中小企業とSDGs

第7回:自動車リサイクルで資源循環型社会に貢献「会宝産業」

持続可能な開発目標(SDGs)は、2015年9月の国連サミットで採択された17のゴールと169のターゲットからなる16年から30年までの国際目標だ。日本政府もSDGs達成を通じた中小企業などの企業価値向上や競争力強化に取り組んでいる。
国の機関や専門コンサルタントの活動およびSDGs達成に貢献している中小企業などの先進事例を紹介する。

近藤社長
「後始末は今以上に必要になる」と近藤社長

SDGs(持続可能な開発目標)の達成に資する優れた取り組みを行う企業・団体などを国として表彰する「ジャパンSDGsアワード」。2018年12月の第2回表彰でSDGs副本部長(外務大臣)賞を受賞した会宝産業株式会社(金沢市)は、自動車のリサイクル事業を通じて、国内外で資源の再利用・再資源化を促し、循環型社会の構築に向けた活動を進めている。

「入社2年目の社員が勝手に応募していた。本人は内閣総理大臣賞を取る気だったので、悔しがっていた」。そう裏事情を語るのは近藤高行社長だ。SDGsの12番目の目標である「つくる責任・つかう責任」に加え、誰かがやらなければならない「後始末の責任」を標榜。モノをつくって売る「動脈産業」に対し、つくったものを後始末して循環させる「静脈産業」のパイオニアとして、受賞は大きな喜びとなった。

環境に優しい技術・ノウハウを海外に移転

廃車から部品・材料を引き離す様子
廃車から部品・材料を引き離す

近藤社長の父で現会長の典彦氏が、不要になった自動車を解体し、部品を再生・販売する事業を始めたのは1969年。日本の中古車部品は高品質であるため、特に海外で人気が高く、これまでに約90カ国への輸出実績を持つ。ただ創業当時は〝解体屋〟などと呼ばれ、職場環境は「きつい、汚い、ヤンチャ」といったイメージが強かったという。

地球環境への関心が高まった90年頃にリサイクル業として認知され、2005年に完全施行された自動車リサイクル法により、環境に優しく安全な解体方法が仕組み化された。しかしアジアやアフリカなどの途上国では、使用済み自動車が放置され、廃油や鉛による土壌汚染や廃プラスチック・ガラス・タイヤの不法投棄が社会問題になっていた。

このため、環境に配慮した自動車リサイクルの海外展開に着手。国際協力機構(JICA)の委託を受け、07年に本社工場隣に国際リサイクル教育センターを開設し、国内外の研修生に対して技術・知識を授ける。ブラジルやインドなどにリサイクル工場を建設し、解体ノウハウを提供するほか、マレーシア政府の自動車リサイクル政策立案をサポートしている。

また中古エンジンなど中古部品の規格基準「JRS」(国際規格PAS777)を策定。アラブ首長国連邦(UAE)に設立した子会社で日本製中古部品のオークションを開くほか、タイ、ケニア、ナイジェリアなどの合弁会社を通して規格に適合した部品を販売する。

一方、世界の市況に応じた部品販売価格と解体にかかる工数をもとに、解体した車両1台あたりの収益性を分析できる「KRAシステム」を開発。同業他社にも使用を開放した。提携する同業他社は59社に上り、仕入れ価格の適正評価や相場作りに取り組んでいる。

これらが評価され、17年に国連開発計画(UNDP)が主導する「ビジネス行動要請(BCtA)」に、日本の中小企業・静脈産業として初めて加盟が承認された。BCtAは長期的な視点で商業目的と開発目的を同時に達成するビジネスモデルを構築し、SDGsの達成を促すことを目的とした世界的な取り組み。顧問に迎えた金沢工業大学の平本督太郎SDGs推進センター長の助言を得て、事業活動全般をSDGsの各目標と関連付けて整理した。

チーム活動で社員の自主性引き出す

中古エンジンやドアが並ぶ様子
中古エンジンやドアが整然と並ぶ

目標を達成するための有力な手段が「会宝2030プロジェクト」と呼ぶ社内活動だ。参加者がそれぞれ5分間で本の内容を紹介し、読みたくなった本を投票で決めるビブリオバトル(知的書評合戦)という手法を参考に、月1回会合を行う。未来に関わる書籍約20冊をピックアップし、参加を希望した社員17人が5チームに分かれて読書し、内容を年表化するなどしてプレゼンテーションした。

17人の年齢は20歳代から40歳代。第2期となる今年度は「健康経営」「日本の後始末事情」「新規事業」「現場の改善」をテーマに4チームで活動しており、活動結果を発表した後は、改めて参加者を募って第3期をスタートさせる予定だという。

これとは別に、全社員を20チームに分けたプレゼン大会も企画する。〝学生〟役を務める役員に新入社員が自社の事業を紹介するイベントを4年前から始め、「若手社員は会社全体を勉強して詳しくなる一方、ベテランは専門外のことは分からないというおかしな流れになった」からだ。大会に向け、各チームとも週1回集まって勉強会を開いているという。

こうした活動に力を入れるのは「自ら考え、提案したことが通る会社にしたい」という強い思いがあるためだ。背景には自身の苦い体験がある。社長に就任したのは15年4月。だが、それまで右肩上がりで成長してきた業績に陰りが見え始め、15年12月期は減収減益、16年12月期は経常赤字に転落した。

「業績悪化の原因は全て私にある。数字を上げろ、上げろと社員に要求ばかりしていた」と振り返る。社員とその家族、取引先を招いて業績などを説明する毎年恒例の「感謝の集い」で、赤字を発表せざるを得なくなり、逃げ出したい気持ちになったという。

前社長は創業者であり、常に社員を引っ張ってきた。だが2代目の自分にその力量はない。社員の能力や可能性を引き出し、社員の考えを具現化させる役割に徹しようと考え直した。「どうしたらお客さんに喜んでもらえるか考えてほしい」と社員へのアプローチを変え、徐々に業績も回復していった。

離職率が激減、採用に好影響も

作業中の外国人バイヤー
外国人バイヤーも作業している

「経営トップがやると決め、担当者を決めると早い。専門家に入ってもらうことも有効だ」。初めてSDGsに取り組む企業に、近藤社長はこう助言する。まずはSDGsのカードゲームで遊ぶことを勧める。誰でも「最初は儲けようと経済最優先になってしまう」が、ゲームを進めるうちに自然と「経済」「社会」「環境」の優先比率を考えるようになるという。

SDGsの効果については「社員の意識が変わった」という。外部から客観的に評価されることで、社会に貢献し誇りを持てる仕事だと社員が実感し、働き甲斐につながっているという。実際、10年前は30%だった離職率が6~7%に激減した。社会貢献したいという若者は多く、新卒採用面でも良い影響が出ているという。

少子高齢化に伴い、国内の自動車リサイクル業は10年前より約1000社減り、3300社程度になった。今後も廃業は相次ぐ見通しだが、「国内外で車の後始末は今以上に必要になる」と近藤社長。「いい会社に入りたい人はいらない。いい会社を自ら創る人に入ってほしい」と語った。

企業データ

企業名
会宝産業株式会社
Webサイト
創業
1969年5月
資本金
5700万円
従業員数
80人
代表者
代表取締役社長 近藤高行氏
所在地
金沢市東蚊爪町1-25
Tel
076-237-5133
事業内容
自動車リサイクル・中古自動車部品の輸出・販売