タブレット型歯磨き「KAMIGAKI(カミガキ)」でオーラルケア市場に参入した森社長
自身の経験をもとに参入したオーラルケア市場
TSUYOMI株式会社は、「すべての人に、お口の健康を通して笑顔で生きる喜びを」を経営理念に掲げ、オーラルケア市場に参入した。背景には森社長自身の経験がある。前職の営業時代に喫煙をしていたことで、歯の汚れや口臭が気になり、思い切り笑えなかったり、手で口を隠したりしていたことが度々あった。「ほかの人にも同じような経験があるのではないか」と思い、オーラルケア市場に可能性を感じていた。
森氏は、元々医薬品卸大手の子会社に勤務していたが、会社統合をきっかけに残留するか、退職して独立するかの選択で悩んだ。オーラルケア商品での起業を周囲に相談したところ、懇意にしていた医薬品メーカーが「森さんがやるなら」と協力を申し出てくれた。そして、親会社のオーナーからも激励を受け、独立の決心が固まった。
森社長の起業が順調に進んだ要因の一つに、支援機関を積極的に活用した点があげられる。前述の白書によると、高成長型企業ほど起業に伴う手続きや販路開拓に関する支援、起業家等支援ネットワークなどの公的支援を積極的に利用している割合が高い。森社長も、あいち産業振興機構が実施する「創業道場」に通って経営の基礎を学び、商品開発や販売促進については、国の無料経営相談所である「よろず支援拠点」を活用し積極的にアドバイスを求めた。
起業時の課題で多いのが販路開拓であるが、知名度や信頼性が低いスタートアップ企業は、知人や友人、取引先など従来のネットワークから活路を見いだすことが効果的である。森社長も前職の取引先に支援をもらえたことで、東急ハンズやロフトなど大手小売店での販売が決まり、「人のつながりの大切さを実感した」と言う。
頻繁に足を運んだ「よろず支援拠点」。支援機関を積極的に活用し、創業のノウハウを得た
8回の試作を経て商品が完成
森社長がタブレット型歯磨き「KAMIGAKI(カミガキ)」の商品アイディアを思いついたのは、前職の営業時代だ。外出先に歯ブラシを持ち歩いていたが、だんだん億劫になり磨かなくなってしまった。そんなときにふと、「固形のものがあったら便利なのに」と感じて調べてみると、固形の歯磨きは市場にほとんど存在しなかった。「これはチャンスかもしれない」と思い、何社ものメーカーに製造提案を行ったが、条件や体制などの問題でなかなかよい返答を得ることができなかった。どこかに突破口がないか、そう悩んでいたときに助けてくれたのが、前出の医薬品メーカーだった。
商品開発で特に意識したのは、「顧客ニーズの把握」だと言う。顧客ニーズ把握のために森社長が取り入れた手法が、アンケート調査である。外出先での歯磨き習慣を調査したところ、外で歯を磨く際に、歯磨き粉を持ち歩くことに不便さを感じていたり、衛生面を気にしたりする人が多いことがわかり、タブレット型を提示したところ、「使ってみたい」という声を得ることができた。
試作時にはモニター調査を活用し、家族や友人、知り合いの歯科医師などに協力を求め、味やタブレットのサイズ、口当たりなどの使用感を細かく検証した。しかし、「1回目の試作で、まずい!売れるの?と散々なことを言われ、心が折れかけました」と笑う。それでもモニターの声を元に、味や形状の見直しを繰り返した。なかでも製品の想定ユーザーであった、働く女性の意見は積極的に製品に反映させるよう心がけた。そして改良を重ねること8回。モニターから高評価をもらう製品が完成し、第1弾商品となる、外出先で手軽に歯磨きができるタブレット型歯磨き「KAMIGAKI(カミガキ)」が誕生した。
バイヤーからの評価は上々だという。チューブ型の歯磨き粉と異なり、鞄を汚すことなく携帯できる点がビジネスパーソンに受けそうだ、と取引につながっている。顧客の声を反映させた商品だからこそ、バイヤーにも響いたといえ、商品開発時に顧客ニーズを把握する重要性を示す好例であろう。
森社長は、「前職では、製品ありきで売れなければ営業の責任、という風潮でした。でも売れる商品にするためには、使う人の意見をしっかり反映した製品を作ることが重要だ、と起業して気づきました」と語る。
歯磨きだけでなく、マウスウォッシュとしても使える。ランチ後や旅先、接客前など活躍のシーンは広い。
アンケートを徹底的に行い、ユーザーが納得する風味や口当たりを追求。
「KAMIGAKI」の使い方
支援機関の活用で起業の不安を軽減
日本は、欧米諸国に比べて起業意識が低いと言われている。その理由として、失敗時のリスクや所得・収入の不安定さがあげられる。しかし、森社長のように「起業は挑戦し甲斐があり、自分の成長が実感できる」と感じる人も増えてきている。起業がより身近になってきた昨今、起業支援は日本の経済成長を促す施策の一つとして強化されている。公的支援機関での無料相談のほかにも、商工会議所・商工会、金融機関や民間企業が主催する起業塾なども多数あり、そういった場に参加することで経営ノウハウのみならず、事業のヒントや人脈を得ることができ、起業に対する不安を軽減することができる。森社長も自身の経験を振り返り、「想いがあれば必ずチャンスがくる。それまで焦らずにしっかり準備してタイミングを掴んで」と語る。起業サポートを上手に活用して事業アイディアを磨き、不安やリスクを自信に変えることが成功への近道となる。