BreakThrough 企業インタビュー

「スマホで見られる」が意識に変化を促す 1μmの菌の動きが確認できる『mil-kin(見る菌)』【アクアシステム株式会社】

2018年 2月 14日

スマートフォンをセットしてカメラアプリを起動するだけで、簡単に菌を見ることを可能にした『mil-kin(見る菌)』
スマートフォンをセットしてカメラアプリを起動するだけで、簡単に菌を見ることを可能にした『mil-kin(見る菌)』

summary

今までの常識を一歩下がって冷静に見直す
誰でも簡単に利用できるツールを活用
リアルタイムに見られる、シェアできることが重要
さらなる広がりを目指し、追求していくこと

目に見えないミクロの世界を覗くために必要なものは何かと問われると、多くの人は「顕微鏡」と答えるだろう。それがこれまでの常識だった。だが、スマートフォンによって、そんな常識は変わることになった。

アクアシステム株式会社が提供する『mil-kin(見る菌)』は、スマートフォンのカメラアプリで、水溶液中の微細な菌やカビなどを見ることのできるバクテリア・セルフチェッカーだ。使い方は簡単で、スマートフォンをスタンドにセットし、試料ステージに水溶液を1滴垂らすだけで、プレパラートなしでスマートフォンの画面に映し出すことができる。

試料ステージに水溶液を1滴垂らすだけで、プレパラートなしでスマートフォンの画面に映し出す

「水を売る」会社だからこそ生まれた発想

アクアシステムは1986年の創業以来30年以上に渡って飲食業、畜産業、検査会社など幅広い産業分野を取引先として、電解水の提案・販売を行ってきた会社だ。水のスペシャリストである同社が、なぜ「顕微鏡」という分野において革新的なアイテムとなる「mil-kin」を生み出せたのか。実は、そこには「水を売る」会社ならではの発想があった。

電解水と一口に言っても、さまざまな種類があり、その効果も異なる。代表的な例を挙げると大腸菌やサルモネラ菌といった、水の中に含まれる微細な菌に殺菌効果のある微酸性電解水などがある。

同社は従来から、電解水の効果を取引先で見せるために、重量が20kg程度ある顕微鏡を持ち運んでいたという。しかし顕微鏡には通常、プレパラートが必要で、場所によってはそれらのガラス製品の持ち込みは事故防止のため厳禁であった。

「営業スタイルがスマートではなかった」

同社代表取締役社長の狩野清史氏は、「mil-kin」の開発に着手するに至った理由についてこう述べた。ガラスレスという発想は、その場で電解水の効果を実証するために「顕微鏡とプレパラートがないといけない」という今までの常識より、「どこでも見せることができるようにしたい」という営業目線でのニーズを優先したからこそ生まれたものだった。

スマートフォンを使ってどこでも見られる

「mil-kin」はどんな場所でも利用できるよう、単3電池2本で駆動するよう設計されており、スマートフォンに専用のスタンドをセットするだけでよいという手軽さがウリだ。その倍率は1000倍あり、1μm(1/1000mm)以上のものなら見ることが可能となっている。

ではなぜスマートフォンだったのか。それは今や多くの人々のマストアイテムであり、最も身近なツールだからだ。通常の顕微鏡であればその使い方から覚える必要があるが、スマートフォンのカメラ機能であれば誰でも身近ですぐに使うことができる。難しい操作が不要という敷居の低さは、多くの人々にとって受け入れやすかった。また、カメラ機能を使えば、その場で菌を写真に記録することも、動画で撮影してメールなどでシェアすることも可能とした。

結果を知るのに日数を要するのはナンセンス

例えば手洗いの効果を調べるとして、従来のやり方だとその結果がわかるまでに日数を要したが、「mil-kin」を使えば専門知識がなくとも、その場に菌がいるかどうかがリアルタイムに調べることができる。

「知識を持ち合わせていなくても、菌がたくさんいる、動いているというのを目にしたらまずは驚くと思う。そういうところから、清潔を保つことの重要性に意識を広げていってもらえれば」と狩野氏が語るように、リアルタイムに知ることができるというのは、さまざまな産業分野において今後ますます重要になってくる。

菌が“見える”から菌が“わかる”へ

現状、スマートフォンで手軽に菌が見えるというステージに立つ「mil-kin」だが、さらなるフィールドを目指した施策に乗り出している。

「菌の世界はまだ全体の3%程度しか解明されていないと言われている。その3%も、本当に3%なのかどうかもわからないような未知の世界だが…」と前置きしつつ、「単純に、簡単に見える機能から一歩先に行くため、技術を深掘りしていきたい」と狩野氏は語る。菌の見える化から一歩先の菌のわかる化を目指すべく、アプリ開発をすすめている。

代表取締役社長 狩野清史氏

リアルタイムで目に見えないものが見られる、効果をその場で実証できるということは、より具体的な説得力を持って認識できることにつながる。清潔さが求められる食品、保育、介護関連の現場での食中毒の予防や、教育現場での教材としての活用に期待が寄せられる。また、医療現場でもその場で患者の粘膜等を採取し見せることでの説明が可能になれば、治療フローを大幅に短縮できる可能性を秘めている。

企業データ

企業名
アクアシステム株式会社

電解水に携わって30年以上の経験で、あらゆる業種のお客様のニーズ(使用目的・ご予算等)に、スピーディで最適な製品・システムを提案することが、当社最大の強みです。又、スマホを使って「菌の見える化」を可能にしたバクテリア・セルフチェッカー『mil-kin(見る菌)』を開発。