入れていくとともに、ソレコン応募作品の製品化にも取り組んでいく。応募作品はいずれも何か火を点ければ大きく飛躍するアイデアばかりだ。もちろんは簡単にはいかないだろうが、ソレノイドという製品自体が非常に小さい市場なので、生き残りのためにも火を点ける土壌づくりを続けていきたい。そういった地道な努力を続け大きく成長・発展したい。「ビジネスは爆発だ」といつも心に秘めて活動している。

5.経営者として大切にしていることは何ですか

会社を倒産させないことだ。これが最低限の社会的責任と考えている。会社を長期的に発展させ、従業員の生活を守ること、地域社会と共に繫栄することが大切だ。我々が「魅せる工場」づくりに邁進すれば、金融機関や行政機関などの応援団は「魅力ある工場」を力強く後押ししてくれるはずだ。どんな応援をしてもらうかは経営者の手腕に掛かっていると思う。

講演で登壇する際は「中小機構は中小企業への支援策をたくさん持っていて、そのなかには皆さんにマッチするものが必ずある。積極的に探して手を挙げてほしい」と話している。機構のような応援団がいる日本は恵まれていると思う。中小企業応援士として少しでもお役に立てれば望外の喜びだ。

企業データ

企業名
タカハ機工株式会社
Webサイト
設立
1979年12月22日
代表者
大久保泰輔 代表取締役
所在地
福岡県飯塚市有安958-9
Tel
0948-82-3222

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