3月末の時点で店の将来をスタッフと協議していた。「オープンから1年でたくさんの来客がある。テイクアウトだけでもやりましょう」という意見があり、店内飲食サービスの休業を準備し始めた。
消費税が10%に上がった19年10月から、カレーは持ち帰りできるようにしていた。これによって、テイクアウトサービスを本格的に始める素地はできていたため、宣言翌日の4月8日に早くもテイクアウトのみの営業にシフト。弁当だけでなく総菜のニーズもあると感じていたことから、夕方には総菜販売を強化した。
テイクアウトサービスは、カレーと、夜のメニューで人気の鳥のから揚げを使った弁当の2種類でスタートした。生姜焼き、埼玉のブランド卵を使ったオムライス、親子丼、麻婆丼と次第に品数を増やし、夕方は天ぷらや、から揚げ、煮物、ポテトサラダなどの総菜を作ってみると、アッという間に完売。改めて地域のニーズを実感した。
コスト削減も怠らなかった。きんぴらごぼうは泥つきのごぼうを洗って手で刻んだ。から揚げは問屋から仕入れた鳥肉の脂や筋を取り除き、1つずつグラム数を計りながら切り分けるなど、店内で下処理する工程を増やして支出を抑えた。
さらには単価を見直し、売れるメニューに絞って販売した。こうした自助努力の結果、7月にV字回復を達成。8月も昨年実績を上回る売り上げになっていた。
他方、当初から事業計画の作成などで伴走支援を受けてきた埼玉県よろず支援拠点の助言を得たことも強い味方になっていた。経済産業省が「小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)」に創設した新型コロナウイルス感染防止対策への投資を補助する「事業再開枠」を活用することができ、スタッフらの検温や店内消毒などの感染対策に役立った。
同拠点のPR専門家にブランディングのポイントやプレゼン時の注意点などでアドバイスを受けながら、川口商工会議所女性会が今年2月19日に主催したウーマンビジネスコンテストに参加。大賞と、来場者の投票で最も支持を得た事業者を称えるオーディエンス賞をダブル受賞した。
多数のメディアでこの実績が紹介されたことが集客効果を生み、リピーターや新たな顧客獲得につながった。同会議所が、5月から6月中旬までクラウドファンディングによって支援金を募る地元飲食店応援プロジェクト「~みんなで盛り上げよう!in食お助け隊 川口~」で、上位の支持を得て支援金を受領したことも業績回復に寄与している。
当店は、宣言解除後もテイクアウトサービスのみで営業を続けている。顧客から「他店は店内飲食を再開したのに、なぜまだテイクアウトのみなのか?」という問い合わせがあったが、顧客はもちろんスタッフの安全を第一に考えて「店内感染予防策が絶対的に徹底できるまでは、テイクアウト営業しかしない」という強い姿勢で臨んでいる。
店頭には、ウイルス除去効果のある抗菌塗装を施した証を表示している。顧客は非接触体温計で検温し、平熱が確認できればアルコール噴霧のオートディスペンサーで手指を消毒するという手順で入店してもらっている。店内でマスクを外す人には、使い捨ての抗菌マスクケースまで渡している。
「こうまでしては利用を敬遠されるのではないか?」と不安だったが、「これだけしっかりしている店なら安心」という声が多数寄せられ、自らの対策に自信を持った。多くの感染対策に取り組んだことで顧客に安心感を提供できたものと認識している。