コロナ禍でがんばる中小企業

ネットをフル活用し沖縄の映画文化を発信【シアタードーナツ・オキナワ】(沖縄県沖縄市)

2021年 2月 19日

シアタードーナツの宮島真一代表
シアタードーナツの宮島真一代表

1.コロナでどのような影響を受けましたか

店舗は沖縄市の中心街にある
店舗は沖縄市の中心街にある

2015年からカフェを併設したミニシアター(小規模映画館)「シアタードーナツ・オキナワ」を運営している。開設したきっかけは、沖縄市観光協会が地元PR映画として制作した「ハイサイゾンビ」を知人のカフェで上映する企画を立てたことだ。地元住民約100人がゾンビ役として登場する作品で、出演者たちが飲食しながら鑑賞して大いに盛り上がった。

沖縄県内で制作された作品を上映する常設シアターを整備したいと決意し、仲間たちと空き店舗を改装してスタートさせた。現在は沖縄発にこだわらず、テーマ性の強い作品をセレクトして、そのテーマに合った観客を呼び込み、上映後は意見交換会に発展させるなど、映画を通して考えるきっかけづくりを提供している。

120インチのスクリーンと20席程度を備えたシアターを、店舗の1階と2階それぞれに用意。普通の映画館とは異なり、大小さまざまな形の椅子やソファー、テーブルを配置し、カフェで販売する手作りドーナツや飲み物をいただきながら、ゆったりと映画が観られる点が特徴だ。ロビーはカフェスペースとして飲食だけでも利用できる。

しかしコロナによる緊急事態宣言に伴い、20年4月から5月にかけて営業休止に追い込まれた。5月は月平均売り上げの10%以下に激減した。6月以降も映画の上映は休み、カフェのみの営業を強いられた。休業期間中は2人の従業員を休ませ、雇用調整助成金を活用した。

8月から上映業務を再開し、コロナ対策として作品の上映回数を減らし、営業時間を短くして人数制限や検温などを徹底した。この結果、9月から月平均売り上げを超えるところまで回復した。ところが1月19日に沖縄県が「県独自の緊急事態宣言」を出した影響を受け、1月は再び月平均売り上げを下回った。

2.どのような対策を講じましたか

ドーナツと飲み物をいただきながら映画を楽しめる
ドーナツと飲み物をいただきながら映画を楽しめる

休業を強いられる中、ビデオ会議システムを活用したリモートによるゲストトークライブをインターネットで配信した。また映画の有料配信を始めたり、オリジナルグッズを製作して店内販売やネットによる通信販売を始めたりした。

トークライブはそれまでも定期的に開催しており、例えば5月に行った無観客によるオンラインライブでは、従来とほぼ同数の約20人の観客が県内外からオンライン上で参加。チャット機能を通じて観客を交えて意見交換した。

7月には俳優の妻夫木聡さんと私がオンライン上で話すトークイベントを開いた。妻夫木さんとは、沖縄を舞台にした映画「涙(なだ)そうそう」(2006年公開)の主演俳優を務められた時、方言指導で協力した仲。5月にオンラインで近況報告した際に提案した。

当日は東京の妻夫木さんと、沖縄のシアタードーナツをビデオ会議システムで接続。感染拡大防止のため、観客を県内在住者30人に限定し、1階と2階のシアタールームに分散して参加してもらった。互いに撮影時の思い出を振り返り、観客からの質問にも妻夫木さんは気軽に答えていた。結局、トークライブの開催回数は19年の34回を大幅に超え、20年は52回に上った。

『イザイホウ』(2014年公開)や『ふじ学徒隊』(2012年公開)を撮った野村岳也監督(20年5月に死去)とのトークイベント
『イザイホウ』(2014年公開)や『ふじ学徒隊』(2012年公開)を撮った野村岳也監督(20年5月に死去)とのトークイベント

有料映画の配信は、新作映画をオンライン上で配信する「仮設の映画館」に参加し、ドキュメンタリー映画を配信した。全国のミニシアターで2020年春に公開予定だった新作を有料・期間限定で配信する仕組みで、北海道から沖縄まで50を超えるミニシアターが参加した。

またオリジナルのTシャツやトートバッグを作製し、販売した。映画の有料配信は約300人、オリジナルグッズの販売は約200点の実績だったが、こうしたネットを利用した対策を通じて、県内外からのファン層が増えたと実感している。

さらに資金繰り対策として、国の持続化給付金や家賃支援給付金、小規模事業者持続化補助金を活用したほか、沖縄県の沖縄文化芸術コンテンツ配信環境支援事業を利用した。無利子融資についても今後、活用したいと考えている。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

エントランス(左奥に自家製ドーナツが並ぶ)
エントランス(左奥に自家製ドーナツが並ぶ)

現在は1月19日に発令された「県独自の緊急事態宣言」の営業時間短縮要請に従い、夜のイベント上映企画を自粛している。このため、昼から夕方までの営業体制のまま、話題作りのための配信イベントを企画し、上映作品のPR作業を増やすなどの対策を取っている。

今後については、リモートによるゲストトークライブのネット配信を増やすほか、オリジナルグッズの新規企画販売や、ネット通販業務の販売アイテム(チケットなど)を増やす計画だ。新作映画の有料配信にも取り組みたい。

また自社ホームページを20年12月にリニューアルした。以前よりも見やすく、シアタードーナツのコンセプトや生い立ちなどを記載して個性を表現できている。引き続きツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNSの活用も進め、上映作品の情報やシアターの様子を小まめにアップしていく。

さらに近隣の商店街の店舗とのコラボレーションも考えている。映画のトークライブゲストに店主を招いたり、飲食系であれば特別なメニューを提供したりと、映画のテーマやジャンルに合わせたコラボを企画していきたい。

企業データ

企業名
ベイキャントストア・ピクチャーズ (店舗名:「シアタードーナツ・オキナワ」)
Webサイト
設立
2015年2月13日
代表者
宮島真一 氏
所在地
沖縄県沖縄市中央1-3-17
Tel
070-5401-1072

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