中小企業・小規模事業者によるカーボンニュートラルの取り組み事例
脱炭素への取り組みで地元顧客の信頼を獲得!メディアへの掲載が社員の自信につながった:株式会社北陽商会(岡山県新見市)
2025年 3月 5日
企業データ
- 企業名
- 株式会社北陽商会
- Webサイト
- 設立
- 1952年
- 従業員数
- 10名
- 所在地
- 岡山県新見市新見327-1
- 業種
- 自動車販売整備業
新見市で自動車整備・販売などを主に展開。タイヤが適正な空気圧を維持できる期間を長くする整備やエンジンの洗浄を行うことで燃焼効率を上げる整備といった、燃費を良くする「エコ整備」を全面に打ち出し、顧客の信頼を獲得。ユーザーファーストの丁寧な姿勢で今もなおその信頼に応え続けている。今回は会長の山崎保彦氏と代表取締役社長 山崎篤史氏の2名にお話を伺った。

[取り組みのきっかけ]
リーマンショックを機に、他社には無いもので勝負する必要に迫られた

1952年に会長 山崎保彦氏の父が自動車部品販売店を開業。1956年からは現在の場所に移り整備業や自動車販売も開始したという北陽商会。個人、企業問わず新見市の安全で快適な車社会を長く支え続けている。
山崎保彦氏は、かなり早い時期からカーボンニュートラルに取り組み始めた理由をこう語る。
「リーマンショック以来業界が厳しくなり、他社には無い特長で勝負しないといけないと感じるようになりました。その時、『エコ整備』を知ってこれをやってみようと。エコ整備を行うための機械の導入にお金がかかることもあり、当初は社員から反対されていたが、いずれ絶対必要になると信じて、東京から講師の方を呼んで導入にこぎつけました」(山崎保彦氏)
環境に配慮していることを訴求するのではなく、年間でいくらガソリン代が節約できるかという点を訴求してユーザーへの認知拡大を図っていった。

「新見市は山に囲まれた地域で、昔は環境の話になかなかピンとくる人がいなかったです。今では、異常気象などの要因の一つにCO2も関係しているということが認知されてきて、私たちがやっていたことは正しかったと言ってもらえるようになりました。
ただエコ整備を始めた当時はあまり売れませんでした。そこで、エコ整備をするとこのくらいガソリン代が節約できて、このくらいの期間で元が取れますよという売り方をしていきました。そうすると少しずつ知名度が上がっていき、県外からもお問い合わせをいただくようになりました」(山崎保彦氏)
[具体的な取り組み]
環境を意識した井戸水の活用
他社との差別化で開始したエコ整備にさらに付加価値をつけるため、2006年にエコアクション21※を取得した。取得には毎年のCO2排出量をレポートで提出する必要があるが、過去およそ20年間で約300tものCO2を削減してきたという。
※エコアクション21
環境省が策定した中小企業者向けの環境マネジメントシステムです。事業活動における環境負荷を低減し、持続可能な社会の実現に貢献することを目的としています。

「CO2削減量300tは電気や化石燃料の排出量ですが、他にリサイクル品などの使用でも減らせていると思います。さらに洗車で使用する水がかなりの量必要になるのですが、水の使用の際にもCO2が排出されているということを知り、井戸を掘りました」(山崎保彦氏)
事業で使用する水を井戸水から賄っているという山崎保彦氏。新見市という土地柄、洗車の重要性が特に高いと代表取締役社長 山崎篤史氏も語る。
「雪が降ると、凍結防止のために道路に塩を巻きます。その塩が車についたままだと錆びてしまうため、洗車の重要性が高くなります。使用量が多い水を井戸水に切り替えた効果は雪の降らない地域にくらべると大きいと思います」(山崎篤史氏)
事務所の蛍光灯をLEDに変更したほか、国や地方自治体の補助金を活用し太陽光発電システム、省エネ対策用のインバータエアコンやコンプレッサーを導入するなど、積極的な取り組みを継続している。
[感じたメリット・課題]
CO2削減による光熱費の削減に加え、社員の自信と地元の方の信頼を獲得

カーボンニュートラルという言葉が日本国内で一般的になる前からすでに取り組みを開始していた同社に、メリットや課題感について尋ねてみた。
「光熱費・燃料費の低減というのがまずあります。井戸やLEDなどに関してもある程度の年数で元が取れています。また新聞やテレビなどで取り上げてもらえることで、社員が正しいことをしているという自信を持って、より脱炭素に取り組むモチベーションが上がっていきました。」(山崎保彦氏)
「新規のお客様の安心感や信頼感も違うのかなと思います。久々に新見市に帰ってきた人が知り合いに「車をどこで見てもらうのがいい?」と尋ねた時に「北陽商会なら間違いない」と言っていただくことや、メディアに取り上げてもらったことがきっかけでご来店いただけるお客様も多いです」(山崎篤史氏)
長く取り組んできた脱炭素の取り組みを通じて、目に見えるコストの削減をしながらお客様の信頼を築き上げてきた同社だが、最初は壁にぶつかっていた。
「最初にお話したとおり、土地柄でお客様になかなか理解していただけなかった点がありましたが、社員の理解を深めていくのにも時間がかかりました。理解を深めていく一環として、社外から専門家の方をお呼びして講義をしていただき、カーボンニュートラルの必要性を地道に伝えていきました。専門家のアドバイスやメディアに取り上げてもらうことで今ではもう日常的に脱炭素を意識するように変わり、自ら率先して対応を考えるようになっていきました。家でも節電を意識するようになったと言う社員もいます」(山崎保彦氏)
[今後の展望]
業務フローを見直し、DXでさらなるCO2削減へ

カーボンニュートラルの取り組みにおいて大切な考え方を伺うと、こう答えてくれた。
「お金や人材が必要と言いますが、まずは自社に合ったやり方で取り組むことが大切だと思います。他社の事例を真似しないといけないということは無いと思います。できることからやっていくのが大事なので」(山崎保彦氏)
20年近くカーボンニュートラルに取り組んでいる同社に今後さらにやっていきたいことも尋ねてみると、社長の山崎篤史氏が力強く答えてくれた。
「ITに強い社員が増えてきたこともあり、DXをより進めたいと思っています。今までは経理が毎日のように銀行に行っていましたが、ネットバンキングに切り替えたことで週に1回くらいで済むようになりました。これにより車の移動が減りCO2の削減にも繋がり、さらに事故のリスクも軽減できました。今後はさらに営業のやり方やアフターケアについてもご訪問だけでなくLINEなどで対応することでさらに業務効率を上げつつ、車移動を減らしてCO2削減にも貢献していきたいですね」(山崎篤史氏)