農業ビジネスに挑む(事例)

「ジャイステーション」1次産品で地域間をつなぐプロデューサーをめざす

  • インショップで独自ブランドを展開
  • 中山間地で自然農法に挑戦する

2004年、地域振興できるビジネスモデルの構築を目指し、北陸先端科学技術大学院大学で大学発ベンチャー企業が誕生した。経営学を研究していた2人の学生、西岡久継さんと巽龍雄さんが共同で起業した「JAISTATION」(ジャイステーション)だ。

「ジャイステーションで独自に農法を確立し、それを農業生産者に普及させる一方、ジャイステーションはその生産物を販売するというビジネスモデルの開発を目指していました」(西岡さん)

その農法とは、メビオール社が開発した栽培技術を用いた野菜の栽培だった。その栽培技術とは、特殊フィルムによって植物と水(養液)を隔離する栽培方法であり、それにより安全で栄養価と品質の高い野菜を栽培できる。この農法の普及と事業化のため、ジャイステーションは2006年に西岡さんの郷里、愛媛県松山市に拠点を移した。

特殊フィルムによって植物と養液を隔離する栽培技術。植物はフィルムの中の養液を吸おうとして栄養素を通常の数倍の濃度でつくる

ミカン並みの甘さのミニトマトを栽培

松山市に移転した西岡さんはまず1棟のハウスを設け、大玉トマトの生産をスタートさせた。メビオール社の栽培技術は、特殊フィルムでトマトと養液を隔離するが、それによってトマトはフィルムの中の養液を吸おうとして糖、アミノ酸、リコピンなどの栄養素を通常の数倍の濃度でつくり出す。そのため糖度、栄養価の高いトマトになる。実際、西岡さんが栽培するトマトは糖度が10以上とスイカやミカン並みの甘さになった。

この栽培を始めた翌2007年、ジャイステーションは地元の飲食店や道の駅に販路を築き、大玉トマトやミニトマト、ベビーリーフを販売した。やがて栽培をベビーリーフに特化し、販路をスーパーマーケットに拡大しながら「四国育ち」というオリジナルブランドを構築した。

現在、ベビーリーフの栽培は西岡さんが経営する「西岡農園」の3棟のハウスで生産する。また、販路も2011年から松山市内の高級スーパー「サニーマート」の3店舗でインショップを保有し、「四国育ちとなかまたち」のショップ名で地元の青果、海産物および愛媛県以外にも四国の農産加工品を販売する。

青果については地元の30軒の農業生産者と提携して販売する。

高級スーパーのインショップ(四国育ちとなかまたち)でオリジナルブランド「四国育ち」の野菜を販売する

新たなステージの幕開け

2013年2月にはジャイステーションが認定農業者となり、松山市の中山間地・五明地区に50aの農地を取得し、ジャイステーションの本社も構えた。その目的は中山間地域で農業をすること、および提携生産者から農産物を集荷することにある。

農業については「固定種を用いた科学的な自然農法をしたい」(西岡さん)という。現在主流のF1種(異なる性質の種を交配した雑種第一代)ではなく、その土地の気候・風土に適応した伝統野菜・地方野菜の固定種で農業をする。他がやらない地(中山間地)と法(独自の理論に基づく自然農法)で農業に挑戦していく。それが五明地区に拠点を構えた理由であり、ジャイステーションの新たなステージの幕開けでもある。

西岡さんは次代の農業後継者にも危惧を抱いている。30軒の生産者と付き合い中、その後継問題は他人ごとには思えない。地元の農業生産を次代に引き継ぐためにも後継者・担い手の育成にも支援を差し延べたい。そのためにも農業生産法人を設立し、人材育成をシステマチックに実施したいと考えている。

また、販売については2013年2月からブランドの展開を図り、「四国育ち」のほかに「絆屋本舗」「Mercato」というブランドを追加した。追加したブランドは、同社が厳選したリーズナブルな和・洋の加工食品だ。

さらに、今後は国内の各地に地域拠点を築き、味にこだわり厳選された農産・加工品を消費者に提供していく予定だ。ジャイステーションは、北海道から九州・沖縄までの地域と地域をつなぐ農産・加工品のプロデューサーとしても躍進していこうとしている。

企業データ

企業名
株式会社JAISTATION
Webサイト
代表者
西岡久継
所在地
愛媛県松山市菅沢町1024-1