前の時代から受け継がれ、蓄積されたものを今の時代に合わせて変えていくことは、誰でもできることではない。ベースを元に、今の時代に必要とされる、価値づくりをできる。本質的な価値を見出せる。それはとても幸せなことではないかと思う。
事業を前に進めていくには、さまざまな人の協力がなければできない。私が家業に入って、今の文具店経営から変えていきたいといった自分の思いを従業員に言った時には、なかなか理解されず辞めていく人もいた。経営者にとって従業員が辞めることは一番つらいが、自分の思いを言い続ける中で共感して付いてきてくれる人も増えてきた。現在は50人を超える規模になったので、自分一人で引っ張るのではなく、社員教育や評価制度をしっかりと作って、組織として動いていける体制づくりに取り組んでいる。
金融機関とも半年に1回、経営状況の説明をし、さらに毎年経営計画発表会も実施している。「今こういうことで苦労しています」「こういう社内体制でやってきます」といったことを説明して、理解をしてもらっているので、信頼関係はできていると思っている。金融機関からもこれまでは、収益面などの定量的なことを重視して見られていたが、最近は社長の経営姿勢などの定性的なところをしっかりと見てもらえるようになったと感じている。新規事業に取り組む時も、当社の経営規模ではかなり思い切った投資だったが、必要な資金はほぼ融資で賄うことができた。
2022年の第2回アトツギ甲子園でグランプリを受賞したことで、周囲の当社を見る目も変わった。田舎のディズニーランドを作りたいと15年前から言い続けていたが、受賞したことで「この社長なら本当にやってくれるかもしれない」と思っていただける方も現れて、今までなら会えなかったような経営者や企業の方々と話をする機会も増えた。これは当社にとって大きな財産だ。一方で、受賞したことで、過度な期待をかけられているとプレッシャーを感じたこともあった。しかし、それも自分たちにしか経験できないこと、注目してもらえることはありがたいことだと思うようにしている。