同社は創業から2026年で103年目を数え、山口県内でも指折りの老舗ブライダル業として地域で長きにわたり親しまれている。同社を取り巻く環境が大きく変わったのは、2020年に感染拡大した新型コロナウイルス感染症による外出自粛だ。結婚式の延期依頼の連絡が相次ぎ、経営状況に大きな影響を及ぼした。しかし、厳しい状況のなかでもあきらめることなく、“お客様の期待に応えたい”とのたぎる思いで懸命にできることを模索した結果、山口県内初となるオンライン結婚式を実現するに至った。
「私たちブライダル業にとってコロナ禍は大打撃でした。次々と結婚式開催見送りの連絡が押し寄せました。成すすべもなく時が過ぎる中、自社に出来ることは無いかどうか、思案のすえ、当時社会問題化していたマスクに着目しました。弊社には様々な生地がありましたので、婚礼衣装専門店ならではのオリジナルマスクを製作したのです。初めてオーダーが入った瞬間、これまで静まり返っていた事務所内に歓喜の声が上がりました。その時の感動は今でも鮮明に記憶しています。
一方、結婚式を見送ったお客様の経過を観察すると、キャンセルではなく『延期』を選択されたお客様がほとんどであることが分かりました。わたしたちは、これをお客様から弊社への期待、いつかかならず結婚式をさせて欲しいという強い願いと受け止め、それにお応えする方法は無いかどうか、検討を重ねた結果、『オンライン結婚式』にチャレンジすることを決めました。結婚式場で提供するフランス料理をゲストのご自宅に宅配できる仕組みや、ゲストが遠隔から参列して新郎新婦やゲスト同士でコミュニケーションが出来る仕組みを自社独自で開発しました。各所に光学ズームカメラを設置し、挙式・指輪交換・主賓スピーチ・余興等のハイライトシーンに、リモート参列者が『特等席』で参加できるよう、オンラインならではの付加価値も加えました。当社は時代の変化に合わせる形で事業を続けてきましたが、コロナ禍の経験から、“新しいことへ挑戦すること”の大切さを再確認することができました」(原田泰蔵氏)
脱炭素に関心をもつきっかけは、山口県が主催する「食品製造業向け脱炭素化経営セミナー(※2 以下、脱炭素セミナー)への参加だったという。
「当初、脱炭素セミナーの紹介を受けたときは自社にはあまり関係がない話だと思っていました。ただ、コロナ禍において、アナログ的要素の強いブライダルにデジタルの要素を掛け合わせたオンライン結婚式によってお困りごとを解決できた経験から、『異なるものの掛け算で革新が生まれる』ことを身に染みて実感していたため、何か経営のヒントを得られるのではないかと思い、脱炭素セミナーに参加することにしました」(原田泰蔵氏)
脱炭素セミナーに参加したところ、思わぬ気づきを得られたと原田氏は語る。
「セミナーで環境価値と経済価値を両立している企業事例を学びました。コスト削減と同時に、地球温暖化という社会課題の解決に取り組む姿勢に感銘を受けました。
ブライダルという『幸せをつくる仕事』は未来の社会を照らす希望の象徴と考えています。脱炭素への取り組みは子供たちが笑顔で暮らせる『明るい未来社会』につながると信じています。このような思いから、脱炭素経営への着手を決めました」(原田泰蔵氏)
コロナ禍で再確認した“新しいことに挑戦すること”の重要性。アンテナを高く張り、参加を決めた県の脱炭素セミナーで得た気づきを機に、脱炭素経営への一歩を踏み出した。
(※2)山口県中小企業団体中央会の以下webページを参照。
https://axis.or.jp/info/18197.html