生産性向上に取り組む企業事例

農産物洗浄選別機のメンテナンスから製造まで 十勝平野の農業を支える地元メーカー【加藤鋼機有限会社】(北海道音更町)

2022年 5月16日


十勝平野の農業を支える地元メーカー【加藤鋼機有限会社】

農産物の収穫に際しては、集荷用コンテナや洗浄選別機が欠かせない。加藤鋼機はコンテナの修理にはじまり、機械のメンテナンスを地元で手掛けてきた。年間通じて稼働する機械類は、何かと不具合が起きやすい。従来は標準的な修理対応にとどまっていたが、お客様の困り事は多岐にわたる。そこで、自社の製造設備を強化し、複雑な改造でも対応可能にするとともに、小型の洗浄選別機の製造もはじめ、事業拡大を進めている。

機械に起こりやすい摩耗や不具合

北海道の中央に広がる広大な十勝平野は、じゃがいも、にんじん、たまねぎ、長芋など、豊かな作物の産地だ。加藤鋼機はこの十勝エリアで、収穫物用のスチールコンテナの修理や、農産物洗浄選別機のメンテナンスを手掛けている。

たとえばじゃがいもを収穫すると、コンテナに入れて集荷場まで運ぶ。かなりの重量を運ぶために使うのは、1.5トンもの大型コンテナだ。集荷場でも効率的な作業が求められる。一気に運ばれてきたじゃがいもをきれいに洗浄し、選別機で出荷物を仕分ける。

一方、洗浄機はふんだんに水を使う分、機械のさびも起こりやすい。また、毎日使う機械部品は摩耗していく。稼働している間にベアリングが壊れることもある。収穫物を運ぶスチールコンテナも、作業中に農機具があたって破損してしまうことがある。そうした日々起こる故障や不具合を直す相談が、加藤鋼機などの事業者に日々寄せられるのだ。

以前は故障が起きると、機器製造元の大手メーカーを経由し、本州や札幌から修理担当者が来て対応することも多かった。しかし高齢化や人手不足が進むなか、域外からの迅速な対応は難しく、コストもかさむ状況になってきた。そこで頼られるのが、地元企業だ。特に加藤鋼機は、40年間の事業の積み重ねで信頼を培ってきた。

業界の人手不足が高まるなか、自社の製造能力を増強

修理内容は多岐にわたるため、自社設備では対応できない場合もある。従来はそれを、近隣の鉄工所と連携して対応にあたっていた。しかし同業の機器メーカーや鉄工所にも高齢化・人手不足の波が押し寄せ、事業清算する会社も生じてきた。一方で増える顧客ニーズにどう応えていくかを考えるなかで、自社の製造設備を強化することとなった。

とはいえ、機械設備の増強は資本も必要となる。「ものづくり補助金」が使える可能性があるということで申請準備を進め、部品切断や溝加工ができる機械を導入することができた。

機械の増強に伴い、顧客の求める迅速な修理や、用途にあわせた機械を納入できるようになった。そもそも洗浄機や選別機はどれも同じではなく、収穫物や品種の特性にあわせる必要が生じる。場合によっては、不要な機能を外して耐久性強化をはかったりする改造も求められる。大手メーカーとの協業体制ももっており、大型機械の部分加工を請け負うこともある。

計画的な設備改善で、若手の成長も後押し

機械を導入するのは、農協などの集荷場が大半である。年間通じて機械が稼働しているので、定期的にメンテナンスに赴く。洗浄機や選別機は、メンテナンスしながら20-30年使い続けるのが通常だ。だからこそ、近場でこまめに対応できる会社が重宝される。

最近は「お客さんがお客さんを紹介してくれることもある」という。「故障して困ってしまっているところを、修理して感謝されるとうれしい」と代表の加藤さんは語るが、迅速に、的確に対応できることが、目の前の作業ができず困っている事業者の方には何よりも必要なのだ。

今後も継続的に発展していけるように、人材育成の面でも気を配る。70代のベテランには現場支援とともに若手育成、ノウハウ伝承も担ってもらっている。一方、新型の機械への置き換えも順次計画し、若手でもきちんと仕上げられるような環境整備も進める。

たとえば近年のプレス加工機は、タッチパネル式で一定部分までは自動加工できるように進化している。従来の機械は「勘と経験」が必要で、機械操作から覚え込まないと高い精度にはならない。若い人の育成・定着のためには、デジタルを活用した作業軽減も有効だと加藤さんは考える。そこで、積極的に全国区の会社とも情報交換しながら、計画的な設備改善にも力を入れる。

使われている現場をよく知るからこそ、必要な機能に絞り、シンプルな機械を提供することができるのが、加藤鋼機の特徴だ。製造部門の強化により、最近は、小型の洗浄機・選別機をつくることもできるようになった。今後は個々の農家にも自社の機械を展開していきたいと考えている。人手不足の経営課題を抱えることが多い業界ではあるが、製造部門の強化を機に事業拡大を進める事例として注目される。

企業データ

企業名
加藤鋼機有限会社
設立
1979年
従業員数
8人
代表者
加藤 豊 氏
所在地
北海道河東郡音更町新通6丁目1番地27