農業ビジネスに挑む(事例)

「ファーマーズマーケット@UNU」東京・青山にマルシェをプロデュース

  • 東京・青山という大都市に大きな市場を設ける
  • 生産者が積極的に消費者とコミュニケーションを図る

毎週土日に東京・青山の国連大学(UNU)前広場にマルシェ(市場)がたつ。それは農林水産省の補助プロジェクトとして始まった都市住民参加型市場「マルシェ・ジャポン」(全国8都市で開催)の1つ、「ファーマーズマーケット@UNU」だ。運営はNPO法人ファーマーズマーケット・アソシエーションが手がける。

ファーマーズマーケット@UNUは2009年9月から始まり、毎週土日の10時から16時まで開催される(雨天決行)。マルシェ・ジャポンの目的は、生産者が自らの生産物を直接販売する場を設け、生産者と消費者が互いに言葉を交わすことで生産物への理解を深め、食卓を豊かにしていこうというもの。それを実行する空間がファーマーズマーケット@UNUだ。

毎週土日、東京・青山という大都会のビルの狭間にマルシェ(市場)が開かれる

コンセプトは消費者に直に対面して販売すること

「近年、3Kといわれてきた農業もそれからの脱却に工夫を図り、農家民宿や農家レストランの運営、また、有機野菜や日本古来の野菜の栽培などに取り組んでいます。ただ、それらの取組みは産地だけで完結できるものではなく、販売先として都市という大きな市場が必要なのです」(ファーマーズマーケット・アソシエーション、佐藤卓也さん)

野菜や果物のことは育てた農業生産者が最もよく知っている。おいしい食べ方、調理の仕方。それらを生産者が直接に対面して消費者に伝える。それを「都市型対面式産直市場」というコンセプトにしてファーマーズマーケット@UNUは立ち上がった。

ファーマーズマーケット@UNUのキーワードは、消費者から「マイ・ファーマー」と呼んでもらえるような関係づくりだ。そのためには生産者が消費者の声を意識しなければならない。つまりマーケティングだ。自ら生産した野菜を食べた消費者の反応(声)を知れば、野菜の味づくりや作付けへの意識が高まる。そのためマーケティングのサポートもファーマーズマーケット@UNUではする。

同マーケットに出店する前の農業生産者は消費者の声など意識していない。だから、最初の出店は地元の直売所と同じように無造作にただ野菜を置くだけで、値段も卸値で販売しようとする。これでは新鮮だが野菜を安く売るだけで終始してしまう。そこで野菜を魅力的に見せるためのディスプレイや試食の実施などをアドバイスし、消費者との会話のきっかけづくりを促す。

「そうすれば消費者から食べた感想を直接聞けますし、それによってマーケティング感覚を養うことが重要だと思います」

野菜のディスプレイもコジャレておしゃれだ

また、自らの生産物である野菜や果実への付加価値付与の認識も説く。例えば市場では規格外となるような曲がったキュウリも安く売るのではなく、なぜそうした形状なのか味はどうなのかをきちんと説明し、野菜としての価値を理解してもえるように努める。それは生産者だからこそ伝えられることであり、そのコミュニケーションを通して生産者と消費者の理解が深まっていく。

「そうした交流を重ねながら、消費者から指名買いしてもらえるような野菜、果物、そして生産者が生まれればいいなと思います」

生産者が消費者と対話しながら販売することで消費者ニーズを知り、また自ら栽培した旬の野菜の味や旬の意味を消費者に知ってもらうことで、その生産者の野菜を目当てにマーケットに足を運んでもらえる「マイ・ファーマー」になってもらう。

「とにかく出店する農家の方々の収入が上がってほしいし、来場のお客さまにも買われた野菜などの話で家族の食卓がにぎわい、豊かになっていただければ最高です」

ファーマーズマーケット@UNUの来場者は1日平均1万人で、30-40代の女性や親子が多く、また近隣のシェフも訪れる。

口コミで出店の農業生産者は増え続ける

生産者の出店料は1回につき7000円で、売上は平均で約6万円であることから、経費いかんでは決して利益が多いとはいえない。しかし、毎週定期的に開催される場でマーケティングと消費者との関係構築ができるという特徴を理解してほしいとファーマーズマーケット@UNUは説く。そのメリットが評価された結果だろう、出店者数は当初の30店前後から現在は約2倍の60店。出店する農業生産者は口コミで現在も増え続けている。

また、最近の出店者の傾向として、農産物を加工品にして付加価値を付与する、いわゆる6次産業化を実践する農業生産者が増えており、農業に対する新たな可能性が胎動しているようだ。

企業データ

企業名
NPO法人ファーマーズマーケット・アソシエーション
Webサイト
所在地
東京都港区三田3-2-8(株式会社マインドシェア内)