谷治氏はいわゆる婿養子である。1999年に大学を卒業後、大手小売業グループに入社し、スーパーの店舗マネージャーとして予算の立案からパート社員の管理まで担った。2011年末に妻の実家である谷治新太郎商店に入社。わずか1年1カ月後の13年1月に代表取締役に就任し、改めて売り上げの減少に苦しむ経営状況に驚いた。
「数年間は様子を見てから改革する選択肢もあったが、それでは遅い。業界の慣習など何も分からない段階で、おかしなところは全部変えてやろうと考えた」。どんぶり勘定だった経理を洗い出し、期間限定で社員の賞与を半額にした。「売り上げを増やすにはこれしかない」と電子商取引(EC)サイト「卒塔婆屋さん」を構築し、ネット販売を始めた。
最初の半年間は売り上げがゼロだった。しかし徐々に売れ出し、2年半前のサイト改修後は月100万円以上を販売。現在は月400万円ほどを売り上げる。顧客である寺院と最終消費者との関係から明示していなかった商品価格を掲載したほか、最低50本だった販売単位を1本からのバラ売りに変えたことが奏功した。
谷治氏は「ニッチな商品ほどECとの親和性が高い」と言い切る。卒塔婆は必要な人しか買わない半面、メーカーの廃業が続くとネットで探すしかなくなる。これに対し、必要な時に必要なだけ翌日配送されれば、価格がある程度高くても購入するという。18年11月期はネット販売比率が25%となり、今期は35%、来期は50%まで高まると予想する。
生産面での改革にも取り組む。社員に対して「いかに楽にできるか考えてほしい」と呼びかけている。楽な姿勢で作業できるよう機械の配置を変えたり、作業自体を無くしたりすれば、生産性向上やコスト削減、短納期につながるためだ。近く社員全員に携帯端末を持たせて各工程の作業を洗い出す計画で、標準作業時間を割り出し、データを蓄積した上で、将来的には人工知能(AI)が自動的に作業を割り振る体制を目指している。