コロナ禍でがんばる中小企業

IoT体験学習をオンライン化【株式会社アイオーティドットラン】(仙台市青葉区)

2021年 7月 20日

企業内のIoT技術者を育成するハンズオンセミナー
企業内のIoT技術者を育成するハンズオンセミナー

1.コロナでどのような影響を受けましたか

IoTデバイスを簡単に構築できる「Tibbo-Pi」(ティーボパイ)
IoTデバイスを簡単に構築できる「Tibbo-Pi」(ティーボパイ)

仙台のIT企業である株式会社コー・ワークスのIoT(モノのインターネット)事業を分離し、2019年4月に創業した。生産設備の稼働状況や電気代、湿度などを計測できるブロック状センサーなど、多彩なモジュールブロックを組み合わせて簡単にIoTデバイスを構築できる「Tibbo-Pi」(ティーボパイ)を18年9⽉に開発・発売したのが発端。IoTの知識があまりない人でもIoTシステムを構築できるため、この事業に可能性を感じ、事業拡大をスピードアップさせるために独立した。

起業後はTibbo-Piの販売と平行して、企業内のIoT技術者を育成するハンズオン(体験教育)セミナーやIoTに関するセミナーを開催した。初心者でも簡単にプログラムを作成できるオープンソースのビジュアルプログラミングツール「Node-Red」(ノードレッド)とTibbo-Piに実際に触りながら、IoTの基礎を学習できる内容だ。ほぼ毎⽉1回の頻度で開催し、1回のセミナーで30人ほどの参加者を集めた。初年度となる20年3月期は約2800万円を売り上げた。

ところが20年4月に最初の緊急事態宣言が出され、リアルで開催していたIoT学習サービスが全てキャンセルになった。社内的には以前からテレワーク環境が整っていたため、全員がテレワークに移⾏した。資金繰りについては、⽇本政策⾦融公庫の無利⼦融資や国の持続化給付⾦を活用したほか、宮城県や仙台市の補助⾦も適⽤範囲が被らない範囲で最⼤限に活⽤した。

2.どのような対策を講じましたか

仙台高等専門学校と取り組む「仙台高専ジュニアドクター育成塾」。高専学生と同社社員が講師となり、小中学生にIoTを教える
仙台高等専門学校と取り組む「仙台高専ジュニアドクター育成塾」。高専学生と同社社員が講師となり、小中学生にIoTを教える

オンラインを活用した学習支援サービス「ガリレオ」の開発を20年3⽉から始め、4月にサービス提供を開始した。動画ベースのオンライン学習プラットフォームは既存のものがすでにあったが、学習コンテンツはゼロからのスタートだった。⾃宅待機している方をユーザーターゲットに設定しており、より迅速にサービスを届ける必要があった。そのため、すべて完成してからリリースするのではなく、学習コンテンツを段階的に提供していった。

実際に照度(明るさ)を計測するハードウェアを作り、そのデータを当社のIoT専用クラウドサービス「IoTクラウド TRY!」に蓄積し、グラフで可視化するまで、受講者が手を動かしながら学習する。これまでリアルの講座では2日間で開催していた内容を、オンライン講座は1カ月のスパンでユーザーの希望するタイミングで学習することを可能にし、遠くは沖縄県をはじめ全国各地で受講される人が増えた。IoTデバイスを構築・学習するサービスはまれであり、多くの企業や支援機関などで導入されている。また宮城県の「先進的AI・IoT活用ビジネス創出実証事業業務」に採択された。

20年9⽉には、オンラインとリアルの両方の良さを兼ね備えたハイブリッド型の学習サービス「ガリレオプラス」も始めた。オンライン学習機能に加え、講師と受講者の双方向コミュニケーションが可能な機能を追加した。コロナ禍でもリアルでのハンズオンセミナーの要望が多かったためで、ハイブリッド型にすることにより、受講環境に応じて柔軟に対応できるようにした。この事業は、内閣府の「沖縄型産業中核⼈材育成事業」に採用されており、今年度も実施する予定となっている。

この結果、東北経済産業局などが実施する、成長が期待されるスタートアップ企業を選定する「J-Startup TOHOKU」の1社に選ばれた。さらに最近では、新型コロナの影響を受けて事業転換を余儀なくされる企業に対し、国の「事業再構築補助金」の申請と事業遂行を全面的にバックアップする支援事業も始めた。東北を拠点とする複数社と連携して、ITを活用した事業再建や新規事業の相談を受け付け、事業計画書や補助金の申請書の作成サポートからITシステムの構築までを支援していく。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

社内で打ち合わせ
社内で打ち合わせ

ガリレオとガリレオプラスなどのIoT教育事業は、今後1年で1000万円ほどの売り上げを⾒込んでいる。IoTはデジタル化の⼿段であり、顧客が本質的に望んでいることは「デジタル化して得られたデータの活⽤≒DX(デジタルトランスフォーメーション)」。DX全般を実現できる価値を提供できるような仕組みを作り、業界をリードしたい。またこの実績をベースに、ハンズオンセミナー・研修や、コンサルティング・開発・IoTシェアリング事業などで売り上げを伸ばしていけるような事業戦略を検討していく。

一方、新規事業として、企業のPoC(概念実証)をサポートする事業も始めた。PoCとは新規事業開発に際して、事前に設定した通りの効果をもたらすかを検証する作業。IoT事業を始めて分かったことだが、顧客の多くはPoCを実施しているものの、効果的なPoCができていないケースも散見されたためだ。1年後には3000万円、3年後には1億円ほどの売り上げを目指している。

IT分野の調査会社によると、IoT市場は今後、毎年10%ずつ拡⼤していくといわれている。現場感としても、このコロナ禍を受け、「三密」を避けて不要な接触を控えるため、⼈がやらなくても良い仕事を⾃動化し、IoT化していこうというDXの気運は、これまでにないほど⾼まっている。

淡路義和代表取締役CEО
淡路義和代表取締役CEО

また、IoTの概念は広がりつつあり、市場のセグメントは複数に分かれていっていると感じる。当社はIoTのデバイス開発、ソリューション、教育の3事業を同時に実施している珍しい企業で、3分野のいずれの接点からも価値を提供できる点が最大の強みだ。今後はIoTソリューション事業に最も力を入れていきたいと考えている。

Tibbo-Piにより簡単にIoTシステムを構築でき、データを集めることが可能になった。そこで次に出てくる課題は二つある。一つは必要なデータをいかに揃えられるかということだ。さまざまなデータは大量に収集できるが、欲しいタイミングで直ぐに引き出せる環境を整えている顧客は少ない。そこをパートナー企業と連携しながら構築することに注⼒したい。

もう1点は、集まったデータからどのようにして「気づき」につなげられるかという点だ。この点に関しては人工知能(AI)と組み合わせることで、より多くの「気づき」が経営判断に活⽤できるようになる。そこを軸に、東北をはじめ多くの企業に価値を提供していきたいと考えている。

企業データ

企業名
株式会社アイオーティドットラン
Webサイト
設立
2019年4月19日
代表者
淡路義和 氏
所在地
宮城県仙台市青葉区一番町一丁目8-10 京成壱番町ビル2F
Tel
022-399-7744