鈴木氏は2012年8月に3代目社長に就任。そして粗利(売上高から売上原価を引いた利益)がピーク時の半分にまで落ち込んだ2019年、鈴木氏は事業の多角化へと舵を切った。「他の新聞販売店では、野菜や弁当の宅配など、既存の事業を基にした多角化を行っていたが、もっと大胆な策が必要だ」と鈴木氏。「新聞販売とは全く関係のない事業をM&Aで会社ごと買収する手もある」。そんな考えを漠然と抱くようになっていた。そんな折、同社近くの静岡銀行入野支店に赴任した新任の支店長が鈴木氏の浜松北高の先輩だった縁で、M&Aを専門とする同行のグループ会社が仲介役となって買収の話が急進展した。そして2020年4月、後継者不在で当時の経営者が買い手を探していた浜松空調工業を買収することになった。
空調設備の清掃という、新聞販売とは無縁の事業を買収したことを受け、翌年4月に、ニュースセンターと浜松空調の持ち株会社としてウエストハママツHDを設立した。続いて2024年1月には、浜松空調と同じく後継者不在で、ウナギなど水産物の加工販売や飲食店(カキ小屋)事業を手掛けるマルマ中塩商店を買収した。社長には鈴木氏の弟・順之(じゅんじ)氏が就任し、鈴木氏の妻・里枝氏も取締役を務める。これによりHDは事業会社3社を傘下に収めることになった。
一連のM&Aの狙いは売り上げの回復だが、跡継ぎのいない企業の事業継続によって雇用を維持し、ひいては地域経済の活性化をもにらんだものだった。また、マルマの買収ではシナジー効果が生じたという。新聞全体の発行部数の減少に加え、取り扱い部数の大部分を占める静岡新聞が2023年3月末で夕刊を廃止したことで、配達業務やチラシの折り込み作業にかかる時間も減少。そこで手の空いた時間を活用してニュースセンターの従業員がマルマでウナギの通信販売の作業を手伝うことになった。また、新たにイタリアン料理を提供する夜間営業を始めたカキ小屋「舞阪マルマ幸福丸」では、HDの社員が休日にアルバイトとして働いている。