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「美ら花 紅茶(沖縄県沖縄市)」価値伝える手法学ぶ

この記事の内容

  • 沖縄産素材で癒やし商品、紅茶の企画販売を行うが良さが伝わらない
  • よろず支援拠点に相談し、顧客ニーズ掘り下げ、POP製作、高級紅茶の開発に着手
  • 紅茶を主力商品として社名も変更しブランド展開を推し進める
「無農薬に拘る美ら花紅茶を味わってほしい」と語る上地代表(今年10月に開設した事務所兼直売所のサロンで)

「沖縄は自然の恵み溢れる宝庫。先人の知恵を受け継ぎ心豊かに暮らすスタイルが素敵だ」

この想いから、モズクを使った手作り石鹸の販売を個人事業「美花(ちゅらばな)」として2008年4月に杉島律子氏が創業した。沖縄県に移り住み3年目のことだという。翌年に現代表の上地直美氏(42)と出会い、沖縄の自然が育む素材の豊かさを伝えたいとの二人の思いが重なる。こうして沖縄県産素材7種類を活用した洗顔石鹸などの商品企画で事業拡大を図ることになった。

「アロマサロンを経営していたので、癒やしへの感心は高かった。それを沖縄の素材で商品化しようとする杉島さんの気持ちに賛同した」と上地氏は当時の出会いを語る。

沖縄県産素材を生かした癒やし商品の企画を展開する中、県から無農薬で紅茶を生産する農家を紹介され、紅茶販売を始め、現在の主力商品となる。その後、杉島氏が本土に帰郷することになり上地氏が事業を承継することになった。14年10月のことだ。

沖縄県は北緯26度に位置し紅茶栽培の最適地。県北部は沖縄特有の「国頭マージ」と呼ばれる赤土で、米ぬかなどの微生物を活用した土づくりを行い、農薬を使わない紅茶栽培が行われている。この地で沖縄の気候、風土に合う品種として「べにふうき」が作りだされている。

「事業を引き継いだ当初は、紅茶も商品化の知識もありません。生産農家を訪ね、土に触れ、茶葉を手にしながら勉強の連続。ここで作られた紅茶の香りは、口の中で弾けるよう。この素晴らしい紅茶を何としても多くの人に知ってもらわなければ」と紅茶販売への意欲が湧いたという。

生産農家から仕入れた茶葉を大きな茎の除去と等級分けを行い、シール貼りなど手作業でパッケージングした後、県内のリゾートホテルのレストランやアメニティーなど、お土産のショップで販売した。沖縄だからこそ味わえる逸品であり、高品質な茶葉を使用しているにもかかわらず、その良さが上手く伝わらない。沖縄で紅茶が栽培されている認知度も低い。

茶葉の生産農家は、昨年、国産紅茶グランプリの品評会で準グランプリと金賞を受賞。今年も準グランプリを連続受賞しており品質は折り紙つきだ。どうすれば、この紅茶が持つ最高の味わいを知ってもらえるのか、悩む日々が続いていた時期だった。中心市街地活性化の施策展開でヒアリングを受けたことがある中小機構沖縄事務所の職員が訪問してきた。

「渡りに船。良い商品として認知度を高めブランディングしていきたいことなどを相談したら、よろず支援拠点を紹介してもらい、すぐに門を叩いた」と話す。

沖縄県よろず支援拠点では、既存の販売方法の見直し、顧客ニーズの掘り下げ、商品陳列やPOP製作などを提案。希少価値のある商品としての魅力を引き出すため、県産最高級紅茶の商品開発を支援した。

「名月」の名称で100個限定発売するとのプレスリリースが、新聞記事として紹介され、県内外からの電話やネット注文が入った。「これを機に既存商品の受注も増えた。提案を受けてパッケージも沖縄らしい高級感あるデザインに変更した。季節ごとに違う味が楽しめる〝春摘み紅茶〟〝初夏摘み紅茶〟などを、今年は〝秋摘み紅茶〟を発売し人気を得ている」という。
大量販売はできない地道な商品展開になるが、美ら花紅茶を楽しみにしてもらえるファンを大切に、ブランド展開をもう一歩、推し進めていく考えだ。

紅茶販売を通して「安全安心なオーガニックの県産素材商品を広め、多くの人に理解してもらえるようにしたい」と強調する。

「商品価値の気づきを示唆」 沖縄県よろず支援拠点チーフコーディネーター上地哲氏の話

相談内容は、良い商品なのに認知度が低いこと、利益が出ないことでした。話を聞くと無農薬茶葉にこだわる農家の想いを、消費者に届けようとする誠実な取り組みが伝わってきます。しかし、高付加価値商品を普通の商品と同じように販売している。これは見直すべきと説明しました。

ブランディング支援として、他の商品と比べ差別化できる強みをアピールすること、希少性、品質へのこだわりなどのストーリーを発信するようアドバイスしました。利益率の高いネット販売を志向し、ホームページや情報発信力をブラッシュアップするなど一歩ずつの展開。この間に農家へ同行して無農薬栽培を肌で感じ、生産者を評価する価格設定への思いを強めました。

支援内容は、価値に見合う価格で販売する気付きと、そのための行動で、成果を出すことができました。茶葉の生産量が限定されているので、今後も販売計画を作り、生産者との信頼関係をさらに深めてもらいたい。

企業データ

企業名
美ら花 紅茶
設立
2008(平成20)年4月
代表者
上地直美氏
所在地
沖縄県沖縄市大里1-26-20
Tel
098-934-5200
事業内容
沖縄県産、有機栽培紅茶の卸販売など