無人稼働で短納期・高精度を実現
モノづくりの業務フローの中に人が介在する場合、休息は不可欠です。通常、この人が休息している間は、モノづくりもストップせざるを得ません。しかもその業務が特定の人にしかできない“職人技”を必要とするものである場合、深刻度はより深まります。同社が独自開発した「HILLTOP System」は、現代のモノづくり中小企業の多くが抱える上記のような課題を解決しうる夢のようなシステムです。
「HILLTOP Systemなら、PC上で必要な操作を行うだけで、製造機器などを24時間365日稼働させることができます。その上、シミュレーションは実機を使わずにシステム上で行えることもあり、さらなる短納期が実現。しかもこのシステムの基となっているのは、職人たちの技術を細かく細分化し、30年以上をかけてデータベース化したものですから、仕上がりの精度にも自信があります」
同社は、世界の最先端企業が集う米国シリコンバレーにも拠点を開設。スピード感や精度の高さは、NASAやテスラといった名だたる組織や企業からほぼ毎日製作依頼が届くといった事実が証明していると言えるでしょう。
また、人材不足や技術の継承にも課題を抱える現代のモノづくり企業にとっては、“職人技のデジタル化”も見逃せないトピックに違いありません。しかもHILLTOP Systemは、あらゆる製造機械とのリンクが可能。今後モノづくり企業と連携し、閑散期で稼働率が下がった機械を有効活用して生産を行うシェアリング事業なども想定していると言います。
HILLTOP Systemを用いて、PC上で加工シミュレーションを行っている様子
始まりは30年以上前に語りあった夢
HILLTOP Systemの構築がスタートしたのは、高度経済成長期の1983年にまでさかのぼります。
「当時の金属加工メーカーは、作れば作るだけ売れて儲けることができましたが、知的労働は最初の試作品を作り上げたときだけ。その後の量産はすべてがルーチンです。『これを一生続けていくのは嫌だな、もっと多くの業務を知的労働で占めたいな』と、体中油まみれ、鼻の穴の中まで真っ黒になりながら、山本昌作現副社長と夢を語り合っていました」
夢は語るものではなく叶えるもの──。同社は早速行動を起こします。最初に始めたのは、職人技を含む日常業務の見える化でした。
「同じ、あるいは同種の注文に対して、すべて最初からやり直しているのは非効率的です。ですからまず注文の内容を一つ一つ詳細に記録するようにしました。加えて、加工のパターンごとに使う機械の種類、回転数、金属に刃を当てるポイントといった職人たちのアプローチの違いも記録。各製品を作るために最も効率的な方法が何かを探り、それを標準化していきました。当時はPCなどありませんでしたから、これらをすべてノートに書き出していたわけです」
当時の鉄工所には珍しくSEも採用し、独自のシステム構築を推進。1991年に「HILLTOP System」での生産がスタートしました。その後も匠の技の新たなデータ化と、ITや加工機械の進歩に対応したシステムのバージョンアップを繰り返し、今に至ります。
「量産からの脱却を目指した時、『なんで儲けることをやめるんだ?』と周りのメーカー仲間からはかなり不思議がられました。でも私たちは、儲けよりもこのモノづくり業界で働く意味ややりがいを重視したかった。今もその思いは変わりません。業界全体を底上げし、若い子たちにとっての魅力アップを実現したいと考えています」