「生パスタを食べたお客さんからは『このパスタ、なんなん?』『どうやって作ったん?』といった驚きの声も聞かれる」(出雲氏)と評判は上々だった。地道な営業活動に加え、シェフ同士の口コミもあって取引先は順調に拡大していく。一方で出雲氏には心の葛藤があった。「生パスタを使っていても、料理がおいしい店もあれば、あまりおいしくない店もあった」。しかし、取引先に対して面と向かって「おいしくない」とは言えずにいた。
やがて“おいしくない店”の一つが閉店してしまう。「こういった店を二度と出したくない」と考えた出雲氏は、2013年に直営レストランを開設。パスタのほか、ソースや具材まで含め、「どう調理すれば、よりおいしい料理が出来上がるのかを自ら実践した」(出雲氏)という。それ以降、同社の営業スタッフはフライパンを持参して取引先を訪問し、生パスタに最適な調理方法をその場で実演するようになった。
直営レストランの開設は、同社の新商品開発にとっても重要な役割を担っている。取引先のシェフが知人と来店して食事をした際、シェフは満足してくれたものの、連れの知人は「乾麺のパスタと変わらない」との感想を漏らした。プロには分かっても、一部の一般の人には生パスタと乾麺の違いが伝わっていなかったのだ。この一言にショックを受けた出雲氏は「モチモチ感を最大限に引き出した、誰が食べても乾麺との違いが分かる商品も作ろう」と決意。こうして“もっちもち”が特徴の「モッチリーニ」という商品が誕生した。現在、プロ向けの商品(淡麺プロ)は定番商品から季節限定商品など50種類以上に及ぶという。
2015年12月完成の社屋に隣接する第一工場(2021年に第二工場を増設)で「本当においしい生パスタ」を1日4万~5万食製造し、社屋併設のレストラン「PASTA FRESCA DAN-MEN」で生パスタを使った料理を提供している。誰が食べても違いが分かる生パスタは、常時約30種類から選ぶことができ、そのおいしさが評判を呼び、開店時間前から入店待ちの人たちの姿が見られるなど、多くの来店者で賑わっている。